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第12話

オカマに支えられた部長が店の前に立ってる。 すげー光景だな… 「今日こそは部長の家に帰ってもらいますからね」 2日連続で部長と朝を迎えるなんて嫌だ。 しかも明日は土曜日なのに… 「帰る帰る〜」 「はい。じゃあ、タクシー来たら、住所言ってくださいね」 「じゅーしょ?」 「部長の家の場所です」 「あっち」 部長が北の方を指差す。 昨日と指してる方向が違う気がする。 「もぉ、ほんと、やすちゃんが飲むとろくなことがないわね〜。あたしが言ってあげるから」 まもなく、着いたタクシーのおじさんにオカマ店長が住所を言う。 「じゃ、家までよろしくね、悠ちゃんっ」 「悠ちゃん!?えっ、家までってどういう…」 「1人で帰れるわけないでしょ。そのためのお迎えよ」 「えっ、えぇ!?」 無理やりタクシーに押し込められ、俺はガックリとうな垂れた。 オカマバーから俺の家まではそう遠くない。 歩こうと思えば歩ける。 タクシーでこのまま部長の家まで行ったら、タクシーで帰らなくてはならない。 痛い出費だ… ただでさえ、カッコつけて女の子分の合コン代を俺らで持ったのに… ぐっ… 覚えてろよ、部長! 領収書切ってやる。 とあるデザインマンションの前でタクシーが泊まった。 さすが部長。 30歳とはいえ、良いところに住んでる… 部長はタクシー代を払うと、俺の腕を取って降りた。 ん?なんで俺も降りたんだ? 「前沢、肩をかせ」 「…、部長、明日絶対思い出して後悔しますよ?」 「早く」 「もぅ〜、深夜割増料金ですからね!」 「分かったから、大きい声を出さないでくれ。頭に響く…」 部長は酔いが覚め、既に二日酔いのような症状が出ているのか、陽気な姿は一変して具合が悪そうだった。 渋々と肩を貸して、マンション内に入る。 入り口にロックがしてあって、セキュリティも万全だ。 月にいくら払ってるんだろう…

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