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黙っていれば…なワンコ 1

次の日の昼休みも津田はいつもと同じようにパンと飲み物を買って教室まで持ってきた。 そしていつものように屋上で食いながら、俺の顔に絆創膏がついてるのを見て心配そうな顔をして覗き込んでくる。 「昨日の、大丈夫でしたか?」 「かすり傷だし別に」 「そうですか」 ホッとしたように胸をなでおろしている津田をみて不意に聞いてみたくなった。 「お前さ、そんなに俺のこと好きなの?」 「好きですよ」 間髪入れずに何の躊躇もなくにっこりと笑って言われて少し戸惑ったけど。 無意識に「好きってどんくらい?」と聞き返していた。 自分からこんな言葉が出てきたことには驚いが、津田は少しだけ照れたように笑って逆に聞いてきた。 「先輩は俺のことどれくらい好きですか?」 「うーん、30くらい?」 「低ッ!! でも0じゃなくてよかった」 「俺のことはいいんだよ! で、お前はどれくらいなんだよ!」 早く答えが聞きたくて催促するようにすると、津田は微笑んだまま俺の方に体を向き直して座った。 「数値化するのは難しいですけど、先輩が30なら少なくとも3000は好きですね。俺は常に先輩の100倍は先輩のことが好きです」 常に100倍は好き? そんな津田の答えに不覚にも胸が掴まれた気がしてしまった。 そんな自分の感情に、絆されるな、騙されるなと警告音を鳴らす。 しかし、津田のそばにいるのは……はっきり言って居心地が良かったりする。 多分、それは津田が居心地いいように俺が嫌がることは極力せずに好きなものだけを与えてくれるから。だから俺は気を張らなくていいし、楽なんだ。 ってか、これって逆に俺が飼い慣らされたりしてるのか!? なんてことを考えこんでいると津田が近くに寄って来ていることに気付くのが遅れて、気付いた時には津田のニヤけた顔がすぐ目の前にあった。 「なっ、なんだよ!! 近ぇーよ!」 「いや、先輩が嬉しそうな顔をしてたから。やっと俺の想いが伝わったのかなって思って」 「嬉しそうな顔なんてするか! ボケッ! 離れろ!」 居心地は確かにいいけど、待て待て待つんだ俺。 アイツは男じゃないか!! いやいやいや、ありえねーし!! このままだと俺は道を踏み外すぞ。このままじゃダメだ。 頭をガシガシ掻きながら、何か手を打たなければ……と、考えてピーンと閃いたのが。 「ダツ!! 合コンだ!!」 津田はキョトンとしたまま首を傾げた。 「え? 合コン?」 「そうだ、合コンするぞ!!」 俺たちは男なんだから、女の子が好きなの!! 彼女に振られ続きの男だからって、俺だってモテないわけじゃない。 失恋には新しい恋! それを男とどうこうなってどうする!? それから俺は嫌がる津田を連れて教室に戻った。

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