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第4話
俯いていると、誠司は「じゃあこうしねぇ?」と言ったので顔を上げた。
「俺が兄ちゃんに言ってやるよ。二度とそんな事すんじゃねーよって」
「誠司が?」
「もうすぐ迎えに来るんだろ。丁度いいじゃん。ズバッと言ってやるよ。俺、見た目だけは結構悪そうに見えるし」
確かに誠司は、左右の眉頭同士が近く切れ長のつり目で、普通にしていてもたまに怒っているように見える。中学までやっていたという水泳のおかげでガタイも良い。
「どうせなら、俺たちは付き合ってるっていう設定にしねぇ?」
「え、そこまで?」
「演技すんだよ。そしたら兄ちゃんも、もう諦めようって気になるだろ」
けれど僕が誠司と付き合っていると聞いたら、緋月はもっと歪むんじゃないだろうか。
しかしここは誠司に賭けてみることにした。
もし今後また、僕にレイプまがいの事をしたら覚悟しとけ、と言ってくれるようだ。
もうやめろと言われて、緋月がすんなりと首を縦に振ってくれるとは到底思えないけど、何も行動を起こさないよりマシだ。
ちょうど緋月から「着いた」と連絡が来たので、誠司と正門に向かった。
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