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第19話 魔界編 家族④
夏海と雅龍の家を後にした炎帝は、天馬に乗る前に青龍へ向き直った
「青龍…金龍の所へ連れて行け…」
「ええ。お連れしますよ
やっと、我が両親に君を紹介出来ます」
青龍は清々しく笑った
「そして今宵は我が家にお連れしますよ」
湖の…前に建つ
青龍の家…
炎帝がずっと見続けた…
その家に…
青龍はお連れしますよ…と言う
泣きそうな顔になり、炎帝は青龍を見た
「そんな顔をしないで下さい
押し倒したくなるじゃないですか!」
「オレ…行っても良いのか…
湖の…お前の家に…行っても良いのか?」
「来てもらわねば困ります
僕の割り振られた家は彼処しかないのですからね!
龍は家を持って成人となる
そして、その家に…終世住まねばならぬ
僕の選んだ家は彼処しかないのですよ炎帝」
ずっと…
湖の向こう側から見ていた
あの家に…
青龍がいるのだな…って
見ていた
あの家に…
炎帝は…胸が一杯になった
青龍は炎帝の側に行くと、天馬に乗せさせた
「僕の奥さんとして、両親に紹介します」
「……青龍…」
「バツイチ…ですが許しなさい」
「青龍…」
炎帝の腕が青龍を掻き抱く
まさか…
この様な日が…
来ようとは想いもしなかった
「炎帝、僕の家で愛してあげます」
フカフカのベッドの上で…
青龍の湖の前の家で…
愛してあげます…と言われ
炎帝は泣き出した
炎帝として生きた歳月は…
青龍に愛されていなかったから…
躊躇する
「泣かないで…」
涙を拭う様に頬にキスを落とされる
「行きますよ?大丈夫ですか?」
「おう!大丈夫だ!」
青龍は炎帝を離すと風馬の背に乗った
そしてゆっくり駆け出した
その後を炎帝が着いて走った
赤龍と夏生も炎帝の後を着いて走った
目指すは…青龍の家
何度も遊びに行った家
四龍の兄弟とは…仲が良かった
何度も…
何度も…
遊びに行った
チラッとでも青龍が見えないか…
遊びに行った
その家に…
炎帝は行く
信じられない想いで…一杯だった
信じられない…
行って良いのか…
躊躇する心が…
炎帝の中に在った
金龍の家は…案外近かった
風馬から降りると青龍は、炎帝の側に行った
炎帝も天馬から降りると…青龍が抱き締めた
不安そうな顔をした炎帝が…堪らなく愛しい
青龍は炎帝の肩を抱くと、家へと向かう
玄関に回ると、そこには銀龍が庭木の手入れをしていた
青龍の存在に気が付き…銀龍の手が止まる
「青龍…」
人の世に…堕ちた息子が立っていた
魔界にいた頃も…親とは一線を引き…距離を取って来た青龍が…
立っていた
「ご無沙汰しております…母さん」
青龍は銀龍に向かって、深々と頭を下げた
炎帝も慌てて頭を下げた
赤龍がやって来て
「部屋に入れて欲しいのですが母さん
今日は青龍が妻を紹介してくれると言うので
連れてきているのですからね」
と、母に炎帝の存在を知らせた
銀龍は青龍の手の中にいる炎帝に目を向けた
「炎ちゃん…いらっしゃい」
銀龍は炎帝にニッコリ微笑んだ
四龍の兄弟の家に来るたび、銀龍は優しく接してくれた
まるで我が子の様に、炎ちゃんと呼んで迎え入れてくれた
「銀龍…」
炎帝が困った顔を…青龍に向けた
青龍は「まずは家に上がりますか」と炎帝の肩を抱き締めたまま、家の中へと入って行く
応接間へとズンズン向かって行く
応接間のドアを開け、入ると…
そこには役目を終えた黒龍と地龍もソファーに座って待っていた
その向かい側に…金色の鬣を靡かせた金龍が座っていた
四龍の家族が揃って…
永らくの旅に出た息子を待っていた
青龍は炎帝をソファーに座らせると、自分もその横に座った
「炎ちゃん、いらっしゃい!」
金龍も炎帝に何時もの様な優しい言葉を掛けた
銀龍がお茶とケーキを運んで、テーブルの上に奥と、金龍の横に座った
赤龍は黒龍の横に座り、夏生は地龍の横に座らされた
青龍は「父さん、母さん、兄さん達、地龍、久方ぶりで御座います」と深々と頭を下げた
そして頭を上げると、それは嬉しそうに笑い
「今日は僕の奥さんを紹介しようと連れて参りました!」
と、少し照れて炎帝を紹介する
「僕の奥さんの炎帝です!」
凄く幸せそうに青龍が炎帝を紹介する
金龍と銀龍は……
唖然となった
無表情で…笑いもしなかった息子が…
今 金龍と銀龍の前で…
幸せそうに笑っていたのだから
この子に…
感情も表情もあったの!!!
驚愕だった
炎帝は困った顔をしていた
…………反対されるに決まってる
その想いが強かった
炎帝は魔界一の鼻摘み者だったから…
四龍の兄弟や…両親は…
そんな炎帝に優しかった
何時も何時も…優しく迎え入れてくれた
炎ちゃん…
そう呼んで…優しく無償の愛をくれた
銀龍は「炎ちゃん…そんな泣きそうな顔しないの…」と炎帝に話し掛けた
金龍も「そうだぞ!炎ちゃん!そんな泣きそうな顔をしなくても大丈夫だ!
青龍の嫁にしてくれ…と、建御雷神に正式に申し入れされて、我等家族は喜んでその申し入れをお受けした
その前に黒龍から青龍は炎帝を妻にする!と聞いておったからな」
と言い、金龍はガハハと笑った
根回しは完璧
誰も否など申さぬ様に根回しは完璧にしたつもりだ
まぁ…否を唱えたって、どうでも良い
言ったのだから、文句は言うな!
と、撥ね付ければ良いだけだ!
案外セコいごり押しをしようとする息子に…
両親は苦笑した
だがそれ程までに…炎帝を愛す…
青龍の変わりように…両親は絶対に守ってやる!
と、燃えた
青龍の結婚は失敗だった
嫁は…新婚旅行から還るなり‥青龍と別居をした
やはり…結婚はダメだったか…
妻を愛さぬ男など…見捨てられて当たり前
我が息子の向く末が…不安だった
それが炎帝を妻に迎える…と黒龍から聞かされた
嘘…信じられない気持ちで一杯だった
そして先日、建御雷神から正式に婚姻の申し出がされた
反対などする気はない
寧ろ…貰って下さい!
ありがとうございます!!
熨し着けて…あげたい程に…
だけど…心の何処かで…疑心暗鬼が拭えない
あの青龍だから
炎帝を愛す…
信じられなかった
「そんな不安な顔しないで下さい」
青龍はそう言い炎帝の顎を持ち上げた
「青龍…」
青龍は炎帝の唇に…自分の唇を押しあて
チュッとキスを落とした
「愛してます炎帝!
君しか愛せません!
君しか要りません!
誰が何と言おうと!
僕は君と結婚します!
僕の妻は未来永劫君だけです!」
目の前で…
熱い台詞が飛び交う
青龍は臆面もなく炎帝に愛を囁いた
赤龍も黒龍も地龍も慣れてるのか…
平気な顔をしていた
金龍と銀龍の顔が…赤くなる
恥ずかしいわ…この子!
銀龍は内心想う
この子…こんなに一途で…暑苦しい奴だったの…
銀龍は…改めて息子を見た
金龍も…まさか…これ程…倅がメロメロに惚れて一筋だとは思わなかった
何処かで…
無機質な…ロボットみたいな息子を…
忘れられずにいた
目の前では
「幾度生まれ変わろうとも僕は君しか愛せません」
と、青龍が愛を囁く
そう言い炎帝を抱き締める
………その手付きが…何だか淫靡でいやらしい
始めないか…ハラハラする
赤龍が「おい!青龍!」と名を呼んだ
「何ですか兄さん?」
しれっと返す辺り…本当に性格が悪い
「炎帝を両親に紹介しろ!」
「だから、したじゃないですか?
紹介しましたからね、今後一切僕の事には口出しは無用です!」
やっぱりか…
案外セコいごり押しに、金龍は爆笑した
「腹が痛てぇ…青龍、お前最高だわ!」
我が息子として、此処は少しは親を頼らせねぇとな…と立ち上がり
青龍の頭を殴った
「痛い!!」
青龍が想わず声をあげた
「……炎帝、痛いです…」
殴られた場所を炎帝に見せ付け、撫でもらう
炎帝は愛する男の頭を…
それは愛しそうに…優しく撫でた
満足そうな顔になる青龍の腹黒さに…
家族は…こんな奴だったのね…
と、改めて青龍と言う男を知る
「青龍!」
金龍に呼ばれ、青龍は顔をあげた
その顔は笑みを一切払拭して、真剣な眼差しだった
「はい!」
「妻を得たか!」
「はい。我が妻は未来永劫炎帝唯一人!」
「そうか。おめでとう!」
祝辞を言われ青龍は……
「ありがとうございます」
と、素直に返事を返した
「お前が炎帝を妻にする…と、聞いた時
我等夫婦は…何処かで…信じられぬ想いで一杯だった
お前が本気で…愛する姿が想像できなかったのだ」
「ええ。父さん…それは仕方ありません!
僕は良い息子では有りませんでした
でも一族の期待に添える様に努力して
言われるがまま…結婚した…
結婚は失敗でした
初夜すらする気もおきなくて…見向きもしないでいたら…妻と言う存在は逃げて行きました
追う気も有りませんでした…何故なら…
その頃から僕は炎帝しか抱いてはいませんでした
不実なのは僕の方です
結婚していたのに…炎帝を抱き続けた
愛してる…と言う言葉もくれてやらず…
僕は…芝生の上で炎帝を貪った
炎帝は何の保証もくれぬ不実な男を許し…
最後にベッドの上で抱かれたら…愛してると言う言葉を…寝てる僕に言い人の世に堕ちるつもりでした
こんな不実な男を…炎帝は愛し…僕の愛だけ…胸に抱き…人の世に一人で堕ちるつもりだったのです
炎帝の愛に…僕は…最後の最後に気づきました
無くせば…もう生きては行けません
だから共に…人の世に堕ちました
二人なら…共に逝ける
辛い日々も…苦しい日々も…炎帝がいればこそ
乗り越えて…来れました
炎帝を無くせば…僕は1秒たりとも…生きていたくありません
炎帝が死する時…僕も逝きます」
青龍の言葉に…
金龍も銀龍も涙した
黒龍は青龍の横にいる炎帝を、さっさと横取りすると
「炎帝、今宵は飲み明かそうぞ!」と誘った
その言葉に赤龍と地龍も乗る
「おお!良いな!兄貴良い酒、起きっぱなしで人の世に堕ちたんだったわ!
それを飲もうぜ!」
青龍が黙ってないのを知ってて赤龍が言う
「良いですね!四龍の兄弟と飲むのも久し振りでしょ?」
地龍も兄の…執着を見越して言う
青龍は立ち上がると炎帝を奪回し
「今宵は僕の家で尽きぬ愛を炎帝に注ぐのでご遠慮願います!」
と言い放ち、炎帝を盗られまいと抱き締めた
所有権の発動
本当に…セコいかも…この息子…
銀龍は炎帝に
「炎ちゃん、息子と一緒に…何時までも…いてやってね」
と、言葉にした
金龍も炎帝に
「青龍の離婚は成立しておる
名実ともに青龍の妻として魔界に還っておいで下さい」
と、炎帝に頭を下げた
「金龍、銀龍…本当にすまねぇ…
おめぇの息子を…オレは貰っちまった」
金龍は「お気になさらずに!」と笑い飛ばし
「炎ちゃん、我が息子に感情と愛を与えたのは、間違いなく君ですよ
でなくば青龍は中身の何もない…堅物のまま…今の青龍を作ったのは炎ちゃんの愛だ」
金龍の言葉に…炎帝は涙ぐんだ
「炎ちゃん」
銀龍も炎帝に声を掛けた
「私は青龍の妻が貴方で良かったと想います
誰も愛せぬ何も持たない息子が…こんなにも変わって私達の前に現れた
貴方と過ごした日々が…青龍を変えたのですね
本当にありがとう炎ちゃん」
銀龍にも言われ
炎帝は顔を覆った
えっ…えっ…と泣き出した炎帝の指を…青龍は外した
すると涙で濡れた炎帝の顔が…あった
青龍はその涙をペロペロ舐めた
「泣かないで…炎帝」
青龍が困って…炎帝の顔を舐める
黒龍は「お前は犬か!」と怒ってタオルを炎帝に差し出した
炎帝はタオルを受け取り顔を拭った
金龍は優しい瞳を炎帝に向け
「魔界に還られた暁には盛大な挙式を上げます
建御雷神と天照大神とはもうその話で盛り上がりっぱなしです!
魔界史上に残る挙式を挙げる手筈は整えております!」
「金龍…盛大じゃなくて良い…」
炎帝が弱音を吐くと…
「何を言いますか!青龍の妻は炎帝だと言いふらさなきゃ、横槍が入っては困ります」
「横槍……誰かが…反対するのか?」
「違います!炎帝、貴方はご自分が人気者だと自覚がないみたいですね
狙われてるんですよ!
あわよくば…とてぐすね引いてる奴がいるので、それは盛大にやらないとね、青龍が妬くではないですか!」
炎帝はくらっと来た
この親にこの息子あり…だった
「閻魔もそれは協力して下さり
天蚕の糸を今から紡がせていて下さるので、それは綺麗なウェディングドレスが出来上がります!」
え!!!!
ウェディングドレス!!!
炎帝は青龍を見た
青龍はそれは嬉しそうに笑っていた
青龍……炎帝は言葉をなくした
「僕の為に着てくれますよね?」
「………嫌だ…」
「え…嫌なのですか?」
「ウェディングドレス着てたら…
式の後に…それ着たまま…絶対に犯る…」
「あ!解りますか!
僕の為に純白のウェディングドレスを着てくれる君を見れば…理性も尽きます」
と、さらっと言い
「今も…理性が尽きそうですよ?」
と、熱い視線を炎帝に向けた
「……ぃ…やだ…」
「大丈夫ですよ!此処ではしません!」
恐るべし…青龍
息子の性格の悪さを…金龍と銀龍は知る
本当に…誰に似たのかしら…
銀龍は金龍を見た
やっぱし…この人ね…
金龍に酷似した性格してたのは青龍だったとは…
我が子の中に…
金龍と酷似した性格の子はいない…
と、安堵した部分もあった
金龍の束縛は…凄いから…
この男の性格をマトモに受けてたら…
相手が大変
まさか…青龍がね
剥き出しの独占欲を誰にでも剥ける
まさか…青龍のその顔を見る日が来るなんて…
銀龍は青龍の中に…束縛と執着を見た
銀龍は「まさか…青龍がね…」と呟いた
青龍は「え?母さん…僕が何かしましたか?」と尋ねた
「まさか、青龍が金龍にそっくりの性格で生まれて来てるなんて…想いもしませんでした!」
「え…父さん…」
青龍は嫌な顔をした
黒龍も「そう言われれば…似てるわ」としみじみ返した
地龍も「この兄弟に父さんの性格は出てないと思っておりましたが…」と述べる
赤龍も「側に行けば…見えた青龍の執着…いやぁ…父さんそっくりで笑った」とさらっと言い放った
「兄さん達…酷くないですか?」
兄弟は首をふった
銀龍は「幸せにしてあげなさい!」と、青龍に言った
「はい。誰よりも幸せにします!」
炎帝を、抱き寄せ幸せそうに笑う
両親は青龍のその顔を目に焼き付け
頷いた
青龍は立ち上がると炎帝も立ち上がらせ
「僕の家に帰ります!」と宣言した
金龍が「え…もぉ?」夕飯位…食べて行けば良いのに…
「僕の性欲が尽きる前に帰りたいのです!」
笑いを浮かべ…
とんでもない事をさらっと言う
「………お前はそう言う奴だったよ」
赤龍は…バイバイと手をふった
青龍は笑い「赤龍、僻みに聞こえますよ!」と熾烈な一発をお見舞いした
「炎ちゃん、魔界に滞在してるうちに…また来てね」
銀龍が炎帝に声をかける
「ええ。銀龍、また来ます」
金龍が立ち上がり炎帝を抱き締めた
「我が息子炎帝よ!
お前はもう家族の一員だ
遠慮せず何時でも来るが良い」
「金龍…」
「炎ちゃん、君が息子で私は嬉しいよ」
炎帝にすりすりすると…青龍の額にピキッと怒りマークが着いた
金龍は知っていてやっていた
「父さん…」
青龍は金龍を炎帝から排除すると、自分の腕の中に抱き締めた
「それでは失礼します!」
スキップでもしそうな勢いの青龍に何も言えず…家族は見送った
青龍と炎帝が出て行った後
金龍は「凄いな…」と漏らした
黒龍や地龍から聞いてはいた
青龍の変わり様を…聞いてはいたが
あの!青龍だから…何処かで…信じられぬ想いでいた
黒龍は「言ったでしょ父さん」と苦笑した
「聞いていたけどさ…あれ程とはな…」
まるで自分を見ている様で…金龍は何だか…嫌かも
自分と同じ性格の子は…一人も出てはおらぬのか…
落胆したが…まさか青龍が受け継いでいようとは…想いもしなかった
銀龍が「貴方にそっくりでしたね」と思いだし笑う
「本当にそっくりで…驚いた」
暑苦しい…
まさか…こんなに暑苦しい程のカップルを目にしようとは…
金龍は今も妻だけを愛し、暑苦しい程に妻に愛を囁いていた
妻だけを愛し
妻だけに執着し束縛した
それに比べ…
黒龍は執着と言う言葉を忘れたかのように…
去るものは追わず…
赤龍は…愛すら面倒臭そうで…
来るものさえ…どうでと良い感じ
地龍は来るものは大歓迎
でも餌は与えないよ!
そして青龍
青龍は誰も愛さぬ…冷徹な男だと想っていた
我が子は…
何処か冷めてて
金龍は…危惧していた
誰も自分に似ぬのなら…
それはそれで仕方がない
………そう想っていた
だが今、目の前で繰り広げられたあの執着や束縛
所有権の発動…
まさに金龍そっくりだった
「あれが…我にそっくりとは…」
金龍が呟くと銀龍が
「ええ。貴方にそっくりでしたね
青龍が貴方にそっくりでしたから…驚きました」
と呟いた
「幸せに…見守らねばな!」
金龍の覚悟だった
「ええ。何があっても守りましょうね」
銀龍の覚悟だった
1000年ぶりに還った息子は…
変わっていた
炎帝の愛を知り…変わっていた
それが嬉しくて…
金龍も銀龍も…
何時までも抱き合っていた
赤龍はケッと毒づく
やってられねぇよ!此処でもイチャイチャ見せ付けられてよぉ!
叫ぶと…
黒龍から「カルシウムが足らねぇのか?」と揶揄された
愛を司る神は…少しご機嫌斜めのようだ
「悪かった…兄貴…」
「お前、今度は手離さなくて良い…愛を見つけろ!」
「兄貴…」
総てを知ってる兄は優しかった
「兄貴は?どうよ?」
炎帝から黒龍は最近恋人と別れた…と聞いていて問い掛ける
「聞くな…弟よ…」
悲しげに呟かれ…赤龍は黙る
地龍が「我が兄弟は恋愛には縁はないみたいですね!」と笑われた
黒龍は「熱烈なカップルがいますからね…」とボヤく
赤龍は「子供だけ作れば跡取りは出来るしな」と結婚生活は既に諦めていた
地龍も「ええ。子だけ成せば後は託せますしね」と既に結婚すら諦めていた
そして3人は顔を見合わせて…笑った
赤龍は「その前に人の世を終わらせねぇとな」と現実を噛み締めた
黒龍は「あぁ…人の世も乱世だとか…炎帝の行く所は…嵐を呼ぶな…
総てを掃除する…
傷付き…血ヘドを吐き倒れても尚…歩みは止めない…」と言い友の顔を思い浮かべた
「おう!もう止まれねぇ…歯車は動き出してる
魔界もな。もう止まれねぇよ
人の世も、もう止まれねぇ
逝くしかねぇんだよ!俺達はよぉ!」
あぁ…思い残す事なく逝けば良い
黒龍は弟の肩を抱いた
地龍も兄の肩を抱いた
ともだちにシェアしよう!