12 / 96
意外と使えるワンコ 7
学校が見えなくなるまで走るとその足取りをゆっくり落としていった。
ハァハァと息を整えながら、こんがらがった頭の整理をするためにさっきの出来事を思い出す。
なんだあれ。さっき、俺超ドキドキしてなかったか?
おかしくなったのか?
相手はあの変態津田だぞ。
好き好き言われ続けたから意識してんのかな?
いやいや。な、わけねーだろっ!! バカか! 俺は!
何、洗脳? とにかくヤバイヤバイ。
ぐちゃぐちゃな頭のまま家に帰るまで考えるだけ考えたのだが結局答えは見つかることはなく、余計に混乱した状態で家に帰ってきた。
帰って「ただいま」とだけ告げて自分の部屋に直行する。
そしてベッドにダイブしてゴロンと仰向けに寝転がり天井を見つめた。
深呼吸しながら帰って来た甲斐あって、胸の鼓動は落ちついていたからそこは少しだけホッとしたけど、さっきのアレ何なんだ。
好き好き言われて絆されたか?
ありえないつーの。相手は男だし。そもそも津田が俺のこと好きって言うのだってきっと戯言だし。
騙されないんだからな。
むしゃくしゃして手にした枕を力任せに壁に投げつけると、今度は無意識にため息が漏れた。
……俺はどうせ誰からも愛されたりしない。
不意に訪れる漠然とした孤独が胸の中を支配していく。
心の何処かでそう思っているところがあるから、心を開くのって実は怖い。
好きになるのも怖い。好きになりすぎるのはもっと怖い。
自分だけ好きになって、いつか相手が自分の目の前から消えてしまうのが怖いんだ。
……あの時みたいに。
不意に落ち込んでしまった気持ちをリセットするために、深呼吸しながら軽く目を閉じた。
そのままどれくらい目を閉じていたのだろう。
暫くすると、…――。
「雄一郎~ごはんよ~」
母さんが俺を呼ぶ声で、ハッとして起き上がり時計を見た。
思っていたより長い時間、物思いにふけってたらしい。
まだ制服だったので返事だけして急いで部屋着に着替えて階段を下りていった。
ともだちにシェアしよう!