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第23話
それから、現地についてチェックインまでの時間に2〜3ヶ所の観光名所を巡った。
初日は移動時間がメインということもあり、全員で浅く回るようだ。
最後の名所を回って、あとは旅館に行くだけというところで、俺の疲れはピークだった。
「前沢、だいぶぐったりしているようだが…、今日の余興は大丈夫か?」
「一応、120%まで仕上げてるんで…、20%くらい能率が下がっても、100%は出せるはずです」
「そうか。そのくらいの準備を普段からしてもらえると助かるんだが…」
「…」
ぐうの音も出ません。
皮肉を言う気にもなれない。
そのくらい、疲れていた。
そもそも、俺はかなりインドアだし…
1日でこんなに動き回るのはすごく疲れる。
「そういえば、明日は自由行動だよな」
「あ、そうですね。部長は回るところ決まってるんですか?」
「あぁ…、その、良かったら前沢も一緒にどうだ?効率の良いスケジュールはたててあるし、かなり京都を満喫できると思うんだが…、そうだ、前沢が行きたいところがあれば、それを組み込んでスケジュールをたて直すこともできるぞ」
なんだこの圧は…
めっちゃ喋るな、今日の部長…
まさか、俺が旅行中に部長の秘密をバラすとか警戒しているんだろうか?
まぁ、そんなつもりはないけど、弁解するのも面倒くさいからノっておこう。
「それじゃあぜひ、ご一緒させてください。逆に俺が一緒に行っても迷惑じゃないですか?」
「そんなことはない。そうとなったらルートの確認だが…、1軒目はまず、旅館から1番近いここをスタートにしようと思うんだ。そして、俺は2軒目にここを通ってこう行きたいんだが、前沢が行きたければここのお寺も回れるぞ?」
いや、本当に正直どうでもいいし、とりあえず疲れたから喋りたくないのですが…
とは、部長に言えるわけもなく…
「あ、いえ、回りたいところはぜんぶ部長にお任せしますよ?」
「そうか!じゃあ、昼飯の場所と休憩する甘味処も俺が決めたところで良いか?」
「部長…、旅行楽しみだったんですね。超調べてますね」
「な!?は、はしゃいでなんかいないぞ!大の大人が社員旅行ごときで!!」
「はしゃいでるなんて言ってないですよ」
「…」
部長は顔を赤くして、パンフレットを鞄に仕舞った。
なんか、失言をしてしまった気がするが、部長の絡みが無くなったのでよしとしよう。
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