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「…っ、え…」 「俺もムシャクシャしていたんだ、これくらいの喧嘩では満足しねぇよ。まあ、代わりにお前が慰めてくれるっつうんなら、俺はそれでかまわない。なぁ?かわいいシュウちゃん?」  加瀬は、目を細め、愁の顔色を覗き込むように嘲笑った。 「か、加瀬…おれは…」  加瀬の指が、愁の言葉を遮る様にその細い首を絞めた。 「!…ぁ…」 「わかってるんだろ?これから何が起きるのかぐらい。体中熱くしやがって、この淫売が」 「…ッ」  霞む視界で見た加瀬は、余裕を失っているように見えた。 「…俺を忘れられない体にしてやるから、覚悟しろよ」 「ん…っ、加瀬…っ」  熱い吐息が触れ、堪らないとばかりに濡れた唇を震わせると、愁は加瀬にキスを強請った。低く喉を鳴らして、その唇を柔らかく噛むと、加瀬は愁を抱き上げる。加瀬から放たれるバニラムスクに包まれ、愁は目を瞑った。  かつて事務室だっただろうフロアのパーテーションを乱雑に蹴り倒すと、加瀬は愁を取り残されていた事務机の上に押し付け、タンクトップの裾を掻き上げると愁の腕を一纏めに縛りあげた。  あらわになった白い肌を、外界から忍び込むネオン光が厭らしく染め上げる。赤く染まった乳首を、加瀬の指が弾くと、微かな腹筋が、官能的に蠢いて見えた。  青白く反射した加瀬の双眸がこちらを冷たく見下ろしている。 「…っ…」 その唇の合間から現れた赤い舌が、形の良い唇を湿らせる。陶器を思わせる白い端正な顔立ちの中に、沸騰するような情欲を感じて愁は込みあげる熱い予感に身を震わせた。  加瀬は愁のブーツを剥ぎ取り、投げると、ジーンズを脱がせた。 下着の上からわかるほど、愁はペニスを勃たせていた。既に濡れた下着を掴むと、加瀬はそのまま引き裂く。 「!」 瞬く間に裸にされた愁は、隠すこともできずに両膝を付けようとした。が、加瀬が舌打ちと共に内腿を引き叩き、愁は戸惑いながらそれを止めた。 「もっと、丸見えにしな」  加瀬は、愁を見下ろしたまま言い捨てた。その一言は突き刺さる様に響いたが、愁の中で麻酔のように甘く痺れるように広がった。

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