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「加瀬の奴はある資産家のボンボンで、ま、後継ぎみたいなもんかな?今はあんな姿だけど、数年後には卒業して、家を継いでもらわなきゃならないんだ」
「後継ぎ?貴遠は…」
「あいつは、加瀬の親父さんが愛人に産ませた息子。今はすました顔して親父さんの会社で働いてるけど、ここ数日、会社には出てなかったみたいだね。なんかくさいなあ、と思っていたら、加瀬を攫ってさ、何を吹き込んだのか知らないけど、いつもなら大人しく捕まるタマじゃないのに、あっさり捕まってさ」
「加瀬は…無事…なのか?」
「まあ、殺されては無いと思うよ。後継ぎだし」
柳田はあっさりと答えた。
「加瀬の、実家って、その…ヤ…」
「あああ!違うよ。誤解だよ。ただ、そのなんとかよりかは質が悪いかもしれないね。一日に動かす金の力ってやつ。一族の中で、妾腹派と、加瀬派に分かれてる。俺は、昔のよしみで加瀬とは仲がいいの。まあ、言っちゃえば、イトコなんだ。俺は勘当されてカメラマンやってる」
「…後継ぎ、ってことは、結婚もするんだろ?」
愁の言葉に、柳田は黙り込んだ。
「…まあ、そうなるよね」
肯定した柳田の言葉に、愁は黙り込む。
「あ、ちょっと待った。いま、じゃあ身を引こうとか考えなかった?」
「え」
「あいつに、本当のことを聞いてから、決めようよ」
柳田の言葉に、真意を突かれて愁は再び黙り込む。柳田のスマホに、メッセージが入ったのはその時だった。読み上げ機能が、住所を伝える。
「お、貴遠のやつ、あっさり吐いたんだな」
柳田は住所をカーナビに入力すると、アクセルを踏んだ。
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