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意外と使えるワンコ 8
下りてみると、じいちゃんとばあちゃんは既に食事を始めていて、俺が席に着くと母さんがご飯をよそって持ってきてくれた。
「その擦り傷どうしたの?」
「ちょっとかすっただけ」
「そう? あとでクスリ付けときなさいよ。今日は学校どうだった?」
「どうだったっていつもと一緒。普通」
そんな話をしていると、ばあちゃんが俺の好きなおかずを皿によそって渡してくれる。
「ばあちゃん、ありがと。あ、そうだ、母さん! バッシュの底が破れそうなんだけど」
すると今度はじいちゃんがにっこり笑って言った。
「今度の休みにじいちゃんと買いに行こう。あ、美奈子さん醤油」
母さんもじいちゃんに醤油を渡しながら俺に向かって微笑む。
1人っ子だからだろうか、いつもうちはこんな感じで食卓を囲むとき俺の話題が中心になる。
こんなにも無償で愛してくれる温かい家族がいるというのは凄く幸せで、家にいるのは落ち着くし満たされていると思う。
でも、どうしてなのか恋愛方面はうまくいかない。
さっきみたいに急に襲いかかってくる漠然とした愛されないんじゃないかって不安から生まれるぽっかり空いた穴を、ふとした瞬間に実感してたまらなく辛くなるんだ。
自分でも何故こんなにも急に寂しくて辛くなるのかわからない。
こんなにいい家族がいるのに、恋人にも俺以上に俺を好きでいて欲しいとか願うのはやっぱり欲張りなことなのかな。
昔からいろんな理由を考えてみても、これと言った名称も答えも見つけることが出来ていない。
一番有力だと思うのは、一人っ子で小さい頃からずっと家の中心的な存在だったから、それを外でも求めているだけの我儘ってこと。今までの彼女とは全部それが原因で別れてるからあながち間違いではないと思うけど。
なんか、それはそれで寂しい。
でも、もしかしたら津田なら……俺より俺のことを好きでいてくれるかも……。
…………って。
無意識に頭をよぎった言葉にたまらなく鳥肌が立った。
はぁ!? 俺、何考えてんだよ!!
バカじゃねぇの!?
うっかり絆されてんじゃねぇよ、俺!
マジありえねぇ────────!!!!
その日は一晩中、ありえないありえないと呟きながら眠るはめになった。
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