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第72話

 首筋に唇が触れ、脊柱との継ぎ目にかじりつかれた。身をよじると、その機を逃さず双丘が割り広げられて、健気に蠢く指にひと回り太い指が添う。  そして時折、コーチを買って出るふうを装って、つぷりと沈む。 「……は、ぁ……っ!」  三枝は眼鏡が吹き飛ぶ勢いで跳ね起きた。逃げを打つはしから引き戻されて、しなやかな肢体が弓なりに反る。  マン・ツー・マンによる実地教育の賜物だ。やがて二本の指がスムーズに行きつ戻りつするまでに、こなれた。 「おあずけを食らいっぱなしだったが、このくらいほぐれたら今日はイケるな」 「無……理、ひりひりして、限界……」 「受験組は夏休み返上でがんばってるのに教師が先に音をあげてちゃ、示しがつかないぞ」  そう発破をかけてきて、内壁をすり立てる。その拍子に指先がある一点を捉え、するとペニスに変化が生じた。  透明な手が包皮をめくり下ろしているように、しずしずと勃ちあがり、楚々と蜜をはらむ。穂先に露を結んで、糸を引く。 「ぅ、くっ……!」  三枝は、つられたように股間を見やって目を瞠った。快感を、味わっているのか……? 時期が至れば果実が笑み割れるように、そこは刺し貫かれるときに備えて、(ほと)びる兆しを見せているのだろうか。  バスタオルがはだけて雄がまろび出ると、覿面に怖じ気づく。獰猛な様相を呈するものをえぐり込まれ次第、きっと泣き叫ぶ。  第一、いわゆるバックヴァージンを奪われるということは、即ちアイデンティティに関わる大問題だ。性急に事を運びたがるさまに、心の中の迷路をさまよい、立ちすくむ。  とはいえ、すでに躰の芯に火が点いた。(さね)に狙いを定めて爪繰られると、内壁がはしゃぐ。ペニスがしなって、蜜を降りこぼす。 「見てみろ、やる気満々じゃないか。俺のを挿入()れて前と後ろを同時にこすってやると、もっと気持ちよくなる」  ぬるぬるとしごかれて首を横に振り、そのとき武内のスマートフォンが振動した。あまつさえ執拗に応答を迫る。

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