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第22話
一種の鞭打ち症かもしれない。首が縮んだような違和感があり、起き直ると頭がくらくらした。矢木は、再びうつ伏せにひしゃげた。
「脳震盪を起こしている恐れがある。誰か、担架を」
「ストライクだったな。つか、大丈夫か?」
案じ顔の三枝とチームメイトが矢木を取り巻き、そろって地面に膝をつく。
矢木は、曽祖父の葬儀に参列したときのことを思い出した。親戚一同が棺 に花を手向けた場面を。
ぶるりと全身を震わせると、飛び起きた。
「なんでもねぇし。試合再開で挽回するぞ」
意気込みとは裏腹に目が回る。よろめくと同時に背中を支えてくれた手は三枝のもので、そうと意識したとたん赤いペンキの缶に飛び込んだように、生え際まで真紅に染まった。
思わず、手をむしり取る。虫でも叩き落すようなやり方に、三枝びいきの女子が非難がましい目を向けてきた。
下手に弁解すると、かえって藪蛇になりそうだ。矢木はわざと、へらへらと笑った。それから顔の前で両手を打ち合わせた。
「悪ぃ、やっぱ離脱するわ。埋め合わせに下僕認定してくれ」
付き添いを断ってすたすたと歩きだし、コートから十分離れると足を引きずりはじめた。
県大会に向けて練習量を増やしたい時期に足首をひねるなんて、ツイていない。
三枝に八つ当たりをするような真似をして、みっともないにも程がある。だいたい、ちょっと躰をさわられたくらいのことで過剰反応もいいところだ。
駆けだすと振動が頭に響いてヘコむ。憂わしげに眉を寄せていた三枝の顔が目の前にちらつくとなおさらヘコみ、ヘコむことの二乗で地の底までヘコむようだ。
背中をまさぐった。細身で、非力っぽい見た目に反して、三枝はしっかりと抱きとめてくれた。
掌が、ここにかぶさる形にあてがわれた。記憶を頼りに肩胛骨の輪郭をなぞってみるにしたがって、口が半開きになる。
はっと我に返って、しゃかしゃかと足を速めた。
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