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第4話

「とりあえず、生2つで」 ガヤガヤしている大衆居酒屋にて、部長とジョッキを合わせる。 7時半 予定していた7時を過ぎてしまい、部長はしきりに「すまない」と頭を下げていた。 疲れている人に気を遣わせてしまって、少し申し訳ない。 たとえ、言い出しっぺが部長でも。 「前沢、本当にすまない」 「いやもう、何回目ですか!全然気にしてないですよ!」 「前沢を励まそうと思って誘ったんだが…、むしろ待たせてしまうとは…」 「え?」 「ん?」 「…、俺のこと、励まそうとしたんすか?」 「なっ、そ、それは…」 「なんでそんな…」 「朝、ボーッとしてただろ!それに、顔も暗かったし…」 ボーッとしてたのは、部長を見てたからだし、暗い顔はたぶん怒られたからだ。 っていう弁解をしたら、怒られそうだから黙っておこう。 「全然、問題ないですよ!元気っす!」 「そうか…、要らない気遣いだったかな」 「いえいえ!ちょ、ちょうど部長と飲み行きたかったし!」 嘘っぽくなって、ちょっと焦る。 でも、言った途端、部長の表情が緩んだ。 「前沢から誘ってくれても良かったんだぞ?」 「え、あ、で、でも、部長、忙しそうだし…」 「確かに暇ではないが、一軒飲むくらいなら大丈夫だ」 「あ、あはっ、今度からは遠慮せず声かけますね…」 「そうしてくれ」 嘘をついた自分を呪った。 まさかこんな形で自分の首を締めようとは思わなかった… 部長とまた飲み行くのかー… と、後悔しながら部長を見る。 部長は酔っているのか、ニコニコとビールをすすっていた。 なんていうか、オフィスから出ると、親しみやすさが増すな、この人。

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