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第4話
忙しそうに歩く人々とせわしなく行き交う車のなか、視線を奪われた。あの人だ。焦がれていた人、夢の中の人。どう声をかけようかと思った瞬間感じた甘い匂い。花のように甘く、セクシーで官能的で脳みそが焼けて爛れて理性を失いそうな匂い。なぜ、どこから?思考がぐるぐると回って廻っているのにドロリと溶けていくのがわかる。目の前の人物から目が離せない。
「……烏を殺して」
泣きそうな表情であの人は云った。
首に嵌められた首輪にその性を理解し、絶望した。
目の前で腰に手をまわされエスコートされる姿をみた瞬間、「また約束がまもれなかった」という言葉が浮かんで消えた。
烏を殺して
そう、約束をまもれなかった自分は、約束どおり烏を殺す。
泣きむしなあなたを護ると決めたのに、また遅れをとってしまった。不甲斐ない。不甲斐ない。なんでこんなことを思うのかもわからないのに、そう自分を責め立てる。
夕陽の朱が目に沁みた。
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