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第17話
やべぇ…
どうしよう。
部長に挿れられるとかなんとか言う妄想を聞かれてしまった。
しかも、俺としては願望系の妄想ではなく、単純な好奇心の妄想だ。
絶対に実現して欲しくないやつ。
勘違いされたらどうしよう…
それこそ、今晩一緒にどう?なんてなったら、最悪だ…
俺の貞操が……
トイレの手洗い場でため息をつく。
仕事どころじゃない
「前沢?」
「ひぇっ!?あっ、部長…」
「ひぇっ、はこっちのセリフだ。とんでもない独り言を言いやがって…。俺の性癖をバラす気か?」
「い、いえ!とんでもありません!多分、周りの人は俺をホモだと思ってるはずです…」
不本意ですが、とは、ホンモノの前では言えなかった。
「ともかく、前沢の独り言のクセは考えものだな…、なんとか直してもらわないと」
「俺も直したいんですけどね…」
思ったことをポロっというクセのせいで、何回か人間関係をぶち壊したことがある。
その度に直そうとかなり努力をしたが、全然直らなかった。
「それはともかく、気をつけてくれよ?世の中、お前みたいに受け止められる人間ばかりじゃない。バレたら、非常に会社に居づらくなる」
「本当に気を付けます…」
普段は鬼部長として恐れているけど、部長が居なくなったら、うちの営業部は終わると思う。
なんとしても、部長には残ってもらわないと!
「それと…」
「はい?」
「俺は、その、ネコだ」
「….そうですか」
ネコって…、ネコ科ネコ目の四足歩行の愛玩動物ではなく、俗に言う挿れられる方…だよな?
良かった、俺の尻は死守された…
じゃ、ねーよ!
なんだその情報!!
知りたくなかった、知りたくなかったよぅぅ
心の中で大号泣する。
「じゃあ、俺は今から外回り行ってくる」
「あ、りょ、了解しました」
スッキリした顔でトイレを出ていく部長。
俺はどんな顔をして、これから貴方に会ったら良いのでしょうか…
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