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逢いたいワンコ 1

次の日、部活が終わってからすぐに着替えて弓道場へと向かった。 あの日から休み時間ごとに津田を探したり、津田の教室に行ってみたり色々していたけど。 確実にいるであろう、この弓道場だけは何となく怖くて来れなかったんだ。 俺に面と向かって向き合う覚悟がなかったからかもしれない。 ハッキリと白黒つけるのも怖かったからだ。 でも、今は違う。 当たって砕ける覚悟で走っている。 だから、いつものように津田が自主練してくれていることを祈りながら弓道場へと全力で向かった。 すると、遠くからタン――。タン――。と音が聞こえてきた。 誰かがまだ弓道場にいる。 どうか、津田であってくれ。そう願いながら物陰から中を覗いてみると、いつものように1人で残って練習している津田の姿がそこにあった。 すごく怖いけど。よし、頑張れ俺。 柱の陰で大きく深呼吸して心を落ち着けてから、そっと近付いて声をかけた。 「……ダツ」 するとその声にビクッとした津田は慌てて振り返った。 「せ、先輩っ」 驚いた津田は急いで片付けてその場を離れようとするので渡り廊下の柵を飛び越えて弓道場に入り、津田の腕を掴んだ。 「待てって!」 「あ、あの……お久しぶりです」 腕を掴めば、津田は焦って取り繕ったようなかたい笑顔を浮かべた。 玉砕覚悟で来たけど、面と向かってそんな顔されると、やっぱりきついな。 「確かに久しぶりだけど、それはお前が避けてたからだろ」 「……あ、はい。すみません」 自分で仕向けたくせに素直に認められると少し心が痛む。 けど、俺は当たって砕けると決めたんだ。 「あとどれくらいで終わる? 一緒に帰りたいんだけど」 「えっ!? 今日は駄目です」 津田は驚いて目を見開くとかぶりを振った。 「は? どうして」 「約束があるので」 それを聞いて、昨日見たマミちゃんと歩いてた姿が頭をよぎる。 まさか今日も彼女と約束でもしてるのか。 「駄目だ。今日は俺と帰るの!!」 ブワッと内側から溢れてくるような嫉妬心に顔が歪む。 「先約があるんですよ。今度じゃ駄目ですか?」 「駄目だ!! 絶対に駄目だ!!」 駄々をこねてるみたいで見苦しいとは思うが……今度だと? この間まで俺を最優先してくれていたのに、優先する価値すらなくなったと言われているみたいで辛すぎる。 でも……ただ駄々をこねて大声出して虚勢を張るしかできない俺は、惨めだけど津田が情けをかけてくれるのをじっと待つしかなかった。

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