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第70話

 殊に二回目は、さんざんな目に遭った。両手をヘッドボードにネクタイで結わえつけられたうえで腰を抱え込まれる、という体験はトラウマものだ。  縛られた痕が痣になるにおよんで、さすがにキレて別れ話を切り出した。  ところが耳許で繰り返し好きだと囁かれて結局、なだめすかされた。今回だけは許す、と折れたのが災いして、武内をつけ上がらせたきらいがある。  現に、恋人なら当然の義務と称して後ろを自分で拡張するよう言い渡された。  三枝は伏し目がちにミネラルウォーターをすすった。構造上、そういうふうにはできていない器官でつながろうとすることじたい無理がある、と思う。  それでも愛を育んでいくにつれて、そこは強固な楔を求めて自然とほころぶものなのか。 「サボった罰だ。目の前でやってみせろ」  肩を抱かれてベッドにつれていかれた。三枝はぎくしゃくとベッドの(へり)に腰かけ、膝枕で寝転がった武内が頬を撫でてくるに任せた。  優しい仕種に不安が薄らぐ。理不尽な要求をしてくるし、粗暴な面があるのが玉に瑕だが、武内はきっとひねくれたやり方でしか愛情を表現できない人なのだ。  頃合いを見計らって、タオルの内側へと手をいざなわれた。おずおずと握って返すと同時に組み敷かれて、唇をついばまれる。  ヤニ臭いのは艶消しだが、太腿に押し当てられたペニスが頭をもたげるのと連動して萌むものがある。  口中を舌で丹念に慈しまれているうちに、強ばりが解けていく。  小刻みに震える指で下着とジーンズをずり下ろした。指示に従って、胡坐をかいた武内へと双丘を向ける形に四つん這いになる。  早速ローションが垂らされて、狭間をつたい落ちる。羞じらいと生理的嫌悪感をない交ぜに朱唇がわななき、むき出しの下肢へと波及する。  深呼吸をした。おっかなびっくり尻たぶを割り開いて、花芯に指をあてがう。  痛くない、大丈夫だ。ぐずる幼子(おさなご)に注射を打つ小児科医のように、ひるみがちな自分に言い聞かせながらギャザーをひと片めくる。

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