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意外と使えるワンコ 6

不意打ちだったからちょっと体がビクついて、そんな自分が恥ずかしくて言われたとおり顎引いて胸を張る。そして弦を引っ張った。 「かてー」 「支えてるから大丈夫ですよ。先輩、なんか緊張してるんですか?」 「し、してねーよ」 「よく狙って……」 耳元で囁かれた声が頭に響くようで、妙に意識してしまっているのは確かで。 なに、俺ってばこいつ相手にドキドキなんかしてんの? おかしいじゃん。 頭で思っていることと体の反応が一致しなくて戸惑いしかなくなる。 津田が何か言う度に、耳に息がかかる度に……。 ドクンッドクンッドクンッ 気持ちとは裏腹にどんどん大きくなる心臓の音が不快でたまらなくて、その音を搔き消したい一心で俺は焦って思わず矢を離してしまった。 シュッと音を立て頬をかすった矢は的から大きく離れたところに刺さり、俺はバランスを崩して津田の方へ倒れ掛かってしまった。 「痛っ」 「先輩っ!? だ、大丈夫ですか? いきなり離すから矢が擦れて……」 心配そうな顔をしながら矢が擦れた部分を津田が指で撫でた。 そんな津田が触れた部分はヒリヒリしていて、でも同時にドキドキもしていて。その部分がとても熱い。 な、なんで? 自分の体なのにさっきから戸惑ってばかりだ。 そして、心配そうに俺の顔を覗き込む津田と目が合った。 その顔はあまりにも近くて、また俺の心臓が勝手にドクンと跳ねるものだから顔に血が集まってくるようで熱くなる。 な、なんだコレ!? 「へ、平気だ!! お、俺は帰る!!」 津田の手を振り払い、ゆがけを返すと鞄を取り、柵を飛び越え弓道場から渡り廊下へと降り立った。 俺、なんか変だ! とにかく帰らないと。そうだ! 帰ろう! 「待ってください。俺も帰るから一緒に」 「お前なんか待つか!!」 叫ぶように言って俺は走って学校を後にした。

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