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第14話

「そういえば、部長の住所、なんでママは知ってたんですか?」 パンイチで布団に潜り込んだ部長に話しかける。 「…、元彼だからな」 「へぇ、そうなんですか…」 ん?? 元彼? ママは、女装はしているけど、男だろ!? 「えっ…、と、部長は、その…、男性が恋愛対象なんですか?」 「そうだが?」 「あ、そ、そうなんですかぁ」 心拍数が上昇し始める。 俺は、部長のとんでもない秘密を握ってしまったのかもしれない… いや、なんていうか、知りたくなかった…… 部長は…、ホモ… うちの営業部長はホモ… 別に偏見はないんだけど、つまり、俺も対象ってことになるのか!? この状況、大丈夫か!? いやいや、でも、あのママがタイプってことは、もしかしたら女装をする男性が好きなのかもしれない。 だとしたら、俺はない、よな。 それに、ただの部下だろうし。 自意識過剰が1番恥ずかしいし、マジで部長に失礼だろ。 危ない危ない。 何も知らなかったことにしよう。 「部長、俺、リビングのソファ、お借りしますね」 「クローゼットに布団があるから、ベッドの隣りに布団敷いて寝ても構わないぞ?」 「いえ!ソファで結構です!!」 俺は慌てて寝室を出た。 死ぬほど警戒してしまった… っていうか、部長って記憶残るタイプの人なんだよな… このカミングアウトのことも、明日の朝とか、めちゃくちゃ後悔するんじゃないだろうか? 凄く気まずいな… 部長が起きる前に始発の電車で帰ろうかな… そんなふうに不安に思いながらも、ソファに寝転ぶと、楽天的な俺はすやすやと眠りについた。

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