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ほろ苦い恋心とワンコ 4
「す、すいません。焦ってしまって」
「え? どうしてだよ」
「どうしてって……」
モジモジしたままの津田にイライラしながら起き上がり、元居た場所に戻ろうとすれば、今度は……。
「ち、近付かないでください!!」
そんなことを言われた。
「はぁ? なにそれ」
またそんな分けわかんないことを言い出す始末。今度はなんだよ!
俺が苛立ちを露わにすると、困った顔をして慌てるくせに近付くなって何なのそれ。
「そんな近くはちょっと……」
「はぁ? 意味わかんねーこと言ってないで防具のこと教えろって」
いつもウザイくらい俺につきまとってくるくせに、急にこんな風に突き飛ばされたりこっちに来るなみたいに言われたり、すっげーイライラする。
俺のこと好きだとか言ってたくせに。
そうだよ、俺のこと好きなくせに。津田のくせに。
どんどんイライラが募ってくる。
なんか胸のあたりがムカムカするようなざわざわするような変な感じだ。
「なんだよ。お前、俺のこと嫌いになったのか?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!?」
「じゃあ、なんで突き飛ばすんだよ。おかしいじゃん」
すると目に見えて津田の顔色が変わった。
その顔は暗く淀んで、津田はそのまま俯いた。
「先輩って鈍感なんですか? 天然なんですか?」
「はぁ? なんだよそれ」
「だって……」
津田が何かを言いかけたとこでトントンと部屋のドアがノックされ、母さんが布団一式を俺の部屋に運んできた。
「これ津田くんの布団ね。雄一郎と一緒に寝るでしょ?」
「え、えっと、あの……」
「そこに置いといて」
「あ、あの……」
津田はさらに焦っていて、何か言いかけたが眠そうな母さんは布団を置いて、よっこいしょと言いながら立ち上がった。
「もうお母さん寝るけど、布団は自分たちで敷きなさいね。あんまり夜更かししちゃダメよ」
「わかってる。ありがとう」
そう言って母さんは部屋を出て行った。
時刻は22時を過ぎていて、じいちゃんとばあちゃんはもっと早くに寝るけど母さんも寝るのが早いので、いつもこれくらいの時間から俺が寝る24時くらいまでは凄く静かになるんだ。
そして俺と津田はというと、暫く沈黙したままだ。
本当に、こいつの言ってる意味がよくわからない。
せっかく布団まで用意してやったのに、なんか不満そうだし。
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