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ほろ苦い恋心とワンコ 3

────── ───… 風呂から上がってくると何故か津田が一人でオセロ並べて遊んでいた。 「何やってんの? 1人オセロ? うけるー」 すると振り返った津田が一瞬止まって、途端に顔を赤らめる。 「あ……先輩も、早く髪乾かしたら……」 俺は面白おかしく言ったのに振り返ったとたんにモジモジしやがって、ノリ悪いよなー。 そんなに1人オセロをみられて恥ずかしかったのかな? いや、没頭してたみたいだし、そりゃ恥ずかしいよな。だって1人オセロだもんな。 妙に納得して心の中で頷きながら津田からドライヤーを受け取り、髪を乾かしてからまたゲーム機を持って津田の近くに座った。 「なぁ、ゲームの続きしようぜ。それともオセロにするか?」 顔を覗き込むと視線を逸らされたかと思えば、津田はなぜか少し移動して俺から距離を取って座り直す。 「なんで、そっち行くんだよ?」 「気にしないでください」 そう言うけど、なんか急によそよそしくなった態度に少しだけモヤモヤした。 なんか懐いてた犬が急に離れていった感じ。 でも津田が笑顔でゲームをしようと言ったので、すぐにそんなことは忘れてダブルバトルに夢中になっていたけど。 「はぁー楽しい! 1人でやってるより断然楽しいよなぁ」 「先輩もまたレベル上がりましたしね」 「おう。つか、お前の装備って結構レアじゃね?」 通信機能を使ってパーティを組むと相手の装備までみることが出来るのだが、津田の装備はなかなか見かけないメタル防具というやつだった。 この防具のことが聞きたくて、津田のすぐ隣に移動し画面を覗き込むようにしながら津田のゲーム機を操作して装備を見る。 「なぁ、このメタル防具ってどこで手に入れた?」 そして、そのままの姿勢で津田を見上げると。 また津田の顔がみるみる真っ赤な顔になったと思ったら……。 次の瞬間、思いっきり突き飛ばされ視界が反転した。 ドターンと派手な音をたててひっくり返ると、一瞬何が何だかわからなかったが、突き飛ばされたんだということを理解すると次第にムカつきとか怒りとかがひしひしと沸き起こってきた。 「痛ってー」 「す、すいません。大丈夫ですか?」 「大丈夫ですか? じゃねぇよ。聞くなら突き飛ばしたりすんなよ!」 すると津田があたふたし出すし、意味わかんねー。

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