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第3話

 打たれ強い子だな、と三枝はますます彼に好感を抱いた。気立てがよいのはわかったが、では容貌は、といえば。  背が高くて、均整のとれた体つきだ。眉は濃いめで目に力がある。スポーツ刈りに近い短髪も相まって、凛々しさが際立つ顔立ちは、ひところ流行った分類法にしたがうと何系にあたるのだろう。  と、桜の花びらがひと片、窓から舞い込んできた。それが、ニキビがぽつりとある額に張りつく。  三枝が自分の額をつついて教えると、彼は察しよく花びらをつまみ取ったまではよかったが、持て扱う様子だ。花びらをしばらく眺めていたすえに、生徒手帳を取り出して、挟んだ。  心がなごみ、三枝は顔をほころばせた。  ひなた台高校前の停留所で、大半の乗客が下車した。紺色のブレザーと、千鳥格子のスラックスおよびプリーツスカートで周囲が埋め尽くされていく。  おはようの声が飛び交うなか、三枝は通勤用の2WAYバッグを背負いなおし、生徒たちに混じってなだらかな坂道をのぼる。なつかしさに頬がゆるむ。七年前は制服の群れのひとりで、桜の季節は花びらが散り敷かれたこの道を歩いて登校したものだ。  そう、ひなた台高等学校は三枝の母校だ。  校門が近づくにつれて、自転車通学の生徒の姿が増えてきた。その中のひとりが三枝を追い越しざま、 「っはよう、ヤギちーん」  先ほどの男子に呼びかけた。  ヤギは八木、あるいは矢木と書くのか。生徒名簿をあたってみれば、何年何組のヤギくんなのか、たちどころに判明する。  だが、それでは推理小説の結末を最初に読むようでつまらない。授業をしにいった先の、どこかのクラスで再会するのを楽しみにしておこう。  それから数時間後、三枝は国語科の教科準備室に入った。向かい合わせに事務机が六脚並び、戸口寄りの一脚が三枝の席だ。

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