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逢いたいワンコ 6

でも俺だって最初から父親が嫌いだったわけじゃない。 「あんな父親だけどさ……恋しいっての? そういう時期があってさ……」 5歳か6歳のときだったと思う。 友達のお父さんは必ず夕飯までには帰ってきて一緒に食卓を囲んだり、一緒に風呂に入ったり、遊んだりしてるのに自分の父さんはなぜ毎日帰ってこないんだろうと疑問に思った。 俺だって皆と同じように父さんと毎日遊びたい、って日頃からよくそう思っていた。 そのとき、どうしたら皆のお父さんのように毎日帰って来てくれるのか。 まだ深い事情なんか何も知らなかった俺は、自分が頼んだらどうにかなるんじゃないかって安易に思ったんだ。 だって父さんは俺が可愛いくて大好きだとよく言ってくれていたから、そんな俺が頼んだらきっと帰ってきてくれるだろう……って信じて疑わなかった。 だから、母さんには内緒で知っていた父さんの別宅の電話に電話をする。 電話番号をプッシュしながら、父さんが毎日帰ってきてくれるのを想像して楽しみになった。 そして父さんに、「ぼくのために帰ってきて」って頼んだんだ。 でも、父さんの答えは……。 当たり前だけど、『帰れない』だった。 途端に涙が溢れてきて泣きながら何度も頼んだけど。 『ごめんなぁ。帰れないよ』 そう言われて……俺は、“愛されてないんじゃないか”って思ってしまった。 それくらい、小さい頃の俺にとっては絶望的な言葉だったんだ。 「…………」 津田は俺の方に体を向けて静かに聞いてくれていた。 でも、不思議だな。 初めて人に話して、自分が不幸だと思っていたことが何故かちっぽけに感じてくる。 世の中にはもっと壮絶な経験をしてる人もいるのに、俺ってば小せぇなって。 でも、それが俺なんだからなぁ。

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