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第127話

   放課後になってようやく返事がきたものの〝欲求不満か〟と素っ気ない。  ところで胃は依然としてシクシクしていたが、昼食はきちんと食べた。  なぜなら殺気立っている売店の前を通りかかると、押し合いへし合いしていた矢木が持ち前のフットワークの軽さを発揮して、 「パシリに志願しまぁす。調理パンふたつで足りるっすか」  熾烈な争奪戦を制して人気ナンバーワンのアボカドソース添え唐揚げパンをゲットしてくれたのだ。  欲を言えばさっぱり系のサンドウィッチのほうがありがたかったとはいえ、心づかいがうれしい。心底から礼を言うと、矢木は照れ隠しだとわかる仏頂面で代金を受け取った。  矢木と武内を比較するのは、双方に対して失礼な話だ。だが武内に、矢木の十分の一の優しさがほしい、と望む気持ちがあるのは否めない。  さて、武内はあくる日の夜に訪ねてきた。三枝は出来合いのおでんを器に移し替えつつ、洒落た腕時計に目を走らせた。  ──レアものをネットオークションで落札した……。  以前、そう自慢していたときの武内は、花を散らしおおせたばかりの後ろを舌なめずりするふうにまさぐってこなかっただろうか。 「さる筋から先生のテンションが高いという情報を得ました。ネットオークションで、また掘り出し物に出会ったとかですか」    カマをかけるような姑息な真似はやめて、ストレートに訊けばいい。ヤケ酒を飲んだと称しながら喜びを隠しきれなかった理由(わけ)は何──と。  器を電子レンジに入れてタイマーをセットしている間に、武内は冷蔵庫を漁って缶ビールのプルタブを引く。 「しばらく出費が嵩むからな。倹約、倹約でコレクターアイテムを増やすどころじゃない」 「わかります。年末年始は飲み会の誘いも多くて万札が飛びますね」  クリスマスソングがテレビから流れ出した。気象予報士がイルミネーションに彩られた街をバックに、シベリア寒気団が南下してくると天気図を読み解く。  十二月は恋人たちの季節で、きらびやかな通りをそぞろ歩くカップルが何組も中継カメラに映り込んでいる。

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