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第24話

「どうしてこうなる…」 俺はくじを憎々しく睨んだ。 旅館はどうやら2人部屋で、男女別でくじを引くことになっていた。 俺のペアはどうやら部長らしい… 男と2人部屋なら別に誰でもなんとも思わないが、バスも自由行動も部長と一緒なのに、部屋まで一緒にするなんて… 神のいたずらとしか思えない。 どうして、よりによって直属の上司なんだ… 宴会で酔っ払って失態を犯したらどうしよう。 まぁ、部長の酒乱っぷりには負けるけど、俺だって普段より思っていることがボロボロ出る癖が悪化するんだ… しかも、部長は酔ってる時の記憶が残るタイプだ… 「おい、鹿野」 「ん?どうした、前沢」 「くじ、交換しねぇ?」 「やだよ。俺、別の支社の後輩と一緒だから、お願いして、女の子との合コンをセッティングしてもらうんだよ」 「こいつ……」 「そんなに嫌な人と一緒だったの?」 「橘部長…」 「ぶ、ぶふふっ。いいじゃん、これを機に仲良しになっちゃえば」 「お前…、覚えてろよ?」 「はいはーい。どうでもいいけど、余興の時に足は引っ張るなよ」 「こっちのセリフだ」 「前沢、何してる。鍵はお前が持ってるんだろ?早く部屋に行くぞ」 「あ、部長、すみません!」 俺は慌てて部長に駆け寄った。 部長、しれっとしてるけど、もしかして部屋割りに細工した? …、いや、まさかな。 部長がそこまでするはずないよな? 疑惑を抱えつつ、鍵に書いてある名前の部屋に入った。 「見ろ、前沢!この部屋、明日回る予定の寺が見えるぞ!」 「あ、そうなんですか」 「あ、あっちは方角的に〜だな!」 部長が部屋についている大きな窓に、張り付いて景色を眺めている。 そして、逐一、建物を教えてくる。 部長って何歳だっけ? なんだか、10個下の弟みたいだ。 「部長?そろそろお風呂行きませんか?宴会間に合わなくなりますよ?」 「お、おお。あ!前沢、浴衣があるぞ!これ着よう、な!」 「…、はい」 やっぱ部長ははしゃいでいると思う。

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