27 / 96

ほろ苦い恋心とワンコ 8

どれくらいそうしていたのだろう。 ずっと玄関先に座っていてもしょうがないので重苦しい気分のまま玄関の鍵をかけ、自分の部屋に戻りベッドにもたれながら床に座った。 床には津田のゲーム機が寂しそうに転がっていて、それを見ているとさっきのことが生々しく思い出され……胸がズキズキと痛む。 俺は、津田の気持ちを軽く考えていたんだ。 津田が俺のこと好きって言ってくれて嬉しかった。何となく安心出来たからだ。 けどさっき目の当たりにしたような津田の本当の気持ちっていうのが正直想像以上で、そんな気持ちを初めて知ってその本気さに何も出来なかった。 俺は最低だ。 自分のことが好きだって言われて気分や居心地がよくて近くに居させて。 俺のほうは受け入れる覚悟なんてものは少しもなくて、気を持たせるようなことだけして。 好かれてるって優越感に浸りたいだけで、津田の気持ちに甘えて胡坐かいてるだけじゃねーか。 そんなの利用してるのと一緒だ。 アイツは本気で俺のことを思ってて、あんな真剣な顔で……。 ……津田ってあんな男の顔もできるんだな。 またあの表情を思い出すと胸がドクンと大きく脈を打つ。 にこやかに笑うだけの津田とは違う男っぽい鋭い目つき、息遣いとか妙にリアルに思い出したりして。 そんな男の目に俺は真っ直ぐ思われていたのか……。 そんな言葉が頭をよぎると、急に血液が一気に思いもしない部分へと集まってしまった。 「うわっ……ッ……」 自分でも、馬鹿なんじゃないかって思う。 馬鹿以外なんだって言うんだ。 こんなときに、なに勃ててんだって……。 俺は本当に馬鹿だ…───。

ともだちにシェアしよう!