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会えないワンコ 4
帰りのHRが終わると朝倉と一緒に下駄箱まで向かった。
今日は月に2回ある部活をしてはいけない日だから、下駄箱に向かうまでの間にもこれからどこかに行く相談をする会話があちこちから耳に入る。
下駄箱前では栗山が立っていて朝倉のことを待っていた。
これから2人で遊びに行くらしい。
俺も彼女が居たときは一緒に帰って、雑貨屋まわったり本屋行ったりプリクラとったりしたもんだ。
それに、もしあの土曜がなかったら今日の予定は津田を誘ってゲームだっただろうな。
そう思いながら朝倉と栗山と一緒に正門まで行こうとしたそのとき、栗山が声を上げ、門の方に向かって指を刺した。
「あれって津田くんじゃない? それに、こないだの合コンのマミちゃんだっけ?」
見てみると津田の隣にはこないだの合コンで知り合ったマミちゃんがいて、2人とも何やら楽しそうに笑っていた。
「ほんとだ。津田っちと仲よさげじゃん」
「…………」
久しぶりに見た津田はやっぱり長身で目立ってて、不思議だけどそこだけがきらきら光っているように見えた。
そしてこの間まで隣には俺がいたはずなのに、女の子と歩いていく姿も変な言い方だけど自然で似合ってて……。
「そうかー、だから津田っちって、桐生のとこ来なくなったんだ」
心に涌いたモヤモヤは朝倉のその一言で、奥に閉じ込めていた色んなドロドロした感情を帯びて溢れ出てくる。
俺は、息が止まりそうになった。
あまりのショックさに、自分の期待が思っていたよりもでかかったことを知った。
張り裂けそうに心が痛い。
すると横で話す朝倉と栗山の会話が耳に入ってきた。
「今晩ユキナにマミちゃんと津田くんのこと聞いてみないと」
「聞くまでもなくいい感じだったじゃん。付き合うんじゃね? つか、もう付き合ってるのかもよ」
そんな会話を聞いて、心の中で全否定したい気分になった。
津田は数日前まで俺のことが好きだったんだぞ! って。
そんなすぐに乗り換えるみたいに彼女を作るやつじゃない! って。
でも、そんなこと言い出したってしょうがないのはわかってる。
ただ俺がそう信じたいだけだ。
まだ少しくらい俺に気持ちが残っているって信じたいだけなんだ。
だって……。無神経な俺は嫌われて当然だ。
もう、津田は俺のことなんて……。
元を辿れば自分のせいなのに、言い様のない感情が渦巻いている。
嫉妬していい立場でもないくせに、俺ってば勝手だよな。
そしてデートするという朝倉たちと門の前でわかれてから、すぐ走って津田たちを探したけど。
もう見つからなくてガックリと肩を落とした。
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