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第130話

  「俺がやりたいときに黙って足を開くのがおまえの務め。ごちゃごちゃぬかすな」 「ゲス……っ!」  抵抗空しく組み伏せられたうえに、ネクタイを用いて後ろ手に縛られた。スラックスとひとまとめに下着をはぎ取られて、秘所を暴かれるが早いかうがたれる。 「……っ、ひ、ぐぅ……!」  荒っぽく深みを突きしだかれるたびに、激痛が全身を走り抜ける。だが泣きを入れることは、今後はセックスフレンド扱いに甘んじると同意すること。  ただただ揺さぶられるに任せて、暴虐の嵐を堪え忍んだ。  嬲り放題に嬲ったすえに、武内は意気揚々と引きあげた。廃棄処分のマネキンのように、ぐったりと横たわったままの三枝を一顧だにしないで。  ややあってエレベータの駆動音が微かに聞こえた。びくびくしながら巣穴から顔を覗かせる小動物のように、三枝は恐る恐る半身を起こした。  台所の床の上で辱められたために、膝が赤むけてひりひりする。縛られた痕は毒々しく欝血して、おぞましいのひと言に尽きた。  わけても後孔は痛いという次元を通り越して、火の点いた棒をねじ込まれているようだ。  これはデートレイプだ、これはデートレイプだ、おれはデートレイプの被害者だ……。  ヒステリックな嗤いの発作に襲われて口許がひくつく。噴き出し、けらけらと嗤った。  あんな鬼畜野郎を一度は恋人と呼んだなんて、お笑い種だ。三枝智也を操縦するのは簡単すぎて、武内はさぞかし万能感に酔いしれていたことだろう。  浴室まで這っていった。最奥に放たれたものをかき出してシャワーのコックをひねると、薄紅色を帯びた湯が足下で渦を巻いた。 「どうってことない……」  細胞はどんどん生まれ変わり、彫りつけられたように秘腔に消え残る痕跡さえも、いずれ跡形もなくなる。  忌まわしい記憶のほうも、季節がひと巡りするころには忘却の彼方だ。  では、ずたずたに傷つけられたプライドは全治何日なのだろう。  あるいは完治するまで月単位? 仮に年単位なら、その前に精神(こころ)を病む。

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