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第16話

土日は散々、寝ることにした。 何をしていたって、金曜日の部長のことを思い出してしまう。 知りたくないことを知ってしまった… 部長に会うのが気まずい。 顔に出さないように一緒に仕事をするなんて、ハードすぎる… あー、部署の異動って申告したらしてもらえないかな… それが無理だったら、いっそ、辞職するか? でも、リスキー過ぎるよなぁ… そんなことを考えては、思考を振り切るように寝て、気づけば月曜日の朝だった。 あー、会社、爆破されてないかなぁ… しかし、何の連絡も携帯には来ていない。 だらだらと支度をし、出社する。 部長はいつも通り、俺より早く会社にいて、一応挨拶すると、いつも通りそっけない挨拶を返した。 なんだ、思ったよりいつも通りだな。 俺が気にしすぎだったのか? 何はともあれ、部長が無かったことにしたなら、俺もなかったことにしておこう。 それにしても、バーのママが元彼ってことは、部長は挿れる方…、だよな? だって、女装してるってことは挿れられる方だろ!? もし、部長に告白されたら…、俺は挿れられる方になるってことか… それはやだなぁ… 俺、痛いの苦手だし お尻の穴も、どちらかというとナイーブだから、あんなもの挿れたら血塗れになりそう… 「前沢」 「うぉっ!?なんだ、鹿野か…」 「お前…、相当溜まってるんだな」 「溜まってるって?」 「女に振られすぎて、ついには部長で妄想し始めてるんだろ?」 「なっ、はぁ!!?」 「しっ!静かに」 びっくりしすぎて、大きな声が出た。 鹿野が慌てて俺の口に手を当てる。 やばい、部長に怒られる! と、思ったけど、いつもの怒声がない。 チラリと部長の方を見ると、部長は真っ赤な顔をしてPCの画面を睨んでいた。 怒っている、というよりは、恥ずかしそうだ。 やばい。 とんでもない独り言を聞かれたのかもしれない、と悟った。

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