41 / 96

逢いたいワンコ 7

そして津田に話しながら気付いたこともあった。 今まで心に折り合いがつかなくて幾度となくすれ違ってきたこと。 なぜ俺はいつも家族や友達といても孤独を感じていたのかって理由。 「俺ってさ、だっせーだろ?……すげー愛されたいの。唯一無償で愛してくれるって信じてた親に何度頼みこんでも『帰れない』って言われたことがショックでさ。俺のことが好きだから、愛してるから、帰ってきてくれるはずって思ってたのにな」 今になれば大人の事情ってものがあるのもわかるし、簡単なことじゃないのも勿論わかってる。 けど頭ではわかっていても割りきれない部分があって、泣きたくもないのになぜか涙が浮かんできて胸が詰まった。 そして心の奥底でどろどろになっていた本心が急に顔を出したんだ。 「無理って言われたことで嫌われたんだと思った。俺はもうこんな思いは嫌なんだよ。誰からも嫌われたくないし、誰にも置いていかれたくない。俺は愛されたいんだ。好きな人に……愛されたい」 浮かんできた涙が流れないように静かに目を瞑って天を仰いだ。 そして涙がおさまるようにゆっくりと深呼吸をして、そのまま目を開け話を続ける。 「だから思うのかもな……俺よりも相手のほうが俺のこと好きだったら離れてなんていかないだろうなって。親とのことを彼女に当てはめるのもバカらしいけど、うまく切り替えられないんだ。だから相手より自分がハマるなんて怖いし、わざと少なめな表現しかできなくなる」 身勝手だなって思う。 どうにかして自分を守りたいだけの小さい男だ。 でも、幼少期にぽっかり空いた穴は思った以上に大きくて根が深い。 いつしか愛情を数値化して相手よりも低く示すようになっていた。 もしも傷付いたとき、少しでも傷を浅くするために。 津田は神妙な面持ちで、少しでも何かあれば今にも泣きそうな顔をしていた。 コイツってば他人のことでこんなに泣きそうになって、ホント優しいんだな。 そんなことを思っていると、津田がボソリと呟くように言った。 「だから先輩はいつも気持ちを隠していたんですね。そして……それでも好きでいてくれるか、試していたんですね」 静かに核心をつかれ、これでまた津田に呆れられる要因を増やしちまったなって思ったけど、もう遅いよな。津田が言ったことは、本当のことだから。 「そうだよな。試してたんだよな。俺ってつくづく最低だ。でも……自分勝手だけどさ、それでもいいって言う人に出会いたいんだ。それでも好きだって言ってくれる人にさ」 そう口に出したとき、風が音を立てて吹き荒れた。 そして砂を舞い上げ木々を揺らし、落ちてきた葉っぱが風に乗って飛んでいくのを無意識に目で追うと。 隣からすごく優しい声が響いてきたんだ。 「俺は、それくらい先輩が好きですよ───…」

ともだちにシェアしよう!