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第3話

「朧、お前、手首どうしたんだ?」 「あっ」  教室の自分の席に着席した途端、急にぐいっと片手を持ち上げられる。  親友の誠司(せいじ)は、絆創膏が貼られた僕の手首を見てハッとした。  僕も慌てて手を引いて手首を押さえる。 「な、何でもないよ。ちょっと怪我しちゃって」 「そんなとこ普通怪我しねぇだろ。……もしかしてだけど、誰かにやられた、とか?」  誠司はいつも僕の事を気にかけてくれる。  正直、なんでこんな冴えない僕と一緒にいてくれるのか分からない時がある。初めて誠司を見た時、僕みたいなナヨナヨしたタイプは嫌いなんだろうなぁと思った。いつも輝いていて、クラスの人気者。  けど誠司は真っ先に僕に話しかけてきてくれた。  俺たち親友だよなって言ってくれた時は、飛び上がるほどに嬉しかった。  何も言えない僕に対し、誠司はふぅっとため息を吐く。 「俺で良かったら、話聞いてやるから。一人で抱え込んでんじゃねーよ」 「誠司……」 「今言いにくいんだったら、放課後ちゃんと話聞いてやるから。兄ちゃんが迎えに来るまで時間あるだろ? 俺、朧の力になりたいんだよ」  涙が出た。  こんなにも僕の心配をしてくれる人は今までいなかった。  僕は誠司の好意に甘えて、放課後、食堂の隅に行って緋月にされている事を話した。他人に話せる事じゃないとは思ったけど、誠司だったら信頼できた。  誠司は眉間にしわをよせる。 「何だよそれ。犯罪じゃねぇか。朧、そいつを警察に突き出すぞ」 「えっ? そ、そんなの無理だよ。そんな事したらもっと酷いことされる」 「じゃあ朧は黙って我慢してりゃあいいのか? これからずっと兄ちゃんの言いなりになるのか」 「それは……嫌だけど」  どうしたらいいのか分からない。  緋月はきっと、愛情表現の仕方を間違えているだけなんだ。ああやって僕に酷くする事で快感を得ている。  セックス以外は優しい。  勉強もたまに見てくれるし、出かけるのも楽しい。  もし離れる事になったら、それはそれで寂しい気もする。そんな複雑な気持ちまでは誠司には話せなかった。

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