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俺の最強ワンコ 4

振り返ってみると自分たちとさほど変わらない大きさの野良犬が、2人を睨むようにして立ちはだかっていた。 低く唸るような声を響かせ、突然襲いかかるように吠えてくる。 津田も友達も怖くなって途端に泣きだしてしまい、泣けば泣くほどに犬も吠えてこっちに向かってきた。でも体は強張り、動けずに泣きながら2人でその場に座り込んでしまい。 網絶体絶命か!! そう思った、そのとき。 『ピーピーなくな! おとこだろ!!』 そう言って1本の棒を持った幼稚園の黄色い帽子と水色のスモック姿の可愛い女の子が颯爽と現れ、果敢に立ち向かい野良犬を追っ払って助けてくれたんだとか……。 ──── ──… 「なぁ、女の子に助けられたのかよ? つか、俺って本当にこの話に関係あるの?」 「ありますよ。大ありですよ!! だってその女の子だと思ってた子が、先輩ですもん」 「はぁ? 俺、男だし。つか、お前さっき俺の全裸見ただろうが」 「いや、あまりに可愛かったから女の子だと思ったんですよ。先輩だって女の子に間違われたことあるでしょ?」 そういえば小さいときはいくら髪が短くても短パン履いてても、十中八九女の子だと思われてたっけな。 「その強くて格好良くてめちゃくちゃ可愛い子に一目惚れしちゃいまして……」 犬を追っ払った後もなお泣き止まない津田の友達に向かって。 『おとこは、ないたらだめなんだ!』と俺は偉そうに説教していたらしい。 そして先に泣き止んでいた津田の方に歩いてきて。 『おまえはもうなきやんでて、えらいな』と、頭を撫でてやったそうだ。 「褒められたことも嬉しくて、そこで俺はもうズキューンときて恋に落ちました」 少し照れながら頭を掻き笑顔で話す津田を見ながら、なんとなく思い出したぞ。 津田のことは全く思い出せないが。 その頃、近所に野良犬が徘徊していてよく追っ払ってたから常に棒を持ち歩いていたんだ。 同じ頃、友達が弟や妹の頭を撫でてやってるのを見てちょっと羨ましく感じて、俺も弟か妹が欲しいと母親に強請ったりしてたんだっけな……。 まぁ、色々難しくて……。ならばと、弟か妹的な子を見つけては兄貴ぶって頭を撫でまくってたことを思い出した。 津田にとっては良い思い出っぽいから、そのころ人の頭を撫でるのにハマってて誰かれ構わず撫でてたとか……言わないでおこうと思った。

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