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第6話

 近くの公園のベンチに座り、誠司が自販機で買ってきてくれたお茶のペットボトルを一気に飲み干した。  それでも喉がカラカラだ。  やっぱり大変な事をしてしまったんじゃないかと今更気付いた。手の震えが止まらない。  誠司はそんな僕を、優しくぎゅっと抱きしめてくれた。 「大丈夫だ。そんなに心配すんな」 「ほ、本当に大丈夫だよね? もしかしたら誠司に危害を加えたりするかも」 「あんなヒョロガリに俺が負ける訳ねぇだろ。それより、家で何かされそうになったら外に逃げて俺に電話を掛けろ。すぐに駆け付けてやるから」 「どうして、そこまで僕の為に……」 「……そりゃあ、お前の事が大事だし」  誠司は少し赤い顔をさせて、ボリボリと頭をかく。 「あのさぁ朧、こんな時になんだけど、本当に俺と付き合ってみないか?」 「え?」 「実は俺、ずっと前からお前の事が好きでさ……あぁもちろん、返事はゆっくりでいいよ!ちょっと考えてみてくれないか?」  照れながらそんな事を言われて、僕も顔が熱く火照ってしまう。  確かに僕も、誠司が好きだ。  でもそれは友情なのか愛情なのかは、ハッキリとは分からない。  何も答えずにいると、誠司に手を取られた。  痣のある手首をさすってくれている。 「俺だったら、あいつみたいに酷くなんてしない。すっげー優しくする。めちゃくちゃ甘やかして、大事に大事にする」 「誠司……」 「それに、あいつからお前を守らなくちゃな。だから前向きに考えてほしい」  いきなりの事だったから、この話は保留になった。  緋月がこのまま大人しく引き下がるとは思えなかったし、急に誠司と付き合う気にもなれなかったからだ。  とりあえず家に帰ることにした。  誠司は僕を心配して、俺の家に泊まれと言ってくれたけど、今日一日逃げたところで何も変わらない。  恐る恐る玄関のドアを開けると、綺麗に揃った緋月のローファーが見えた。  手汗を制服で拭いながら深呼吸をして、中に入る。

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