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第2話
カウンター越しに見ていた彼は翌日もいた。
そしてまた、僕の方を見ている。
色んな煙草の煙が混じる空間で、彼は僕を見つめる。
いままでにも見られていた事はあったけどここまで明らかさまに見つめられ続けている事は
今までになかった。
頭の先から、脚の爪先まで。
ずっと観られている。ネットリとした視線。
僕は完全に視線に絡め囚われている。
まるで、視姦 だ。
彼の視線を独り占めしている優越感。
そして絡み付く視線に僕は完全に欲情していた。
「葵」
豊に話しかけらて、ハッとする。
「何?ああ…」
気づくと隣に新しい子がいた。
今夜のお持ち帰りはその子なんだね。
そろそろこのやり取りも、面倒だ。
アクセサリーで居続ける必要も、もうないのかもしれない。
豊が僕を置いて新しい子と店を出る。
僕はテーブルの上に残されていた豊のマティーニを飲み干した。
不意に視線を感じてカウンターの方をみると、彼がまだこちらを観ていた。
少し驚いたような顔をしていたのは、豊が僕を置いてあの子と出ていったからだろう。
僕は乾いていた唇を、舌で舐めた。
彼に触れたいと、思ったのだ。
煙の中の彼に近づき彼の瞳を間近に観た。
豊と違う外国産の煙草の香りがする。
「初めから、俺を見ていたよね」
彼にそう話しかける。彼は硬直したまま、動かない。
いつも見られていた瞳。
触れるなら、今だ。
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