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第4話

もう駄目だ________________ 「…っと、ごめんね、俺今ここで彼女と休んでて」 聞き慣れた、低くとも優しい声が耳に入った。 「なんだよ佐々木かよ」 「てかお前ここ会社だぞ〜」 「何したんだお前らー」 「ごめんごめん、俺の彼女、恥ずかしがっちゃうから中は入るなよ?な?」 「はいはい」 「お幸せに〜」 「てか場所考えろよお前ー」 そんな会話が聞こえた後、足音がドアの前から消えていった。 「はぁー、あっぶねー」 大きな溜息をついた後、佐々木は此方を振り返った。 「…あ……、ぁう…っ、………俺……」 佐々木は、どうすればいいかもわからず狼狽える俺を見てにやりと笑った。 「あれー?上条さん何してたんすかこんなところで、こんな格好で?体調悪いってのは嘘だったんですかー?」 「ち、違…っ、違うっこれは…っ」 「しかもこれ…もしかして見られるって思って興奮してイっちゃったんですか?うわー、やらしー」 「違う、違うんだ…俺は…ただ……っう゛ぅ」 違うと口から出ても何が違うのか自分でもわからず、精液でぐちゃぐちゃになったスーツを見て涙が滲み、視界が歪んだ。 「えっ、ちょっ、嘘、嘘嘘、泣かないでくださいよ上条さん、大丈夫ですからっ!」 佐々木は慌てて俺に駆け寄り抱きしめると頭をそっと撫でた。 「こんなとこで何やってんすかほんとに………っていうか、この香り…上条さんって………」 もう言い訳ができなくなってしまった。今までαの連中よりも結果残して、自分がαの存在で居続けてたのにもう駄目なんだ、そう思うと涙が止まらなくなった。 「バラしたいならバラせばいい…っ、ぅ、俺は…っ本当はっ、αなんかじゃなくてぇ、Ωなんだよぅ゛う、」 「えっ?Ω?って、ちょ…泣かないでくださいよっ、いい歳した大人がっ、あぁ、もう、ほら、泣き止んでくださいってば」 佐々木に涙を拭かれ、嗚咽が漏れるながらもぎゅっと佐々木にしがみついた。 「上条さん…その、こんな時に言うのもあれなんすけど、あんまくっつかないでほしい、です」 「っなんで、お前も俺のこと、嫌っ…?」 佐々木にまで嫌われたら俺の居場所は本当に無くなってしまう。 「いや、そうじゃなくて………あぁ、もう、だからっ、俺はっ!!!!」 急に手を掴まれ、佐々木の局部へと当てられる。 「ちょっ、お前っ、なに、してっ!?」 「おお、おお俺はッッッ、本当はαだし、ずっと上条さんのこと、こういう目で見てて、その…っ、す、好きッ、なんで、あんまりそうやってくっつかれると困ります!」 顔を真っ赤にしてそう言う佐々木が妙に可愛く思えてしまい、俺は更に佐々木にしがみついた。 「佐々木ぃ〜」 「だ、だからやめろって言って…ッ」 「俺、嫌な態度しかとれないから〜、うっぅ゛、佐々木にも嫌われたらどうしようって、思ってっ、う゛っ」 「上条さん…」 「なんなんだよお前〜〜、俺、αのことは大っ嫌いなのに〜責任取れバカヤロ〜〜」 涙でグダグダになってしまった俺の精一杯の告白は、どうにかして佐々木に届いたようで、佐々木は何度もうなずいた。

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