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第6話

細身とはいえ、人ってかなり重い。 タクシーから引き摺り下ろして、玄関に座らせた。 部屋まで連れて行きたいけど、俺もそこそこ酔ってて、なかなか足が進まない。 「はぁ、つらっ!人間運ぶのつらっ!!」 「ん?あれ?ここどこ?」 「俺の家です。部長、ここから帰ります?」 「前沢んち〜、んふふふ」 「だめだ…」 頭の方はまだダメみたいだけど、とりあえず立ち上がれるみたいだから、家の中に誘導する。 「部長、スーツ脱ぎましょう」 「脱ぐ。キツイ。疲れた」 俺の方が疲れてますけどね。 主に、貴方のせいで!!! 部長が床に脱ぎ散らかしたスーツをハンガーにかける。 部長、やっぱ細いな… そもそもの骨格が細い。 パンツ1枚になった部長はフラフラと部屋を徘徊し始める。 「前沢んち〜」 「あまりじろじろ見ないでください。片付けてないんで。あと、服着てください」 「前沢の服!」 「すみません、それしかないんで」 俺が手渡したスエットを着て、部長はヘラヘラ笑っていた。 全く、これが我が社の営業部長だなんて… 「前沢とおそろ!!」 「おそろって、スエットって大体こんなもんですよ?」 「おそろっ、お"っ、お"え"え"え"…」 「ええっ!?嘘嘘嘘!ちょっ、早くトイレに!」 突然えづき始めた部長をトイレに引っ張る。 なんとか間に合いはしたものの、人が吐く瞬間をばっちり見てしまった俺は、なんか貰いゲロをしてしまいそうになった。 とても気分が悪い。 ソファに座り、ぐったりしていると、すっきりした顔の部長が「寝る」と宣言しに来た。 内心、舌打ちをしつつ、寝室に連れていく。 部長が布団に入ったのを確認して、自分も寝支度を整え、ソファに横になった。 とんだ1日だ…

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