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俺の最強ワンコ 11
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津田と付き合いはじめて1週間くらい経った。
そしてこの週末は、津田がまた俺の家に泊まりに来ることになっている。
一度着替えに戻って荷物を取ってきた津田と一緒に帰る途中、本屋に寄りたいというから一緒に向かう。
そして漫画本を持ってレジの列に並ぶ津田を待ちながら立ち読みでもしようと雑誌コーナーに向かったら、そこに羽山先生の姿があった。
根暗羽山が何を読んでいるのかが気になって、そーっと近づき後ろから見てみると。
『いちおしデートスポット特集』とか読んでる。ほんと、意外だ。
彼女とどっか行くのかなと思いながら、その体勢のまま喋りかけた。
「彼女とデート?」
すると羽山の体が小さくビクッとなって、振り返ったが相変わらず涼しい表情をしていた。
「うおっ、吃驚した。桐生か……」
「それでびっくりしてんの!?」
能面羽山と異名を持つだけあって、言葉や態度とは裏腹にあまり表情に出てないから疑った顔をすると、羽山は可笑しそうに少しだけ笑う。
「ねぇ、彼女とどっか行くの!?」
「そう。恋人と旅行」
意外とあっさり認められると俺のがビビるし。
「どこいくの?」
「温泉」
羽山が恋人と温泉か……。正直、イメージ湧かねぇ。
つか、恋人がどんな人か知らないから想像もつかないけど、羽山の恋人ってどんな人なんだろうな。
そんなことを考えていたら、雑誌を静かに閉じた羽山が俺に話しかけてきた。
「こないだ言ってた問題は解決したみたいだな」
「えっ?」
「表情が落ち着いてるから。この間はそれどころじゃない感じだった」
穏やかに核心を突かれた気がしてドキッとする。
そんな風に気にされているようには思わなかったけど、羽山って意外と生徒のこととか見てるのだろうか。
「……そんなんわかるの?」
「副担だからな」
「それ関係あるのかよ」
しかしあの時に行動を起こそうと決心したきっかけは、羽山の言葉だったんだよな。
「俺さ羽山が言ったように、現状を打破するために行動したんだ」
「羽山“先生”な。でも、よかった。これで課題忘れもマシになるだろう」
「わ、忘れてねぇし!」
「週明け提出の現国課題、浮かれすぎて忘れるなよ」
あ、忘れるとこだった!
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