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【6】
「底なしの快楽をこの体に教え込んでやる」
唇を触れ合わせたままそう囁いたシルビオの腰が激しく突き込まれる。
「んひぃ!」
衝撃で思わぬ声が漏れたヘラルドを嘲笑うかのように、彼の容赦のない突き上げが繰り返される。
シルビオの体に玉のように浮いた汗が飛び散り、ヘラルドの身体を濡らしていく。
繋がった場所からは注ぎ込まれた精液と破瓜の際に滲んだ血が抽挿と共に逆流して溢れてくる。
グチュグチュと卑猥な音をわざと立てるかのように、シルビオは容赦なく腰を叩きつけるように振った。
「ダメ……あぁ……シルビオ……さまっ」
「何がダメなんだ? お前が求めていたものを与えているだけだぞ?」
「ちが……これ、は……ちが……ぅ」
ヘラルドは下肢から与えられる強烈な快感に、自身が壊れていく恐怖を感じた。
血管がドクドクと脈打ち、心臓がはち切れんばかりに跳ねる。
殺戮を繰り返し、この部屋に戻ってきた時にはとうに失っていたと思われていた理性が、わずかに残っていたことを知り、それが愛しているはずのシルビオを拒み続ける。
子を成せば、愛される――いや、愛されていることは間違いない。だが、シルビオの愛情はどこか歪んでいた。
「――何を考えている? 俺との交尾中に他のことを考えているとは……。俺の妻になるのならば、もと躾が必要だな」
大きく広げられた脚の間でそそり立つペニスを力任せに掌で叩かれ、ヘラルドは悲鳴を上げつつも先端から白濁を撒き散らした。
「この淫乱めが……」
「これは……ちがう! シルビオ様……こんな、はずじゃっ」
「α種である俺の発情を助長させたのはΩ種であるお前のせいだ。そもそも……それを狙っていたのだろう? 俺の子を……あぁ……またイキそうだっ」
「ヤダ……! も……出さないでっ」
「発情期は子を成すためのもの。『運命の番』であるというお前に子種を注ぐのが俺の使命。さあ、たっぷりとお前の腹に注いでやる……一滴も漏らすなよ、ヘラルド」
シルビオの手がヘラルドの腰を掴んで自身の方に引き寄せる。より深く繋がった場所を突き上げるようにシルビオの長大なペニスが動く。抽挿のたびに中にあるいい場所を擦られたヘラルドはもう、喘ぐ事しか出来なかった。
手枷に繋がった鎖がガシャガシャと音を立てる。それはまるで二度と後戻りできぬようにとシルビオが施した
魂の拘束。愛しいという想いと彼の本当の姿を見てしまった恐怖が頭の中で交錯する。
ヘラルドは何度も首を横に振りながら「違う!」と声をあげる。
彼が思い描いていた理想。だが――現実はもっと淫らで美しく、そして残酷なものだった。
「――この国の民の血を纏ったお前は誰よりも美しいΩ種だ。俺の妻に相応しい……」
「シルビオ様……あぁ……イク、イクぅ――っ!」
もう何度目の絶頂なのか覚えていない。ヘラルドは背中を弓なりにしたまま女のような声をあげて昇天する。その度に繋がった場所がキュッと締め付けられ、シルビオがその快感に眉を顰めながら腰を突き上げる。
そして、大量の精を放った後も、抜くことなくゆるゆると腰を動かし続ける。
「んぐぁ――っ。ハァハァ……まだ足りないっ」
「ハァハァ……も、壊れ……る。変……に、なるぅ……っ」
「壊れろ。俺だけのものになれ。俺だけの……俺だけしか見えないように……」
「あぁ……シルビオ様! あ……愛して……います。この匂い……ハァハァ……もう、狂う……っ」
「狂え……っ。他の者と繋がることは許さない……この先ずっと……」
シルビオが口元を綻ばせながらヘラルドの乳首を抓りあげた。その瞬間、牙を剥き出したまま天井を仰いで嬌声を上げたヘラルドのペニスから白濁交じりの体液が飛び散った。
蕾が激しく収縮を繰り返し、シルビオのペニスをきつく喰い締める。こげ茶色の髪を乱し、うっすらと目を開けたヘラルドは恍惚の表情ですぐ近くにあるシルビオを見つめた。
唇の端から銀色の糸を垂らし、鍛えられた腰を妖しく揺らした。
「――もっと、もっとくら……さい。貴方のせ……し、いっぱい……くらさい」
聡明で野性味があり、決断力と優秀な頭脳を持ち合わせた側近。その彼が快楽に堕ちた瞬間だった。
わずかに残っていた理性は、シルビオから与えられる愛に打ち砕かれ、ヘラルドは伝説のα種である金狼に支配されたのだ。
「愛して……くらさい。私を……愛……してぇ」
ヘラルドが吹きあげた体液をもろに浴びたシルビオは満足そうに笑った。
「堕ちたな……。やっと、俺のモノになった……」
「シルビオさまぁ……あぁ……奥に、ちょ……らい」
「オネダリも上手くなって……。可愛い妻だ……フフッ」
プライドが高く絶対的な自信を持つ者ほど、快楽に呑まれ堕ちるのは容易い。
シルビオは最初からすべて分かっていた。だから、国中のΩ種の処刑を命じた。
この国にヘラルド以外のΩ種はいらない――と。
彼を愛するが故に、すべての行いに目を瞑ってきた。それは、彼がシルビオのために行ったこと。
これ以上の幸福はない。王として、伝説の血を継ぐα種として最高の部下であり妻を手に入れたのだから。
端正な顔立ちを蕩けさせ、赤い舌を伸ばしてキスを強請るヘラルドに、シルビオは再び腰を強く打ち付けた。
パンパンと皮膚がぶつかり合う音が静かな部屋に響く。窓から見えるのは闇夜を焦がす紅蓮の炎。
街が燃える。国が真っ赤に染まる。
ゆらゆらと立ち上る炎と、何とも言えない匂いが立ち込め始めた城内に響くのは、二人の息遣いと愉悦に歓喜する絶頂の叫び。
「――もう逃がさない。どこまでも一緒だ」
「あぁ……あっ! 愛しい……愛しい……シルビオ様」
「血に濡れ、快楽に狂う最高の宴だ……。ヘラルド、永遠に……楽しもうぞ」
シルビオの牙がヘラルドの逞しい喉元に突き立てられる。α種が伴侶となる者に施す愛咬。深々と抉る様に突きこまれた牙の冷たさに震え、ヘラルドは再び身体を震わせて射精した。
「支配……永遠に支配……して」
掠れた声でそうヘラルドが呟いた時、城門のあたりで大きな音が響いた。
こと切れた門兵の太い腕に絡まっていた鎖が解け、城門の扉が轟音と共に閉じた。
「逃がすものか……」
国王と側近。二人だけの狂気の夜が更けていく。
広いベッドの上で繰り広げられるのは、血と愛に塗れた最高の宴。
それは終わりのない夢――。そう、永遠に続く、果てのない運命の輪。
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