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第112話

「こっちに意識を集中しろ」  苛立ちをにじませて囁きかけてきながら、刺し貫かれた衝撃で縮こまったペニスを掬い取る。  何がなんでも勃たせてみせるという、ねちっこい指づかいでしごくのと並行して敏感な(さね)を狙い撃ちする。 「ん、んんん……っ!」  ギブ・アンド・テイクとばかりに、本格的な抽送がはじまった。脊梁がたわみ、汗の粒がころころと転がり落ちる。  ()れるには至らないが、隘路はいじらしくも学習能力に富んでいた。  集中的に深みをくじられると次第にコツを摑み、慎ましやかなうねり具合でペニスにしなだれる。蠢いて、精一杯もてなす。 「は、ぁああ、ん、んんっ!」  緩急をつけて核をすりたてられると、遠隔操作が行われているようにペニスが跳ね踊る。間欠泉さながら蜜が吹きこぼれて、そこに指が巻きつくと、淫らで妙なる調べを奏でる。  ふたり、ひと塊になったシルエットが壁をスクリーンに、時に激しく、時にのたりのたりと律動を刻む。  九割がた姿を現したかと思えば、襞をたくし込みながら埋没するまでに抜き差しに拍車がかかり、やがて最大限に膨張した昂ぶりが爆ぜた。  その拍子に核をひと突き、ふた突きして深奥にトドメを刺す。  脱力した躰が、ずっしりと覆いかぶさってきた。肘と膝が同時に砕けて、三枝は腹這いにひしゃげた。  硬度は減じたものの、幹はいまだに秘腔を占領していて、残滓をしぶかせるように痙攣する。  曲がりなりにも武内を逐情へと導いた、(なか)でちゃんとイカせてあげられた。重大な任務を果たし終えたような安堵感に包まれて、口許がほころぶ。 「ナカイキした。やっぱり素質があるな」  じかに刺激して達するときとは異なる極め方で放っていた。ペニスに指がからみ、そうと知らしめる執拗さで白濁を塗り広げる。  素質と、おうむ返しに呟いて肝をつぶした。淫乱という烙印を押されたようで、全身が桜色に染まる。  穴があったら入りたいほどで、それでも背中を覆うぬくもりを愛しいと思う。  もしも矢木がまた言い寄ってくることがあっても、今度は厳然と突っぱねることができる。

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