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第2話
「え、えっと、なんでしょうか?」
「なんでしょうか、じゃないだろう。朝イチで提出するって言った資料は?」
「あ、ま、まだ送ってないです」
「人のことをボーッと見ている暇があるなら、早く提出しろ」
「あ、すいません…」
やべぇ、部長のこと見てるの、バレてた…
この分だと、女の子たちの声も聞こえてただろ…
「それと、業務の方から上がる予定表はまだか?」
厳しい声で、先ほどの女性陣に声をかける。
「あっ!すいません!今お持ちします!」
「君たちも、話す暇があったら出来ることをしなさい」
そそくさと蜘蛛の子を散らすように、女の子たちは席に戻った。
陰では、「部長はかっこいいけど、結婚したら厳しそうだから嫌」なんて言われている。
正直、俺も家に帰って部長がいたら、休まるものも休まらなさそう…
もちろん、部長のことは尊敬している。
言っていることも正論だ。
それでも、部長に指摘されると死ぬほど緊張する。
「ぶ、部長、資料、PDFで送りました」
「…、数字、合ってない」
「え!?」
「5段目、1個ずつズレてるだろ?」
「う、うそ!?あ、ほんとだ…、すみません」
「前沢、前から言っているが、相手がお客様だったらどうする?見積の値段、出し間違えたら訂正はできないぞ?送る前に三度、チェックしろ。
前沢は、三度、だからな」
「は、はーい。以後気をつけます」
首を竦めて、データの訂正をする。
「お前の以後はいつになるんだかな」
正直、部長に送る資料を間違えたのは今日が初めてじゃないし、稀なことでもない。
部長が怒るのも仕方がない。
で、でも、自分のクライアントとの取引でも手一杯なのに、営業資料とか社内文書の作成まで押し付けられたら…、ミ、ミスくらいするっしょ!?
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