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第2話

 緋月(ひづき)は僕の一つ上の兄だ。血は繋がっていない。母が再婚し、一緒に暮らしてもうすぐ半年になる。  初めは緋月の歪んだ愛情に気付けなかった。  普段は面倒見の良い兄を演じ、僕に良くしてくれる。  高校は違うのに、放課後僕の学校まで迎えに来てくれて、買い物や映画へ連れて行ってくれたりもする。  僕も緋月も一人っ子だから、お互いに兄弟ができて嬉しかったのは事実だ。  状況が変わったのは一ヶ月もたたない頃だった。  ある日、僕がクラスの親友にカラオケに誘われたので、迎えに来てくれた緋月に「今日は一緒に帰れない」と言った。  緋月は笑って「わかった」と言い、一人で帰った。  その日の夜、緋月の部屋で僕は犯された。  緋月は抵抗する僕の手足をタオルやネクタイで縛り、「好きだ、好きだ」と言いながら僕の中に欲望を放った。  あの日から僕は、何度も犯されている。  緋月の逆鱗に触れた時に。  今日犯された理由は、「テレビに映ったアイドルをじっと見つめていた」からだそうだ。僕はそんなにじっとは見つめていない。  緋月は僕を拘束してセックスをするのが興奮するみたいで、必ず道具を使う。  縄跳びで後ろ手に縛ったり手錠をかけたりして、僕の自由を奪い、“お仕置き”と称してセックスをするのだ。  激しいセックスのせいであまり寝付けないまま、朝になる。  一階へ降りると、母と緋月は朝食の準備をしていた。義父は地方へ出張中だ。  僕に気付いた二人がニコリと笑う。 「やっと起きたのね。まだ着替えてないの? 相変わらずマイペースねぇ、少しは緋月くんを見習って欲しいわぁ」 「(おぼろ)は本当に朝が弱いよね。 顔洗ってシャキッとして来な。酷い顔だ」  悪びれる様子もなく爽やかな笑顔を向ける緋月にムカムカし、誰のせいでこんな腫れぼったい顔になったのか、この場で白状してしまいたくなったが耐える。  言われた通り、洗面所で顔を洗おうと前かがみになりパジャマの袖を捲った時、昨夜の手錠の跡が目に入り、慌てて手首を押さえた。  緋月は外面はとても良い。  毎朝母の手伝いを欠かさない。小学生の時に病気で実母が亡くなった事もあってか、僕の母に優しく接している。  学校の成績も優秀らしい。  母はそんな緋月と僕をよく比較する。  僕を下げて緋月を持ち上げる言い回しにはもう慣れた。  ――何にも知らないくせに。  顔を洗い、うっすらと切り傷のある手首に申し訳程度に絆創膏を貼ってから長袖の制服に着替えた。

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