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ほろ苦い恋心とワンコ 9
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「…………ッく……ッ…」
俺、本当に何をやっていんだろう。
人を傷付けて間もないのに、この様は何だ……。
自分自身に呆れながら、何度鎮まれと心で思ってもおさまることはなく、余計に欲望が増していくばかり。
頭の中では理性が制御しようとしているのに本能がそれをきかずに手を動かし続けてしまう。
思い出すのは津田の男っぽくて荒々しい息遣い。そして射るような眼差し。
そして、ぎこちないキス…───。
「……っ…ぅッ………」
全身を震わせながらパタタ…と手の中に自身の白濁を吐き出したとき、ハッとして我にかえった。
ドッドッドッと全身に流れる血液が沸騰したみたいに熱い。
でもその熱は次第に頭の方から波が引くように冷めて、冷静さを取り戻せば取り戻すほどに罪悪感が大きくなっていく。
冷めた頭に残っていたのは、津田の笑顔だった。
いつも俺のそばにいる、津田の顔。
あぁ、そうか。
俺、自分で思っていたよりもずっと津田のことが……。
こんなになって初めて自分の気持ちに気が付くなんて、思いもしなかった。
俺はどこまでも自分勝手で。ただ愛されたくて我が儘で、自分の気持ちにも気付かない阿呆で。
そんなの見放されたって自業自得だと思った。
自分の吐き出したものが熱を失いかけたとき、心にぽっかり空いた穴を痛感していると、頬に冷たいものが伝った。
それが涙だと気付くまでにそう時間はかからなかったけど。
俺は、大切なものを自ら失ってしまったと思ったんだ。
きっと津田だって俺に愛想をつかせてしまうに決まってる。
きっと嫌われる……。
そう思うと余計に涙が溢れてきて、俺は膝を抱えたまま朝を迎えていた。
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