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オトコなワンコ 2
俺が泊まると言うと今度は年下らしく嬉しそうに満面の笑みになった津田を見て、やっぱ可愛いなって思った。
でも、意識するとドキドキしてきてしまうもので。
なんとなくお互いにぎこちない動きのままとりあえず津田の部屋に入る。
そして妙な距離を開けて床に座った。
ここにきて、津田が俺の部屋に来て言ったことがよくわかった気がする。
すっげー気まずいし。
部屋に入ったからってすぐに何かするわけでもないのに、さっきから心臓の音がなりっぱなしで息苦しい。
気付かれないようにそっと津田を盗み見たがうっかり目が合ってしまい、咄嗟に逸らせば視界の端でそわそわとせわしない津田が気になった。
その姿はさっき見た男らしい顔つきとはうって変わって、いつもの犬っぽい津田だったので思わず笑ってしまう。
「お前、きょどってんな」
「そりゃそうですよ。先輩が俺の部屋にいるってだけでも凄いのに、さっき好きって言われたって実感してて」
「嬉しいか?」
「嬉しいです。嬉しすぎます」
「お前って可愛いよな」
「そうですか? 先輩のほうが可愛いですよ」
可愛いといわれて照れたのか頬をピンクに染めて俯く姿はお世辞抜きに可愛く思えて、気付けば津田の傍に近寄って頭を撫でていた。
ほんとこいつって、でっかいワンコだよな。
「先輩?」
「じっとしてろ。今は俺がダツを愛でてるの」
「なんですか、それ」
嬉しそうに笑っている津田の唇を指でなぞった。
「なぁダツ。キス、しよっか」
すると津田の顔が見る見るうちに真っ赤に染まっていくから俺は愉しくて目を細める。
かわいい、かわいい、クソかわいい。
撫でていた手を頬に移しじっと目を見れば、その目はどんどん見開いていくようで、つい笑ってしまった。
「なぁ、お前ってさ。今まで付き合ったことあんの?」
「……ないです」
「じゃあ、キスは?」
「先輩が初めて……です」
「やっぱりな。じゃあ、童貞なの?」
肩をすくめながら津田が小さく頷いたのでニヤリと笑うと、津田は恥ずかしそうに俯いた。
そっか、童貞か。
それならばと、俺は目を閉じてんーっと唇を突き出してみる。
「先輩っ!?」
目を開けたら何とも言えない顔をした津田が困ったように固まっていた。
「チューってしてみろよ」
「え、でも……」
「前は自分からしてきただろ?」
真っ赤になったまま俯いてかぶりを振る津田をもう一度促しながら目を瞑り唇をつきだす。
暫くすると津田も観念したのだが、また鼻が当たった後に震えた唇がチュッと軽く触れて離れていった。
「なにそれ」
「……キ、キスです」
モジモジしながら答えた津田は面白いくらいに小さくなっていた。
つか、また鼻当たってるし。
これは、教えてやらなきゃだめなのかな。
そう思いながら、津田が足を投げ出して座る太ももの上に跨って座った。
「えっ、あの……」
途端に慌てだす津田は放っておいて。
「キスってのはさ……こうすんの。教えてやるから覚えろよ」
そう言いながら津田の頬に手を添えた。
「少し顔は傾けんの。そうしたら鼻が当たらないだろ?」
「す、すみません」
「あとはゆっくり唇を寄せて、唇の感触とか感じとけ」
軽く啄むようにしたのを皮切りに何度かチュッチュッとリップ音をさせて、津田の下唇を甘噛みしながらペロッと舐めた。
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