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第17話 魔界編 対峙②

炎帝が庭へと出向くと、そこには宇迦御魂の手の者が数名待ち構えていた 炎帝は知っていて側まで歩いて行った 「炎帝!宇迦御魂様が聖地にて待つと言っておいでだ!」 と、その中の一名が炎帝へと告げた 「聖地にて…? それは何処なんだよ?」 さっぱり解らねぇ…と呟かれ… 男は…ズリツとずっこけた 「聖地を知らぬのか…」 「おう!人の世に落とされて1000年以上経つかんな! 魔界も変わったと言うことか!」 ガハハっと笑われ… ペースを崩す 「オレを行かせたいなら、それなりの出迎えがあるんじゃねぇのかよ?」 バカにした様に言われ… 若いのはカチンっとした顔で… 「化け物なんだろ!飛んで来いよ!」 と、叫んだ 炎帝は紅い妖炎を立ち込めて 「化け物なら化け物らしくしねぇとな!」と 紅蓮の焔を…叫んだ輩に投げ付けた するとその男は…一瞬して燃え上がり…消えた 「うるせぇ奴は消えた! さてと、ご案内宜しくな!」 目の前で…仲間が一瞬で消えた… その様を見せ付けられ…男達は息を飲んだ 炎帝は唇の端を吊り上げ不敵に嗤う 「オレの焔は一瞬にして駆け巡る 1000人来ようが何万人束になって来ようが オレには叶わねぇんだよ!」 「ふん…お前など聖地に行けば…!!」 男は叫んで仲間に押さえられた 聖地に行けば… 何か罠があると言うのか 炎帝は楽しそうに嗤う 「へぇ~弱っちい奴等はセコい事しねぇとな勝てねぇもんな!」 と、挑発する カッと頭に血が上る輩を押さえ付けて 黙らせると…奥からやたらとデキる風情の男が姿を現した 炎帝はその姿を目に止め せせら笑った 名乗りもせず、その男は用件を告げた 「炎帝様は聖地を知らぬと仰有るから 教えて差し上げましょう! 聖地クシナガラ 涅槃(死)の地 に御座います!」 慇懃無礼にペラペラ喋る男を見て 炎帝は「金鵄(八咫烏)黙れ!」と呼び捨てた 呼ばれた金鵄は驚愕の瞳で…炎帝を見た 名乗ってないのに…何故… そこへ…奥の方から静観を決めていた男が姿を現した 「失礼を!炎帝様」 天御虚空豊秋津根別が前に現れて来て 宇迦御魂の目論見を推し量る 炎帝は「 天津 」とその人の名を呼んだ 天津と呼ばれた男は深々と炎帝に頭を下げた 「天津、口の軽い鳥など捨ててしまえ!」 意地悪く言うと天津は苦笑した 「聖地クシナガラまでお越し下さい」 「良いぜ!行ってやってもよぉ!」 炎帝はそう言い閻魔の剣を手に出した その場にいた男達が息を飲んだ 閻魔の剣を意図も簡単に…手に出せるとは… 「涅槃まで行くのは面倒だ!」 炎帝はそう言い時空を切り裂いた 「弥勒!時空を繋ぎ合わせろ!」 言われ転輪聖王が前へ出た そして炎帝が切り裂いた時空を目的の地と繋ぎ合わせ呪文を唱えた すると目の前に… 涅槃の地…聖地クシナガラが現れた 「来てやったぜ!天津!」 と、炎帝は天津へ吐き捨てた 男達は…宇迦御魂の元へと駆けていった 一瞬にして時空を繋げ 目的の地まで出向いてくる その計り知れぬ力に… 宇迦御魂の側の人間は…息を飲んだ 宇迦御魂は前へと歩き出し炎帝の側まで行くと 立ち止まり深々と頭を下げた 「炎帝様、初めまして」 素戔男 の息子でありながら…炎帝と逢うのは初めてだった 「宇迦御、てめぇが生まれた日オレは見に行ってるからな、オレは初めましてじゃねぇぜ!」 「え…」 「子供のおめぇとお菓子を取り合って負けたのはオレだしな!」 「あれは…貴方でしたか…」 懐かしい子供の頃の記憶が甦る 1つ残ったお菓子を取り合って…負かして泣かした…あの日の事は…今も記憶に懐かしい だが…誰だったのかは解らない 今は…現実だったのか夢だったのか… 解らぬあやふやな記憶として処理していた 「宇迦御!話し合いとやらをしようぜ!」 炎帝が言うと… 激しい雷雨が轟き…一瞬にして豪雨となった 雨に打たれ炎帝は嗤う 炎帝は手に正義の槍を握ると、頭上に掲げ 振り回した ピキッ… ピキッ… と、空気が凍る 雨は一瞬にして… 雪へと変わった 炎帝はふぅーと息を吐き出すと… 雪は吹雪へと変わり…目の前が真っ白になった 「雨も風も雪も…オレには驚異じゃねぇぜ! 炎帝だからよぉ、雨に弱ぇーとか…短絡的過ぎだろが!」 寒さで…震える…宇迦御魂の仲間達を尻目に 炎帝達は…平気な顔で立っていた 朱雀が「こうも前が見えねぇと不都合で仕方ねぇ!」と吹雪の中飛び立つ 炎の鱗粉を撒き散らし朱雀が舞い飛ぶ すると吹雪が弱まり、小雪がちらつく程となった 「宇迦御魂!それでもこの地で話し合いが必要か? お前…父親に打たれてぇーのか?」 炎帝は宇迦御魂に問い質した 宇迦御魂が父 素戔男 尊の手には… 闘志の槍が握られていた 天魔戦争で戦い抜いた槍が…握られていた それだけで…父の覚悟を…計り知る 「父上…」 親不孝な子供だと… 罵ってくれて良い この命を懸けて… 我は…魔界の貧富の差を…なくしたいのだ 貧しき者が踏みにじられ…のたれ死んで逝く 富と名を持つ者ばかりが…肥えて行く この魔界は…狂っている 正さねば…貧しき者達は浮かばれない 立ち上がり…半旗を翻した 覚悟の上だ… 死する覚悟など…とうにで来ている だが…我が父を目にすれば… 親不孝している…自覚はある 苦しめている… 老いた父を見れば…胸が痛む 「宇迦御魂!我が息子! 我はお前を討ちに参った!!」 素戔男 尊の声が響き渡る 素戔男 は我が子を討ちに来たと… 声高らかに宣言したのだ 宇迦御魂が…息を飲む 「宇迦御魂様、我等の改革を忘れられては困ります!」 天津が宇迦御魂をたしなめた 八咫烏が… 「宇迦御魂様!我等は貴族と平民との垣根を取っ払う為に動いてる!お忘れか! そんな貴族の言葉など今更聞く必要などない!」 討って出ろ!と唆す 回りの輩も、そうだ!改革を忘れるな! と、騒ぎ出した 炎帝は悠然とした足取りで宇迦御魂の方へと歩いて行く 天津は「止まりなさい!」と炎帝に指図した 「あんでだよ?オレは宇迦御魂と話をしている? 違うのかよ?」 「話し合いなど今更!」 天津は言い捨てた 腰まである長い髪を…揺らし 天津と呼ばれた神が炎帝へと近付く 「話し合いなど今更だと言うなら、何の為に呼んだんだよ?」 「それは貴殿方!貴族と呼ばれる者を討つため! それ以外我等の目的などない!」 天津は炎帝に斬りかかって来た 手に隠し持っていた刃で…炎帝を斬り着ける 炎帝は、斬り付けられると解っていて 微動だとしなかった 妖炎を立ち上らせ天津を迎え撃つ 炎帝に刃を向けた天津は… 炎帝の焔に焼かれ…倒れた 「バカな奴め…」 「天津!!!」 宇迦御魂の声が響き渡った 炎帝は冷たい瞳をして宇迦御魂を一瞥しただけで…皮肉に嗤った 天津は…燃え上がり…昇華され消えた 目の前で…仲間が消えた… これで二人目 八咫烏は「化け物!!」と罵った 「我は神々が創りし傀儡! 誰も叶いはしねぇぜ! なんなら束になって掛かって来いよ!」 炎帝は指でコイコイと合図した 「貴族制度など…取り壊す! オレは知らねぇかんな! んな腐った制度…取り壊すに決まってる!」 炎帝は吠えた 「炎帝…」 宇迦御魂が…炎帝の側へとやって来た 「負けに御座います!」 武器を捨てて…宇迦御魂は降伏したのだ 「何故?」 炎帝は…その戦いは自分が仕掛けたのに… 何故降参するんだよ? と、尋ねた 「これ以上…仲間を失う訳にはいきません…」 「オレなら全員死のうとも辞めねぇぜ! それが共に討たれた奴への弔いじゃねぇのかよ!」 「炎帝…」 叶わない この人には…叶わない 宇迦御魂は痛感させられた 八咫烏が炎帝へと飛び掛かる 八咫烏の嘴が…炎帝の頬を切り裂き… 「我等は負けぬ!」 宣戦布告をした 愛する炎帝を傷つけられ… 青龍の顔付きが変わる 蒼い妖炎を撒き散らし怒りを露にする 「炎帝…怪我を…」 頬の傷に触れると…炎帝の血で染まった 「己!許しはせん!」 青龍が怒る その前に、転輪聖王が飛び出した 朱雀や赤龍も飛び出し 八咫烏を捕らえ首を締め上げていた 転輪聖王は今にもその首をへし折ろうと嗤っていた 「殺されたいか?」 転生など出来ぬ…闇に葬りさってやろうか? と、転輪聖王は嗤う その横に…同じ様な瞳をした輩が… 赤龍、黒龍、地龍…朱雀、白虎、玄武が待ち構えていた 宇迦御魂は…慌てて転輪聖王の前に飛び出した 「離してやって…くれませんか?」 宇迦御魂が、必死に転輪聖王に頼んだ 「嫌だ!」 転輪聖王が言うと 「万死に値する!」と朱雀が放った 怒りに…聞く耳を持たぬ輩が…八咫烏を今にも八つ裂きにしそうだった 「離してやれよ!」 炎帝が言うと 「嫌です!貴方を傷付けた!」 転輪聖王が叫んだ 炎帝は八咫烏の嘴を掴むと 「こいつはよぉ! んとに!お仕置きだな!」 と、嘴を掴んで振り回した 「おい!カラス!」 プルプルと八咫烏が首をふる 「昔のオレならいざ知らず 今のオレは力をコントロール出来るんだよ!」 え????八咫烏には訳が解らなかった 「だからよぉ!死んじゃあいねぇって事だよ!」 と、炎帝は叫んだ! 「………死んでない?」 意味が解らず…呟いた 炎帝は天を仰ぐと 「銘!その湖に、昇華した奴は行ってるのかよ?」 と、叫んだ 『 おー!来てるぞー! 根性が曲がってるからな粛正しといたぜ!』 と、声が響き渡った 「死んじゃいねぇよ! お前も…昇華してやろうか?」 八咫烏は嘴を掴まれ…プルプル首をふった 「よくもオレの美しい顔に傷つけたな!」 う~ん… 八咫烏が考え込むから…炎帝に蹴りあげられたのは… 言うまでもない 「おい!カラス!」 「何でしょうか?炎帝様…」 「宇迦御魂を影で動かしてるのは誰だよ?」 「………宇迦御魂様が感銘を受けた方は 五智如来…金剛界五仏で御座います」 「五智如来…ほほう…また珍しい名前を聞いたもんだな!転輪聖王!」 話をフラれて転輪聖王は身を引き締める 「誠…珍しい…。 この様な場所で聞こうとはな!」 「おい!カラス!」 「はい。」 「場所を変えねぇか? 湖の奴等もよぉ戻して一度話を整頓してみようぜ!」 「はい。出来ましたら一度整頓させて下さい! 宇迦御魂様 そうしましょう!」 八咫烏に言われ、宇迦御魂は頷いた 「もぉ…何が何だか…混乱しております」 宇迦御魂は…自分の足元を掬われ… 信じたモノは何だったのだ…と 心に浮かぶ疑問に…揺れていた 「兄者!時空を繋いでくれ!」 炎帝に言われ、閻魔の邸宅と時空を繋いだ 目の前に閻魔の邸宅が現れ、炎帝は元の場所に戻った ドカドカと閻魔の邸宅に入って行く 応接間に行くとソファーにドサッと座った 青龍が炎帝の頬に触れ… 舐めた 「こんな傷作られて…」 ペロペロと青龍が炎帝の頬を舐めた 血で濡れた場所を青龍が舐めて綺麗にする 転輪聖王が炎帝の側に行くと 「わざと…抉られたでしょ?」と問い質した 何も言わず嗤う炎帝を尻目に、転輪聖王は炎帝の頬の傷を治癒した 手を翳し傷を治癒して行く 暫くすれば炎帝の頬には傷1つない顔になった 「皆、座れよ! カラス、皆に茶を出せよ!」 カラス…八咫烏は「解りました!」と閻魔にお茶は何処に有りますか?聞いた 「食堂に行けば誰かおる その者にお茶出せと言えば運んでくる」 「………食堂は…どちらに?」 「黒龍、案内してやれよ!」 炎帝に言われ黒龍は立ち上がると 「カラスついて参れ!」と声を掛けた 大人しく黒龍に頭を下げ八咫烏は着いていった 「座れよ!宇迦御魂! んで、他のも座って待ってろよ! そしたら湖に飛ばした輩も来るからよぉ!」 宇迦御魂は言われて、ソファーに座った 暫くして八咫烏が黒龍に手伝ってもらって お茶を淹れて来た 礼儀正しく八咫烏が給仕をする それを炎帝は黙って見ていた 湖に飛ばされた輩も閻魔の邸宅に連れて来られた 銘は閻魔の邸宅にやって来て 「炎帝、我が叔父よ! お主の頼みは聞いてやったぜ!」 と、すっかりお灸を据えられた天津と仲間が銘に首根っこ持たれて、応接間に下ろされた 「悪かったな銘」 「炎帝、貴方の頼みなら何が何でも聞いてやる! それが我が父を助け…魔界を助ける 我が辛い時…貴方は我に手を差し出してくれた 魔界の…勢力に巻き込まれ…父を討ったやも知れぬ茶番から…助けてくれた 我は…誰にも踊らされる事なくいられるのは貴方のお陰 その恩に報いたいと想うだけだ」 炎帝は手を伸ばした 銘は…炎帝の手の届く所まで来ると立ち止まった 「銘…」 炎帝の指が…銘の頬を撫でる 「お前が楽に息が出来笑ってられたら… オレは…良かったと思えるかんな! 笑ってろ!可愛い顔で何時も笑ってろ!」 「おう!私は可愛いからな笑えば更に可愛くなる! 炎帝の言葉通り、私は何時も笑ってられる…」 「よしよし」 自分より子供みたいな顔をして 炎帝が銘を撫でる その指に…縋り着きたくなる 愛してるから… 銘はその指を振り切る様に立ち上がった 「ならな炎帝! 用事は終わった! 我がいる場所は…湖の地域なり!」 「帰りに寄るな 夏海に逢いに行くからよぉ!」 「ええ。貴方ならそう言うと思ってましたよ」 「夏海は元気かよ?」 全く別の世界に…来たのだ 右も左も知らぬ…世界に来たのだ 「ええ。大きなお腹を抱えて、毎日元気に動き回ってます」 「そうか。帰りに寄ると言っておいてくれ!」 「解りました。では。」 銘は…スッと姿を消した 炎帝は消えた後を…黙って見つめていた 「さてと、整頓するとするか! 叔父貴、見届けてくれ!」 炎帝に言われ素戔男 尊は頷いた 「天津!頭は冷えたかよ?」 炎帝の焔に触れ…気が付いたら…湖の中で溺れそうになった そこを…女神が助け出してくれ… 延々と説教された 逆らえば…蹴り飛ばされて… チャイナドレスから…垣間見れるスラッと伸びた…脚に見とれて…ノックアウトを食らった 美しい…それは美しい女神が目の前にいた なのに美しい女神は… ケッ!と毒づき…蹴り飛ばした その綺麗なおみ足を惜し気もなく伸ばし… パンツが見えるのも気にせず…蹴り飛ばした あまりのギャップに天津は…茫然自失となった そして冷静になった頭に… 女神は…闘う意味を問い質した 「お主は…間違った師を仰ぎ…命を落とすのか…」と残念がられた 「命を懸けて共に在ろうと言う奴は、まずは自分の命を投げ出して先に逝くモノだ!」 女神は天津の瞳を射抜き、言葉にした そうして根本的な考えから叩き直され… 此処へと連れて来られたのだ 天津は炎帝に 「頭でしたら十分に冷えて御座います」 と苦笑した 「んならよぉ天津! おめぇの目には、今の現状はどう映ってんだよ?」 と、問い質された 「踊らされてましたか? 炎帝様は貴族制度なるものをご存じないと仰有った なれば…何時、どんな目的で、その制度が出来たのか…整頓すべきだと想います そしてなにより! 貧富の差は出ているのが現実に御座います 魔界なのに…人間界と同じ… 富と血筋に守られてのさばるのは…違うと…想います」 「貴族制度はオレが魔界にいた頃にはなかっぜ! 何時出来たのかは…オレは人の世に落とされたからな…知らねぇんだよ!」 炎帝が言うと、八咫烏が前に出て 「炎帝様、貴族制度なるものが出来たのは… 炎帝様が人の世に落とされ…300年経った頃に御座います 富と血筋を嵩に着た輩が、魔界を我が物顔で支配しようと…その制度を…立ち上げた ですが炎帝の御尊父様や古来の神々は… その制度に同意はされなかった ですから…本当に一部の…魔界の者が…勢力を伸ばしているのは確かで御座います」 意図的な何かを…感じる 炎帝は嫌な顔をした 何者かの作為的なモノを感じずにはいられなかった 「なぁ八咫烏!」 「はい。」 「オレの父者は貴族制度なるものに…同意はしなかったんだろ? 青龍が父、金龍や古来の神々は賛同しなかったんだろ? なのに何故、父者と他の古来の神々は襲われたんだ?」 「……!!!」 八咫烏は息を飲んだ 天津はそっぽを向いた 宇迦御魂が腹を括って、炎帝に話をした 「古来の神々は邪魔だと言われたのです 古来の神々が貴族制度を見逃してるから… 貴族制度を唱えている輩が…勢力を伸ばして来ている 此処で古来の神々を襲い、軌道修正せねば… 誰も目を醒ましはしない! ………と言う言葉に賛同致しました。」 宇迦御魂は浮かび上がる…矛盾に…混乱していた 宇迦御魂を取り巻く仲間も… 今の現状を知れば…矛盾が目につく そして…何の為に反旗を翻したのか… 見えなくなってきていた 「宇迦御魂!」 「はい。」 「お前さ、反旗を翻す前にさ 親父と話をすれば良かったんじゃねぇのかよ? お前の親父は話をするに値しねぇ男なのか? 違うだろ?親父を避けて…お前は何がしたかったんだよ?」 「俺は…貧富の差をなくしたかった… 金や富を嵩に着た奴が…貧しい…階級の低い女の子を無理矢理…犯してゴミの様に捨てた なのに…そいつは…罰せられるどころか…のうのうと生きてる! 貴族だから許されるのか? そんなバカな貴族制度など!! 要らぬではないか! そうして蹂躙され…命を落として行った子が…何人いると想いますか? 魔界は腐っている… その魔界を支えて今も絶対の地位を持っている…父になど…話もしたくはなかった」 宇迦御魂が苦しい胸のうちを語る 宇迦御魂は身分の低い者の声を拾い上げ…聞いていた と、言った 身分の低い者が…目の前で蹂躙されて死んで行けば… 信じていたモノが根底から崩れ去るだろう 炎帝は納得した 「宇迦御魂、お前が貴族制度を壊し、改革と言う反旗を翻したのか切っ掛けを聞かせろ!」 「五智如来様の、金剛界五仏を知りました」 「五つの知恵…法界体性智、大円鏡智、平等 性智、妙観察智、成所作智を5体の如来にあてはめ たものだったよな? 金剛界五仏…かぁ… 弥勒、厄介な奴の名前を聞こうとはな…」 「ええ。平等性智…の平等を詠われたのですかね?」 「だろ?」 「感銘を受けた? サブリミナル…された? どちらでしょうか?」 「さぁな…釘は…刺しといた方が良いかもな!」 炎帝はそう言い、閻魔を見た 「兄者」 閻魔は弟に向き直り覚悟を決める 「何ですか?」 「魔界大集会を開け! その貴族を謳ってる奴等も 古来の神々達も! 一般の階級の魔族も一斉に集めてな 集会を開くんだよ!」 「今日…直ぐには…無理ですよ?」 「おう!それが終わるまでは魔界にいるかんな! 青龍の家にも行かねばならねぇし 夏海にも逢いに行きてぇしな 2、3日は魔界に滞在する 青龍の湖の前の家にも行きてぇしな…」 炎帝は…懐かしそうに瞳を眇め…閻魔を見た 「解りました。 貴方は金龍の所や行きたい所へお行きなさい その間、魔界大集会を開く準備は私がして行きます!」 「悪いな兄者」 「いいえ。貴方を全面に…出さねばならないのでしょ?」 「オレは魔界の絶対的な存在になる! それが…オレが存在する意味だ! そうならねぇなら…オレは魔界へは還れはしねぇ…」 「君は…私の大切な弟だ! それに代わりなどない! 愛してますよ…我が弟、炎帝よ!」 閻魔は無償の愛を弟へ向けた この兄の愛情や… 父と母の愛情がなくば… 総ての記憶を秘めて生まれし存在を呪っただろう 青龍と言う伴侶を得ねば… 壊れて…自分を…壊しただろう だが今は違う! 自分の存在の意味を知っている その意味の為に自分は在ると解っている ならば…絶対のモノにはらねばならぬ 「兄者、魔界大集会に出ぬ者は、魔界を追放すると言え! 魔界の決め事に参加出来ぬ者など魔界には要らぬ! この炎帝が昇華してくれよう!と、必ずや一文に書くが良い!」 「承知しました。」 「弥勒。」 話は終わったと…炎帝は転輪聖王へと話をふった 「はい。」 「五智如来の所まで散歩に行かねぇか?」 「良いですね。この者達全員引き連れて散歩に出ましようか!」 「おう!兄者、誰を置いておいて欲しいよ?」 「朱雀と白虎、玄武と黒龍 あ…器用な地龍も!」 「と、言う事で、お留守番だ!お前達!」 炎帝が言うと朱雀は、え~と不満を漏らした 「朱雀、お前…五智に逢えたっけ?」 聞かれ…朱雀は嫌な顔をした 「遠慮しときます… 五智は基本的な考えから違いますので お逢いしない方が懸命。」 朱雀は…炎帝に頭を下げ…閻魔の方へと向かった 「ならな!兄者! 雅龍、着いて来い! それが終わったら夏海に逢いに行くかんな」 「はい。何処までもお供致します! 我ら夫婦がこの魔界で何の弊害もなく生きていられるのも…貴方のお陰ですから…」 「あに言ってんだよ! オレの力なんぞなくても生きて行けるじゃねぇかよ!」 炎帝はガハハッと笑い飛ばし、話を打ち切った 「ほら来いよ!宇迦御魂とその仲間達よぉ!」 その仲間達……と言われ…苦笑して天津や八咫烏やその仲間達は立ち上がった 炎帝の横に夏生がスッと立つ 穏やかな容姿とは裏腹に…その内に秘めた力に…皆は息を飲む 「では行くとしますか?」 転輪聖王が炎帝に問いかける 「おう!行くとするか!」 炎帝は首をコキコキ動かし、閻魔に背を向けた そして無言で部屋を出て行く その後に皆が続き、出て行った 外に出て転輪聖王が 「五智如来…どの如来に行くのだ? 五人揃って同じ場所にはおらぬであろう?」 と、炎帝に問い掛けた 炎帝は絵空事を言うかの様に 大日 法界体性智 阿閦 大円鏡智 宝生 平等性智 阿弥陀 妙観察智 不空成就 成所作智 「どれに行くよ?」と問い質した 「考えてはおらぬのか?」 「オレの頭がな…考えるのを拒否ってる…」 転輪聖王は肩を竦めると 「なら阿弥陀へ行くとするか!」 と、阿弥陀如来の家へと向かって歩を進めた 「炎帝…」 「あんだよ?」 「お主…五智如来とは面識は?」 「魔界の大法廷で逢ったぜ! 人に落とすのは生ぬるい! 転生すら出来ぬ様に…抹殺しろと…閻魔に迫った オレはそれを法廷の場で見てたんだ」 「五智…全部が?」 「全員魔界に炎帝など不要!と唱えたな」 「………なら…行くのは…よすか?」 「弥勒、寝言は寝ていえ!」 炎帝は笑い飛ばして、さっさと歩いて行く 転輪聖王はその後を追い掛けた 「魔界に…魔物など…存在させる必要なし!」 前を行く…炎帝が言い放った 「え…?」 「神が創りし傀儡を…一番嫌っていたのは… 五智如来だな…アイツ等は…モノとしかオレを見なかったぜ!」 その場にいたなら… 八つ裂きにしていただろう… 弥勒は悔しそうに…唇を噛み締めた 魔界法廷は関係者と…法曹を司る要職しか出られぬ 青龍であっても、その場には出られぬ… 制度があった 「弥勒!」 弥勒は何も言わず…炎帝を見た 「唇を噛むな…傷になる」 「悔しい…」 「言うな!終わった事だ」 「………許せぬ想いは…終わりはせぬわ」 「その頃のオレは…中身はスカスカだ… 傀儡と言われても…笑い飛ばせなかった…」 中身の何もない…人形 人形でいる事さえ… 疲れていた 炎帝は姿勢を正して深呼吸した 「炎帝…」 弥勒は‥‥名を呼ぶしか出来なかった 「サクサク行くぜ!」 炎帝はそう言い、人懐こい顔で笑った 「そうですね!サクサク行きましょう! 時空を繋げます! 阿弥陀如来の所へ行けるようにね!」 転輪聖王も悪戯っ子みたいに笑うと 両手を広げ呪文を唱えた 夏生がサポートに入り時空を繋げる 時空を繋げ終わると転輪聖王は夏生を見た 「スワン、感謝するぞ」 「いいえ。お役に立つ為に僕はいますので!」 フッと笑う 夏生の笑う顔など見た事もない 弥勒は驚いた顔をして 笑顔で返した 「炎帝、足を踏み出せば阿弥陀如来の邸宅で御座います」 「そうか。なら行くとするか!」 「ええ。何処までもお供致します!」 転輪聖王は炎帝に深々と頭を下げた 「弥勒、行くぜ!」 炎帝は笑って… 一歩を踏み出した 踏み込んだ先は緑豊かな空間だった 日本庭園…さながらの庭が一望出来た 静かな… 無音の世界 「此処が阿弥陀如来の家か?」 「ええ。そうです。」 転輪聖王はスタスタと歩いて行き 案内する その後を着いて行く 中庭を突っ切り…庭に面した…部屋に立つ男が…転輪聖王を見ていた 「また…変わった所からおみえだな」 男が笑う そこには背の高い宝飾類は一切身に付けぬ 元王族の身分だと言うのに… 質素な服を身に付け気取らぬ雰囲気の男が… 縁側に立っていた 「幾久しいな転輪聖王… ………あぁ…そちらのお方は… 炎帝…貴方に御座いますか…」 炎帝の存在に…驚いて… それでいて確かめるように…見ていた 炎帝は唇の端を皮肉に吊り上げ不敵に嗤った 「阿弥陀如来…先の魔界法廷の時以来だな!」 「ええ。…………ええ。炎帝… あの裁判の…時以来で御座いますね」 阿弥陀は炎帝を見詰める 「どうぞ!むさ苦しい…所では御座いますが そちらから御上がり下さい!」 阿弥陀はそう言うと、縁側から上がってくれと言い 皆を迎え入れた 縁側を上がって直ぐの部屋が応接室だった 和室に…茶舞台と言う質素な…家の中に皆を迎え入れ 阿弥陀は人数を確認すると、お茶を淹れに行った ゾロゾロと阿弥陀の応接室に入り座らせてもらう ………入り切らない者は縁側に座らせてもらった 阿弥陀がお茶を淹れて戻って来ると、一人一人にお茶を差し出し、全員に配ると空いてる席に正座した 「ご用件を伺っても良いかな?」 阿弥陀は突然現れた…者達の繋がりが…見えては来なかった そして……何より… 人の世に落とした…炎帝が…何故? 魔界にいるのか? 閻魔が許した?? 話が全く見てえ来なかった 阿弥陀は炎帝を見る 先の魔界法廷の場で… まじまじと炎帝を見た その時の…炎帝は空っぽだった 何も詰まってはいなかった 危うい狂気を孕み… 破壊神と成り果て…暴走を続けた 阿弥陀は何故…こんなにも…空っぽなのか…と恐れを抱いた 何もない 大切なものも… 感情も 炎帝からは…何も詠めれはしなかった 炎帝は阿弥陀にじーっと見られて…苦笑した 「んなに、見るんじゃねぇよ!」 思わず言うのは… 仕方がない それ程に…阿弥陀は炎帝を見ていた 「失礼を!」 まぢまぢと…見るなど失礼な事をした…と、阿弥陀は炎帝に詫びを入れた 「変わられましたね…炎帝。」 炎帝は何も言わず…阿弥陀を見て笑った 「今の貴方の顔を…見れて良かった…」 「あの頃のオレは何も詰まってなかったかんな」 阿弥陀は驚愕の瞳を炎帝に向けた 嗚呼…この人は、わざと裁かれたのですね 「私達を…お怨みか?」 はん!と炎帝は一笑した 「怨む時間もねぇ位に…オレは…愛されたんだ! 青龍の愛の前に、怨みも尽きてる オレは人の世に落とされて良かったと思ってるぜ それもな青龍がいればこそ!…だ。 青龍がいなくば…総てを破壊していたかも知れねぇぜ!」 炎帝は青龍の手を握り… 総ては過ぎた事だと切り捨てた 「痛みも哀しみも…辛さも苦しみも 全部乗り越えられたのは…青龍がいたなればこそ! 愛して人の世に堕ちてくれた…愛する男がいればこそ オレは中身を詰められたんだ!」 度量を増し 器をデカくした炎帝がいた 明らかに…当時より強靭になり 力を増した もう叶うモノなど…皆無であろうて 漲る力がメラメラと音を立てて燃え上がる 「さて、お話を伺いましよう!」 阿弥陀はそう言い姿勢を正した 「貴族制度なんてもんが…この魔界に立ち上がり…のさばってんだとか?」 「ええ。一部の権力者がのさばっているのは確かですね」 「一部の権力者に腹を立てた輩が… 何を間違ったか…古来の神々を…襲撃したんだってな!知ってるかよ?」 「ええ。今魔界はその噂で持ちきりですからね。」 「何でもそいつ等は五智如来に感銘を受けて 古来の神々の襲撃に出たんだそうだぜ?」 「え?………五智如来???」 思い当たる節が…ないのか… 阿弥陀は驚愕の表情をした 「おう!五智如来、金剛界五仏の唱えに感銘したんだと!」 「私…ですか?」 「さぁな。それは宇迦御魂に聞いてみると良い。」 「宇迦…素戔男 のご子息ですか」 「おう!そこに親子でいるぜ!」 言われ、見てみると確かに親子で正座していた 阿弥陀は宇迦御魂と素戔男 に向き直った 「宇迦御殿、初めまして 素戔男 殿、ご無沙汰ばかりで申し訳ない」 言われ素戔男 が、いやいや…と阿弥陀に頭を下げた 「阿弥陀殿!此方こそ平安の世に胡座をかいて…ボケておったみたいでござる 本当に申し訳ない!」 と、逆に謝罪を入れた 「私に解る様に説明をお願い致す!」 阿弥陀に言われ、宇迦御魂は話し始めた 反旗を翻す迄の経緯と、五智如来の教えに感銘を受けた者が集まり、魔界の行く末に不安を抱いた事を 克明に阿弥陀に話して聞かせた 「平等性智 全ての存在には絶対 の価値があるということを示す。 ………それは宝生が性智ですが?」 何故?私の所へ?? 阿弥陀は疑問符を炎帝へと投げ掛けた 「強いては五智如来の教えだぜ! 五体揃っての如来じゃねぇのかよ?」 言われれば… そうではあるが… 腑に落ちない 宝生の所へ行けば済む話ではないのか? 「阿弥陀!」 「はい。」 「何故、おめぇの所へ来たか疑問か?」 炎帝に言われ…阿弥陀は 「ええ。疑問に御座います」と、答えた 「宝生の所へ行って、お前の教えは人を暴走させ反旗を翻す輩を産んだぞ! 総てはお前が唱えた性智の所為だぜ! 現に反乱者がいんだせ!ほらよ! と、連れて行って根底から間違ってると言われてぇか?阿弥陀よぉ!」 阿弥陀はハッと息を飲んだ 「それは嫌に御座います…」 「だろ?この事件の一片はお前の耳に入れる そして終結させる! 反旗を翻した輩は、近くに開かれる魔界大集会の場で裁くとすんよ! 公衆の面前でよぉ!裁いてやんよ!」 あの時の…オレの様に… 裁いてやんよ! と、炎帝が嗤う 「魔界大集会?」 訝り…阿弥陀が問いかける 「おう!魔界大集会!やんぜ! 出ねぇ奴は魔界から追放してやんよ! この集会は絶対のモノになる! 邪魔立てはさせねぇ! もぉ兄者が準備に余念がないだろう! オレはその場で総てを晒してやるかんな! 白日の元に晒し周知に思い知らせてやる!」 唇の端を皮肉に吊り上げ嗤う 炎帝の本意が見えてこない… 「我等もその大会議に参加せよ…と?」 「出たくねぇならな、出なくて良いぜ! その代わりオレが昇華してやんよ! 閻魔大魔王の発令に賛同出来ぬ輩など魔界には要らぬ! 天界にでも行けば良い!」 炎帝が言うと夏生が 「天界も、その様な輩は要らぬと申すだろう!」と、言い放った 阿弥陀は夏生を見た 聖なる妖炎を撒き散らし…ただ者には見えなかった この様な…聖なる妖炎を身に纏う者は… 一人しか思い付きはせぬ 「堕天使…ルシファー?」 想わず…溢れ出た言葉に… 夏生は一笑した 「その様な者など今は存在すらせぬ!」 と、言い放ち 「我は炎帝のスワン! それ以外にならぬモノで良い!」 「失礼を致しました!」 阿弥陀は深々と頭を下げ 「存在してはならぬ…お方ですね」 「あぁ…そうか。お前は天魔戦争を知ってたな…」 と、炎帝が呟いた 「ええ。……先陣を切ったは今は亡きルシファー様でした。」 たった一人の…魔の地に堕ちた天使が… 天界に喧嘩を売った まだ天界と魔界は繋がっていた頃の話だ 「阿弥陀、昔話が聞きてぇか?」 「はい。お聞かせ戴けるのでしたら…」 「聞いたら直ぐに忘れろよ! 口に出したらオレが…消しに行くからな!」 「解っております。 私は昔話を少し聞くだけ その昔話など、話しても誰も信じる者などおりましません!」 「昔、崑崙山に我が父建御雷神に連れて行かれた時にな 八仙から欠片を貰ったのよ! 一万年光を放つこの欠片を使いこなせるのはお主のみ…とか言われてな哀しき魂を解放してやってくれと言われた オレは欠片を持ったけどよぉ、使い道がなかった そんな時に…青龍の家の前の湖で白鳥が死にかけていた オレはその白鳥の中へ欠片を入れた すると白鳥はみるみるうちに…生気を取り戻し、生き返った それが、そのスワンの総てだ! オレはスワンを使う気はねぇんだよ! スワンはオレの側で…人生を全うさせる オレが死する時、スワンも役目を終える オレは欠片を手離さねぇ! オレと一緒に冥土に旅に出る だからよぉ、忘れろ!」 「はい。忘れます! で、私はどうしたは良いのでしようか?」 「このままじゃ宇迦御魂達が浮かばれねぇ サブリミナル…だと思うぜ それを解明して魔界大集会に間に合わせて欲しい!」 「誰か…が、我等の性智を悪用したと?」 「だと思うぜ! 宇迦御魂は庶民想いの良い神みたいだからよぉ!」 「解りました! 本眼は私の本意! この眼で本意を炙り出し貴方にお伝え致します!」 「頼めるか?」 「はい。必ずや!」 「魔界大集会は明後日にはやるぜ! それまでに頼むな!」 「はい。それまでに!必ず!」 それを聞き、炎帝は立ち上がった 「宇迦御魂、素戔男 、んで仲間達! 阿弥陀に総てを話して、根底に入ってもらえ 大丈夫だ!阿弥陀は極楽浄土を見せるだけだからよぉ! なら、頼むな!」 炎帝は背を向け歩き出した 青龍がスッと側に行き、転輪聖王が後に着く 赤龍や雅龍も後に続いた 外に出て、炎帝は転輪聖王に 「この後、どうするよ?」と問い掛けた 「この者を連れて閻魔の邸宅に向かう そして閻魔の手伝いをする」 「ならオレは雅龍と夏海に逢いに行き その後、青龍の家族に挨拶に行き、青龍の家で…泊まる事にする」 「あぁ。嫁との立場を確立して参れ!」 「嫁…かよ?」 炎帝は少しだけ嫌な顔をした 「嫁であろうて! 婿殿ご両親に気に入られて参れ 結婚式には我も出席する算段じゃ!」 「結婚式??」 「魔界一の結婚式を挙げる予定である 閻魔よりも盛大にな、挙げると建御雷神がスキップして金龍と盛り上がっておった その時…俺は一緒におったからな盛り上げておいてやったぞ!」 「弥勒…」 「嬉しかろう! 人の世を終えたら青龍の妻になる 誰もが認める存在になる! 我等がそうさせる!絶対にじゃ!」 転輪聖王の覚悟が読み取れる 誰もが認める存在 炎帝と言う魔界の絶対的な存在になる 「お主は…何も心配しなくて良い 逝くなら…共に…それは今も昔も変わってはおらぬ」 「だからよぉ!逝くのは早えーんだよ! まだ改革も出来ちゃいねぇ その前に人の世を全うしてもいねぇぜ!」 炎帝が笑う 「年よりは気が早くてな!」 転輪聖王はしれっと答えた 「ならな!また後でな!」 炎帝はそう言い転輪聖王に背を向けた その後を青龍が寄り添い、赤龍が着いて行く 雅龍が慌てて炎帝に着いて走った 転輪聖王…嫌 弥勒は何時までも…その姿を見ていた 炎帝……康太の姿が消えても… 立ち止まり…その姿を見送った 康太… 人の世を終えたら… せめて…その時まで 嫌… その先も…共に在ってくれ…炎帝

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