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第9話
あれから二十日が経ったが、何も起こらなかった。
まるで夢であったかのように、緋月は僕に全く関心を示さず、触れてこない。
放課後迎えに来る事もなくなった。
晩御飯を食べ、それぞれ自室に行ってただ眠り、朝起きてご飯を食べ学校に行き、また家に戻ってくる。
それを繰り返しているうちに、この世はなんて退屈なのだろうと思った。
本当は、期待していた。
緋月がもっと狂って、泣き喚きながら僕に縋ってくるものだと思っていたのに。
あんなに好きだと言って散々酷く抱いてきたくせに、お前の気持ちは結局すぐに諦められる程度のものだったのかと、まるで裏切られたような気分になった。
誠司は決して、あの時の返事を急かさなかった。それが余計に僕の心を動した。
誠司が好きだ。あんなに優しくて頼りになる人、他にいない。
そう言い聞かせたが、実は本音は、早くお仕置きして欲しい。それだけだった。
もう自慰だけじゃ物足りない。体を酷く弄んでほしい。そんな欲求が爆発寸前だったから、僕は誠司に告げた。
学校の誰もいない廊下の隅で、付き合いたい、と一言言うと、誠司は僕を思い切り抱きしめて濃厚なキスをした。激しい口付けにクラクラする。
「ありがとう朧。すっげー嬉しいよ」
僕はその場でもう一度キスのオネダリをしたが、人が通ったので叶わなかった。
誠司の両腕を掴んで、誘惑するように上目遣いで見ると、誠司はすぐに落ちた。
放課後、ホテルに行こうと誘ってくれたのだ。
生憎持ち合わせが無かったが、誠司は自分が払うと言ってくれたので、悪いと思いつつも甘えた。
きっと誠司も僕と早く体を繋げたくて仕方がないのだ。
学校近くのホテルだと誰かに見られる危険があったが、そんな事はどうでも良かった。
はやく欲求を満たして欲しくていっぱいだ。
部屋を選んで鍵を受け取り、ベッドになだれ込む。
「んっ……誠司」
「優しくするから」
言葉の通り、誠司の手つきは繊細だった。
触れてるか触れてないかの絶妙なタッチで肌の上を行き来する。
もどかしい。
乳首に触れるのも恐る恐るといった感じだ。
もっとして、とオネダリしても、誠司は気を使ってか、優しくキスをして緩やかに手を動かすばかりで、刺激が足りず全く感じなかった。
業を煮やした僕は、身を捩らせて感じたフリをしながら呟く。
「んっ、もっと、強くてもいいよ……」
「え、こうか?」
「もっと」
ぎゅうっと力任せに乳首を摘まれる。
さっきよりかはマシだけど……
下手くそ。そうじゃないのに。
このままではペニスは萎えたままだ。
一度起き上がり、ガラステーブルの上のクリアファイルをめくった。
「ねぇ、このホテルってアダルトグッズの貸し出ししてるって看板に書いてあったよね」
「あぁ」
誠司は自分のせいで僕がこんな事を言い出しているんだとは気付いてないようだ。
目に止まったのは、SM用の赤い紐。
すぐにフロントに電話を掛けて貸し出しをお願いした。
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