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第9話

 白く絹のような肌に触れてしまうと、もう我慢ができなかった。薫の元を訪れた時の兄と同じ表情をしているのだろう。ああ何と浅ましい。そう嫌悪しているはずなのに、今、この胎を己の欲のまま突き破りたくて仕方がない。 「わたくしは、おのことして生を受けましたが、今このときだけは、子を宿す事ができます」  薫の白魚のような指が、清二郎の手首を掴み、己の腹をもっと触れと言わんばかりに押し付けてきた。 「分かりますか?普段は閉じられた子袋が、綻んでいるのが」    分かるはずがない。皮と肉に阻まれた臓器の状態など。 「疼いて仕方がないのです。欲しい、欲しいと」  だが、確かに薫が男を求めていることが、清二郎には痛いほど分かった。内腑の律動すら感じられるようだった。  兄の死骸を押しのけ、清二郎は薫に覆いかぶさった。小ぶりながらも肉厚な唇に喰らいつき、兄との情交の後を消し去るように、痕跡を唇で上書きする。上下する赤い胸飾りを啄むと歓喜の声が頭上より聞こえる。どのくらいそこを食んでいただろうか。    薫は誠二郎の髪を撫でつつ、お返しと言わんばかりに、華奢な足で、清二郎の昂りを弄んできた。すでにある程度の硬度を持ち始めていたそこを責められ、思わず顔を上げると、いつもと変わらぬ笑みを浮かべつつも、肌は桃色に蒸気していた。 左手の親指を噛み、そこじゃないとでも言いたげに首を振る。触れていた右手で、清二郎の体を軽く押し戻し、もぞもぞと太ももをすり合わせてみせた。顔には恥じらいの表情を浮かべている。その様は、ここまでの様子とは打って変わって、何も知らない生娘のようであった。  荒くなった呼吸が、室内を満たしている。均衡を破ったのはやはり薫であった。 「はしたないとお叱り下さい。ですが、もうわたくし我慢できません」  薫は意外にも強い力で清二郎を仰向けに寝かせ、その下履きを取り払う。すでに薫の足で追い詰められた清二郎の欲望は、体内より血液を集め、逞しい筋を浮かび上がらせていた。薫がその筋に唇を這わせると忽ち先端よりじっとりと子種を滲ませた。  先程までの初心な顔はやはり演技だったのか。薫は満足そうに笑うと清二郎の宝剣に手を添えたまま、反対の手で自らの尻たぶを押し広げ、自らを剣の鞘とすべく腰を落とした。   「あっ」  それは、どちらの声だったろうか。もうわからなかった。声よりも粘り気を含んだ水音が静寂と二人の耳を犯し、判断がつかなかった。  薫の体が清二郎の下腹部にのしかかっているが、重さよりも、快楽が強く感じられた。  先端から砲身は、薫の狭くも柔軟性に富んだ体内に優しく包まれ、付け根のあたりは、菊座にきゅうきゅうと締め付けられる。あっという間に達してしまい、清二郎はかあっと頬が熱くなるのを感じた。

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