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第13話
玄関を開けるなり、部長は衣服を廊下に脱ぎ散らしながら、パンイチでベッドに雪崩れ込んだ。
勘弁してくれ…
昨日と同じデザインのスーツをハンガーにかける。
俺は都合のいいお前の嫁じゃないんだぞ…
寝室に顔を覗かせ、部長に声をかける。
「じゃ、俺、帰りますね」
「泊まっていけばいいだろう?タクシー代がもったいない」
そもそも部長があの時間まで飲まなければ、電車はいくらでも動いてたんだよ…
「いえ、ご迷惑になるので…」
「前沢は迷惑じゃない。むしろ、泊まっていけ。それで昨日の分はおあいこにしよう」
「い、いいです。気にしてないので」
「俺だって、前沢の1人や2人、気にしないぞ?」
あー、ダメだこれ。
永遠に終わらない攻防戦だ…
俺は折れることにした。
「分かりました、泊まらせていただきます」
「そうか」
素っ気ない一言とは噛み合わないような、華やかな笑顔を見せる部長。
なんでこの人、こんなに顔はいいのに、中身が残念なんだろう?
神様ってやっぱ、ニ物は与えないのかもしれないな…
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