18 / 36

第18話

「社員…、旅行??」 昼過ぎ、一斉送信でメールが送られてきた。 それはよくあることなのだが… 『社員旅行のお知らせ』 入社して2年、社員旅行なんてなかった。 10年前くらいは実施していたらしいが、社長の体調や年齢の問題で、休止になっていたらしい。 それが、社長が交代したので、再開するようだった。 社員旅行って…、今どき本当にするんだな… 感心しながらメールを確認する。 希望者参加とは書いてあるけど、特に予定もないし… も、もしかしたら、社内恋愛のチャンスでは!? 他の支社の人も、案内出されているみたいだし、俺の知らない可愛い子に会えるチャンスかも… 参加するしかないな、これは。 「前沢、社員旅行、行く?」 メールを確認した鹿野がこそこそと耳打ちしてきた。 「行く」 「お、やっぱり?俺さぁ、事務の涼子ちゃんとか狙ってるんだよねぇ。いや、杉崎チーフもいいなぁ」 「…、二兎は追わない方がいいんじゃないか?」 「バカ言え。保険はかけとけってよくCMでも言ってるだろ」 「お前なぁ…」 鹿野って絵に描いたような姑息な男だと思う。 我が友ながら、なかなかの図太さ。 「鹿野、前沢」 「「は、はい!」」 突然、部長から声をかけられ、背筋が伸びる。 やばい、聞かれてたか…? 「社員旅行の宴会の余興を営業部からも出せと言われた。頼んだぞ」 「えー!?俺らっすか!?」 「他の奴を誘っても構わないが、お前らが中心でやってくれ」 「えー…」 「余興ぐらいはできるだろ?」 『営業はできないけど』という前置きが聞こえる気がする。 確かに、部長や俺ら以外の営業は、仕事で手一杯といった感じだ。 でも、余興なんてしたあかつきには、完全にネタキャラ確定だ。 社内恋愛なんて、夢のまた夢… 鹿野と目が合う。 鹿野も同じことを考えたようで、ガックリと肩の力が抜けている。 しょうがない。 俺たちは所詮、盛り上げ係なんだ。 一緒に非モテルートを突っ切ろうな。

ともだちにシェアしよう!