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第13話 地鎮祭②

康太は…榊原が取ったホテルで着替えていた 狩衣の衣装からパーティー用のスーツに着替え、祝賀パーティへと参加する 少しだけ翳りを見せ、疲れた表情の康太に… 「大丈夫ですか?」と榊原は心配して問い掛けた 「少し疲れただけだ…」 「祝賀パーティ…出られますか?」 「少しだけ参加して…帰る お前に話さないといけねぇ…話もあるしな…」 「ええ。その為に、この部屋を取りました。 ずっと…君は苦しそうでした…聞いても言わないのは解ってるので…聞きませんでしたが… 今宵…やっと聞けるのですね…」 「おう!もう少ししたら…総てを話す…」 康太がそう言うと… 『それはならん!』 と弥勒の声が響き渡った 「あんだよ弥勒?邪魔すんなよ!」 『総てを話してはならぬ』 「どうせ…次の転生に…解るぜ?」 『それでも!だ。』 「弥勒、邪魔をするなら…お前でも容赦しねぇぜ! お前が封印を解き完全体になっても…オレには勝てねぇ 違うか?弥勒!」 『勝てぬと解っていても俺は止める! お前にトドメを刺されるなら本望だ!』 「弥勒…」 『何だ?』 「口を出すな…」 康太は冷たく言い放った 今までの康太を知れば想像もつかぬ程… 冷徹で容赦のない低い声だった 康太の決意は固かった それでも…弥勒は康太を、止めたかった 「地鎮祭に出ねぇと想ったら… その声の響きは…魔界からか?」 魔界に…何の用が有って行ったのか… 康太には総て…お見通しだった 『お前の父の建御雷神に逢いに来た』 弥勒が答えると、康太は、ほほう…我が父に…と呟いた 「我が父は…お前に何て言った? 旧知の友に…父は何と言った? 答えろ、転輪聖王!」 『………』 弥勒は答えなかった 「弥勒、お前との覇道を切る これ以上の口出しは、するな!」 『…康太…頼むから…』 「弥勒、オレは総てを話すと決めている」 『…話して…受け入れられなかったら… お前はどうする?お前は…』 後は…言葉にならなかった 『我が父に伝えろ! オレは幾多の転生を経て…やっと使える傀儡になれた!…とな!」 『……康太!』 弥勒は康太を止めるように言葉をかけた 「ならな!弥勒!邪魔されたくねぇんだよ! もう口出しするな!」 康太はそう言うと、覇道を断ち切ろうとした 『…康太!切るな…口は出さぬから…』 弥勒の悲痛な声が響き渡る 「ぜってぇに!口出しするな!」 『…行意!』 「なら…そこで見てろ!」 康太はそう言うと…瞳を瞑り… 覚悟した様に…その目を開いた 「伊織…」 「はい。」 「祝賀パーティーは休むと…連絡を入れてくれねぇか?」 「参加されないのですか?」 「お前に話さねぇと…な。 総ては…そこから始まる… 今宵はおめぇに話すと決めてるんだ!」 それ以上に大切なものなんかない! 康太の決意がひしひしと伝わる 榊原は胸ポケットから携帯を取り出すと、慎一へ連絡を入れた ワンコールで『はい。何かありましたか?』と勘の良い慎一は問い掛ける 「祝賀パーティーは…欠席すると伝えて下さい 康太は疲れが酷い様なので、休ませます ですから、明日の朝まで一切の電話も連絡も出来兼ねますと伝えておいて下さい」 『解りました。 康太を宜しくお願い致します』 慎一の言葉から…主を思いやる言葉を榊原に送る 榊原は「ええ。解ってます。」と静かに返し電話を切った 携帯の電源を落とし…誰から邪魔される事なく話をする為に 室内電話の受話器も外した 榊原は康太に向き直ると、微笑んだ 榊原はどんな事があっても… 康太を受け止めると決めていた 何があっても… 康太を愛すと… 誓った その想いは…幾多の転生を経ても変わらぬ そればかりか…幾多の転生を経るたび… 愛しさが募る 榊原は静かな…穏やかな瞳をしていた 康太はそんな榊原の瞳を見て…微笑んだ 総て…話す 総て話して… 榊原に…嫌…青龍に嫌われても… 総てを話したかった それこそが…炎帝が在る… 総てなのだから… 康太は、榊原が結んでくれたネクタイを外すと…Yシャツのボタンを幾つか外した そして、ベッドに腰を下ろした 榊原は静かに、ベッドの前のソファーに座っていた 「さてと、話をするかんな!」 「ええ、君が納得行くまで話して下さい」 「おう!総てを話すと決めてる、オレの総てをお前に話すと決めた!」 「話す前に…これだけは言わせて下さい 愛してます康太。愛してます…」 榊原は康太を見つめ 「愛してます…炎帝」と言葉を贈った 「僕の想いは変わらない… これだけは、忘れないで下さい」 榊原が言うと…康太は泣きそうな顔をした そして…静かに話を始めた 「伊織…お前はオレの家の事を 何処まで知ってる?」 「ご尊父が建御雷神 ご尊母が天照大神 御貴兄が現閻魔 雷帝 イザナギ イザナミの血を与し…子孫 それまで…で御座います」 「発祥の神の血を与し血筋だ 古来の神の殆どが…縁者となる 弥勒…転輪聖王も…例外ではない」 榊原は静かに聞いていた 弥勒…転輪聖王(てんりんじょうおう)とも何処かで繋がっているとは…想っていた 弥勒の…あの康太への執着は… 今世の限りではないと想っていた 「古来の神と大陸から渡って来た神が 天魔戦争の時に…抱いたのは…恐怖と危惧 二度と…天界に…負けぬぬ力を持つ それしか考えぬ…時代があった」 2度と…侵略されぬように… 2度と…無益な血を…流さぬように 古来の神々は… 集結した 「魔界も…天魔戦争で壊滅的なダメージを受けた 神々が…消滅した…禍根も遺さぬ様に…跡形もなく…消滅した その傷も…癒えぬのに…侵略されたら…魔界は…一溜まりも無い… 生き残った神々は…考えた どう言う策を取ったか… 解るか?伊織…」 「僕には…解りかねます…」 「我が父…建御雷神 を筆頭に 母…天照大神が賛同する神々を集め… 弥勒…嫌……転輪聖王が 禁断の魔法を使い…禁断の魔方陣を描いた この世に…とんでもねぇ魔物を造り出す為にな… どんな魔物が束になって討ちに来ても… 火炎の炎で焼き尽くす…化け物をな… 産み出そうと… 神々は…集結した 神々は、自分の体躯の一部や能力を…弥勒に預け 固唾を飲み込み…見守った 魔物を産み出す方法は…人と同じ 腹に子を宿す 神々は、腹で子を宿さぬ 己の血からを分け与え…産み出す存在 魔方陣の中で…父と母は交わり…セックスをした 激しく抱き合えと言われ… 神々の前で…まぐわり…繋がり…子を宿す 我が父……建御雷神の精液に混じり…我が母…天照大神の血肉を掻き分け腹に宿る その瞬間…転輪聖王が神々の力を…子となる球体に注ぎ入れ力を継承させた その子供は…神々の…力を受け継ぎ…化け物となる… 母の腹に宿って…30分で…腹はみるみる腫れ上がり… 神々の見守る中…母は股を開き… 子を産んだ… 血みどろになり生まれし嬰児は…総ての能力を受け継ぎ…産まれた瞬間から…喋った」 康太は…そこまで一気に喋り… 一息着くように…息を吐き出し 「その子供こそが…炎帝! そう。オレだ!」 と、榊原に告げた その時…天空から…声が響き渡った 『総ての罪は…我等が受ける だから我が子を責めないでやってはくれぬか?』 声の主は…炎帝の父の建御雷神だった 「父者…人の世に介入は禁物の筈」 『炎帝、お主は…総て話してしまった 来ぬ訳には行くまい!』 「来世は大掃除をしろと兄者が言うからな… 掃除をすれば…オレの産まれた経緯も解るって事だ 来世になって…蒼い龍を失えば… オレは暴走する… 世界など総て消えれば良いと…総てを昇華してやる…」 失えば… 正気でなどいてやるものか! 破壊して 破滅して 傀儡の名のまま 心を無くして… 総てを昇華してやる そうなる前に… 話しておきたかった 話さねばならなかった 蒼い龍の愛した…モノは 殺戮する為だけに… この世に送り出された 存在……だと 「オレは神々の総ての力を継承した その時に総ての記憶も…継承した オレはほぼ始祖まで解る オレの解らぬ事など…多分ないだろうな オレと言う容器を…父と母が造り その中に…神々の総ての力を入れた オレは…作られた…傀儡 魔界の為だけに在る だから…何しても許される つまらない… つまらないから問題を起こした 欠伸しか出ない日々に… オレの存在理由などない!」 建御雷神は、康太の前に…姿を表した 「炎帝…炎帝! お前も我の子供だ 雷帝と変わらぬ…我の子だ! お前に背負わせた…罪を… 幾ら悔やんでも… もう…取り返しはつかない だがな…父は…何時もお前を愛してきた 兄も母も…お前を愛した それだけは… 忘れないで…おくれ」 健御雷神は…そう言い… 炎帝を抱き締めた そして、青龍へと向き直った 『我等…神々は…間違いを犯した 命を…軽んじた訳ではない だが…当時は…襲撃に脅え…護る事しか…考えてはいなかったのは事実だ 我は…我が子を傀儡などとは思ってはおらぬ 紛う事なく…炎帝は我が子だ 母 天照も…同じ想いだ』 健御雷神は…我が子を離すと… 青龍に…深々と頭を下げた 『許されはせぬ、罪は我等が背負う だから…炎帝を責めないでやって欲しい…お願いする』 青龍を失って… 生きては行けまい 願いに近い…言葉だった 榊原は、康太に手を伸ばすと その腕に抱き締め 「お願いされなくとも、僕は炎帝以外は妻には娶らぬつもりですので、ご安心を!」 と、返した 男前の顔を…キリッと引き締め 青龍が嗤う 蒼い妖炎を立ち上げ…青龍は… 炎帝を手にして離さなかった 「炎帝が出来た経緯など、どうでも良い」 青龍はそう言い、嗤った 「僕は、寧ろ貴方達に感謝をします! 炎帝をこの世に産み出して下さって、ありがとうございます!と。」 青龍は健御雷神に頭を下げた 青龍のケジメだった 「でも来世、還っても…あなた方の好きにはさせません!」 青龍の決意だった 例え…化け物だとしても… 傀儡だとしても 違法な魔法で産まれたとしても… そんな経緯など… どうでも良い そんな些細な事など… どうでも良いのだ 必要なのは「炎帝」と言う愛すべき存在 青龍も炎帝を失って行きて行く気はなかった 炎帝をなくしたら… 一秒たりとも…生きている気はなかった 「総じて龍は…細かい事は気にしません!」 黒龍や赤龍…地龍が聞いたら… それはお前だけやろ!と怒りそうな台詞をさらりと吐いた 青龍は「僕は…この命が消滅する瞬間まで…炎帝を愛します!」と宣言した 『青龍殿…我が子に…変わらぬ愛を… 誓ってくれるのか?』 健御雷神は…驚いていた 炎帝が産まれた経緯を聞けば… 殆どの奴が…裸足で逃げて行く 破壊神にもなれる… その力…強大なものなり 止めれる存在は皆無に等しい ひと度 誤れば… 世界の総てが…消滅する 核ミサイルより脅威なり 親でも…その瞳で…見詰められれば… 背筋が寒くなる時もある だけど、誰よりも愛して 育てた 極力、他の子供と変わらぬように…育てた 雷神は…弟を溺愛した 総てを知って……弟を溺愛する それが、兄としての愛だと… 我が弟へ伝える愛だった 「健御雷神、僕は…炎帝の魂があれば、器は拘らないんです! 容器など…取るに足らない存在 どんな容器に入って、それを受け継いでいようとも… 炎帝の魂がそこに在れば良い! その容器に炎帝の魂が入っていれば… 僕はそれだけで愛せます 炎帝ならば、僕は愛する事が出来る 炎帝が世界を破滅するならば、僕を殺して行けば良い 炎帝のいない世界に一秒たりとも… 生きるつもりなど…ないのですから!」 青龍は言い切った 自分が炎帝のストッパーになると 宣言したも同然だった 青龍の腕が…炎帝を抱く その腕に…躊躇はない 愛して愛し抜いた恋人の腕だった 『青龍殿、無事魔界に還られた時には 二人は夫婦となると良い それまでに四龍のご両親殿にご挨拶して根回しはしておこう!』 青龍は願ったり叶ったり…と唇の端を吊り上げ嗤った ゾッとする程の…嗤いだった 冷静な…面持ちの下に… これ程の残虐な顔を隠していたとは… 健御雷神は…改めて青龍は甘い男ではないと…知った 「健御雷神、心配無用 我が兄黒龍が根回しはしてくれてる筈 父や母は賛成してくれてると想いますよ」 青龍は…すでに根回しは終わっていると… 健御雷神に告げる 何処まで行っても抜かりのない男 その男が命を懸けて…炎帝を愛していると言う 炎帝のストッパーになるのは… 間違いなく…青龍以外に…有り得なかった 「僕の妻は炎帝以外はいない 他は要りません それは…誰が何言おうと違える気はありません!」 宣言して…思い付いた様に 「炎帝と二人、生きて行きます。 この先奇跡が起きて…炎帝が妊娠する様な事が起きたら…僕は飛び上がって…喜びますがね 僕は良い父親になれる自信はあります 炎帝と僕の…愛し合った結果で出来た子供以外は…意味ないですからね 他は要りません!」 と、有り得ない言葉を健御雷神へ送った 炎帝は男 青龍も男 幾ら神でも…男同士では…子は成せない それは人間界も魔界も変わらない事だった なのに、茶化して言う 既に終わった話だと…言ってるみたいに… 「子は産めぬと解ってて言ってるので ご心配なく。いっそ炎帝が産んでくれたら… と言う願望はありますけどね」 青龍は…楽しそうに笑った 「健御雷神」 『何だ?』 「これより康太の体躯に…問い質さねばならぬので…お帰り願いたい」 青龍は容赦は…しませんよ と、炎帝へ詰め寄った 健御雷神は…青龍に深々と頭を下げると その場から…消えた 榊原は立ち上がると…康太の横に座り 「さぁ、君の総てを聞きました 何故…今 話したのか? 説明をお願いします!」 康太の顎を上げ… 瞳を捉えて…問い質す 「お前に…総てを告げる覚悟だった」 「何故?」 「近いうちに…魔界に行く そうすれば間違いなく…オレの出生の秘密を知る事となる オレが魔界に行けば…お前も来るだろ?」 「当然です!」 「そしたら…お前の耳に間違った情報で伝わるかも知れねぇ… それだけは…避けたかった」 「何故…魔界に?」 「黒龍から何も聞いてねぇのかよ?」 「我が兄は君がお好きですからね。」 「好きとかじゃなく…」 康太は…言い難そうだった 「話して下さい! もう隠し事は…沢山です」 「魔界で暴動が起きてるのを知ってるか?」 康太から想わぬ言葉が飛び出し… 榊原は「……え?」と耳を疑った 「…黒龍が…伝えに来た」 「何を、ですか?」 「四龍の父君、金龍が襲撃にあい…怪我をした 金龍でなくば…死んでいた 四龍の母君、銀龍が…ショックで倒れられた…」 「我が父を襲った輩は… 解っているのですか?」 「……知ってどうする?」 「…っ!…」 榊原は逆上していた 犯人を聞き出せば…殺しに行きそうな位に… 「聞かせて下さい…もう大丈夫ですから」 「魔界は今 変革期にある この前、お前達が行ってバランスを取って来たが…歪みは…とうに出てしまってたんだよ その歪みが…表に出て…魔界の常識を覆そうと動いてる そう言う奴等は、古い魔界の常識を嫌い 自分達で新しい風を吹き込もうとしている 古い神は…ターゲットにされた その中の一人が…金龍だった それだけだ…我が家族も…明日は知れぬ」 「魔界へ…行かれるのですか?」 「行かねぇと…収まらねぇ」 「君が行っても収まるとは想いません!」 危ない場所に…わざわざ… 愛する人を出す気はない 出したくない 榊原は、もう危ない事はして欲しくはなかった 「伊織…いや…青龍。 オレは、その為にだけ在る存在なんだよ!」 「君を止められるのは僕しかいない 違いますか?」 榊原の言葉に…嫌な予感が漂う 「………違わねぇ…」 「なら、僕は君と共に行かなきゃね」 榊原は、何だか楽しそうだ 「僕は動かないので安心して下さい 君が暴走しそうなら…この身を擲って…止めます 僕を殺しますか?」 「出来る訳ねぇだろ!」 康太は怒った 「なら大丈夫。 僕は君のストッパーになれますね」 「伊織…」 「君が死ぬなら、僕を殺してから死になさい!」 凄い無茶な事を言ってるのは承知で言う 「赤龍は?」 知ってるのですか?と問う 「まだ言ってねぇ」 「そうですか。 なら明日教えて、明日行けば良いでしょ? 一段落着いて白馬に行くだけですよね?」 「おう!」 「ならば、今宵は君の体躯に、たっぷりと…」 榊原は康太を引き寄せ 耳の中に下を挿れ…舐めながら囁いた 「僕を刻まないといけませんね!」 榊原の瞳に欲望の光が灯る 康太は…終わらない夜を感じた

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