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 成良は明良と一緒に風呂に入り、その体を隅々まできれいに洗ってやり、股間の和毛(にこげ)を剃る。 「兄様ったら、突然あんなゴリラのような方を連れて帰ってらっしゃるんだから」 「絡まれたんだから仕方ないだろう?」  体の中に指を突っ込んでかき混ぜ、雄の汚れを出してやる。 「それにしても、よく時任の家庭事情を知っていたな?」  明良は「ああ」と言った。 「お金も稼ぎ出せない非公式なファンクラブの使い道なんて、情報収集くらいでしょ? 兄様のクラスメイトやキーマンになりそうなお宅の生徒の情報は集めさせているから」 「どうやって連中を操ってる?」  明良が上目に成良を見る。 「それはまあ、主に春日さんを使っていろいろと――あんっ」  いきなり疼きを生み出す場所をもまれて、明良は甘ったるい声をあげた。 「兄様の、ためになっ、たでしょ?」  明良はよがりながらもむくれている。 「ああ、ありがとう。でもやりすぎるな。手はきれいにしておけ」 「わかって、あっ」  明良はのけぞって喘いだ。 「んっ、今日はきれいな体で、兄様と寝ると、ああっ、昼休みから決めていたのに」 「わがままだな、アキは」  明良の声が弾んだ。 「僕、悪い子? 悪い子かしら?」 「ああ、悪い子だ。何もあいつに挿れさせてやらなくてもよかったんだ。もっと早く俺を呼ぶべきだった」  明良の表情がとろりと溶ける。 「ごめんなさい、兄様。悪い子に罰をください。どうか赦して」 「赦さない」  バスルームの床に這わせ、肩から背にはバスローブを掛けてやる。はみ出している桃色の尻を成良は平手で打つ。ひときわ高く音が鳴り、反響する。 「ああっ」  明良の体がぶるぶるっと震えた。成良はまた手を振り上げ、赤く手のひらの形が浮いてきた尻を叩く。 「兄様、赦して、いたい。ごめんなさい」 「何を謝ってるんだ――」  パシン。 「時任さんと、セックスしたこと」 「それだけじゃ、ないだろう――」  パシン。 「昼休みのキスが、下手だったこと」 「他には?――」  パシン。 「母様似で、ごめんなさい!」  一瞬だけ、間が開いた。 「似ているだけか?――」  パシン。 「ごめんなさい、母様を奪ってしまって、ごめんなさいっ」  パシン。パシン。パシン。 「お前は悪い子だ――」 「ごめんなさいっ、きもちい、もっと、叩いて」 「兄様の心の中を、言い当てた――」  パシン。 「ああ、兄様、大好きっ」  明良が抱きすがってきて、成良もバランスを崩した。 「愛してる、明良、アキ――」  兄弟は抱き合って、床を転げ、濡れながら互いの舌を求め合い、唾液を吸い合った。  いつものように成良が明良の体に深く深く楔を打ちつけ、明良は喜悦の涙をこぼした。 「兄様、兄様、にいさまっ、もっと、もっと狂わせて、もっと兄様で、僕を、埋めてえ」  ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ。濡れた音がいやらしく響く。 「アキっ、俺のものだ、俺の明良、お前はどこにもやらない。俺だけのアキっ」 「僕は、兄様の、ものっ、母様みたいに、いなくならない、ずっと、ずっと」  明良の爪先がひくひくしている。限界がくる。  成良は肉を激しく打ちつけて、明良の弱点を責め付け、明良はヒイヒイと泣き声を上げた。 「イクっ」  成良が明良の体の最奥へ、鼓動のように欲望を吐き出すのと同時に、明良もまた自分の腹へ白濁を送り出した。  成良は、半ば意識を飛ばした明良の根元から扱いて中に残る精を絞り出してやり、自らも明良の中から自らを抜いて根元から絞り上げた。  大きな人形を手入れするようにやさしく顔も胸も腹も中も洗ってやり、髪に頬ずりをする。キスをしバスタオルで丁寧に拭いてやる。  やがて目を覚ました弟は、優しい兄に抱きついてキスをねだる。 「愛してる、兄様」 「俺もだよ、アキ」  二人ともバスローブを纏って、まだ足もとのおぼつかない明良を成良は二階の自室へ運ぶ。  白を基調にした成良の部屋の家具も、やはり曲線で形作られている。  まずは疲れた体を休めるため、今夜も食事の前に眠る。  明良が成良の耳に囁く。 「兄様、明日こそ母様のお部屋で悪い子のアキにいっぱい罰を下さいね」 「わかったよ、アキ。今日は疲れたろう。ひと眠りしよう。夕食を食べたら宿題を見てやるよ」 「ありがとう、兄様」  ふふっと明良が笑った。 「どうした?」 「兄様の体、温かくてすべすべで気持ちいい」  成良は明良の体を胸にすっぽりと抱き込む。明良が頬ずりをした。 「おやすみなさい、兄様」 「おやすみ、俺のアキ」  美しい少年たちがぴったりと寄り添い、曲線の家具に包まれて眠る姿は、あたかも(まゆ)に守られているようであった。  繭ならばいずれ中から破られる。が、この二人の幼生(ようせい)たちは今はまだ微睡(まどろ)みに浸りきっていた。 ――了――

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