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第23話 魔界編 休息 ②

「叔父貴、在るべき存在になれ! 素戔男 の系図を正して行け!」 素戔男 は炎帝に、はい!と返事をした 「これでお前は聖なる輝きに守られた 曲がる事なく往生してくれ!」 「炎帝…本当にありがとう」 素戔男 は涙ぐみ…炎帝に礼を言った 「オレが手を出せるのは、此処までだ! 後は叔父貴がなんとかしろ! オレは母ちゃんを悩ませたくねぇかんな」 「解っておる! 我がケツを拭かねばならぬ事だ! お主は…悩まなくて良い…姉も解っておる」 「なら良かった!」 「ではな!我はこれより一族を集め発破をかけようと思う! 魔界大集会までには、一族を正し宣誓する事にする!」 「叔父貴、次に逢う時までくたばるなよ?」 「当たり前だ!まだくたばる訳にはいかん! 炎帝、次に逢う時は酒を飲もうぞ!」 「おう!叔父貴と飲むのは初めてだな! と言うか…黒龍以外の奴と飲むのは初めてだ!」 その一言に炎帝の孤独を伺えれる 黒龍と言う絶対の友情 黒龍が支え応援して…今の炎帝が在る 「必ずや飲むとしょうぞ! 我が甥、炎帝よ!!」 素戔男 は次の約束を交わし、席を立ち出て行った 素戔男 が帰宅すると緊張感が一気に緩む 毘沙門天は、はぁ…と息を吐いた 「毘沙門天、飯食おうぜ! そしたら還るんだろ?」 「ええ。十二天が報告を待っております故 帰らねば…どんな目に逢うか…」 毘沙門天はそう言い肩を竦めた 「なら、食って還るとするか」 炎帝が立ち上がると毘沙門天も立ち上がり 食堂へと場を移した 食堂へ行くと、美味しそうな料理が並べられていた 此処は閻魔の晩餐の席ではない 閻魔の家に尋ねて来た者達や、仕える者の食べる所だった 適当に席に座り、目の前の料理をガツガツ食う 毘沙門天はその姿通りの豪快な食べっぷりだった 炎帝に負けず劣らず…の食いっぷり 青龍は慣れてるのか気にも止めず 炎帝の世話に余念がない 建御雷神は苦笑した 炎帝がいるだけで館は活気付く 笑い声が耐えず、その場は光で満ち溢れ 生気を取り戻す 「毘沙門天、うめぇだろ?」 ガツガツ食う炎帝が声をかける 「おう!久し振りだな、こんなうめぇのは」 本当に久し振りみたいな食べっぷりで… 閻魔は唖然とした 食事を終えると、給仕が食器を下げ、珈琲を出した 珈琲の薫りと味に一頻り酔いしれ、毘沙門天は人の世に還って行った 毘沙門天が還ると、炎帝は自分の家に引き上げて行った 炎帝の家のリビングはやたらとデカかった 30畳はある広々としたリビングに行き ソファーに腰を下ろす 青龍は炎帝を、膝に乗せて甘やかしていた 「疲れましたか?」 「おう!めちゃくそ疲れたかんな!」 青龍の胸に擦り擦りして炎帝は甘える そこへお茶を持って来た給仕の者が、二人の前にお茶を差し出した この家で初めて見る炎帝に仕える者だった 「炎帝、貴方の好きなお茶に御座います」 炎帝は顔を上げるとニコッと笑った 「雪、ありがとうな」 「いいえ。貴方に仕えて居場所が出来ました それだけで、ボクは在る意味があります」 雪…と言う名前に… 青龍は仕える者を見た 羅刹の子 雪 赤い髪に鬼の角を生やした…憐れな存在 康太は赤い髪をした雪を魔界に落とし、本体は北斗として緑川一生の子として養子になっていた その雪が…目の前にいた 「雪は君に仕えていたんですか?」 青龍が炎帝に問い掛ける 「居場所を作ってやった そしたらオレに仕えたいと閻魔に頼んだ だから閻魔がオレの家に仕えさせた」 青龍はそうだったんですか…と呟いた 炎帝は青龍の上から退くと、雪が淹れた紅茶を啜った 青龍も紅茶に口をつけ 「美味しいです」と賛辞を口にした ゆったりとした時間が流れる 炎帝と青龍は静かな時を楽しみ 雪の淹れてくれたお茶を味わった その時けたたましく…来訪を告げる音がした 雪が慌てて玄関に駆けて行く ドアを開けると…そこには… 黒龍を始めとする青龍の家族、閻魔と父、建御雷神が立っていた 「炎帝はいるのかよ?」 黒龍が雪に問い掛ける 「はい。リビングで寛いでおいでです!」 雪が言うと黒龍は 「犯ってなくて良かった!!」と一頻り喜び 部屋へと招いて貰った リビングに行くと炎帝と青龍が仲良く座ってお茶をしていた 黒龍を見付けると炎帝は 「邪魔しに来たのかよ?」と揶揄した 「魔界に来た日から犯りっぱなしじゃねぇかよ? 少し位友の為に時間を裂けよ!」 「だから、こうして待ってんじゃねぇかよ? 黒龍、久方ぶりに飲み明かそうぜ!」 黒龍は炎帝の横に座ると 「解ってんじゃんかよ!」 と、笑って肩を抱いた 赤龍や皆もリビングにやって来て、招かれてもないのに座っていた 青龍は立ち上がると、リビングの窓を解放して、外の空気を入れる すると花の香りが舞い込んで来て、辺りを優しく包んだ だがリビングにいる輩は花より団子 雪と他の給仕が用意していく酒とツマミに、上機嫌で話が盛り上がって行く 青龍は苦笑して炎帝の横に座った 最初は大人しく飲んでいたが… 酔っぱらいと言うのは手がつけられない 盛り上がり、入り乱れ…手がつけられ騒ぎと化した 黒龍は炎帝の横に座り 「お前と飲むのも久方ぶりだ」 と、しみじみ口にした 「還ったら飲み明かそうぜ!」 「無理だろ?お前の夫は…許さねぇだろ?」 「毎晩犯る訳じゃねぇ!大丈夫だろ?」 そう言う…話をしてるんじゃなく… 炎帝を飲みに出すのも嫌がるだろうに…あの執着を持っているのだからな 「オレの邪魔はしねぇ! オレの動きを止める事は青龍は絶対にしねぇんだよ!」 「ノロケかよ?」 黒龍はケッと毒づいた 「ノロケじゃなくな真実! オレが何処で何をしようと、何も言わねぇよ!」 「………炎帝…」 その台詞に…どんな言葉を返したら良いか 解らないで黒龍は黙った どれだけの想いを飲み込んで… 我が弟は炎帝を送り出しているのか… 想えば胸が痛んだ 「そんな顔すんな! それだけ青龍の愛で支えられると言う事だ!」 炎帝はそう言い笑った 「ならば飲み明かそうぜ!炎帝!」 「おお!黒龍、おめぇはよぉ弱い癖に飲むからよぉ何時も面倒見てやったじゃねぇかよ!」 炎帝の台詞に青龍は、え…嘘…と呟いた 絶対に炎帝が世話を焼かれてたと思っていたから… 青龍の瞳に気づき炎帝は笑う 「黒龍はよぉ、酒が弱いんだよ!」と溢した 「嘘…兄さんは酒豪の父さんの血を受け継いでいるのに?」 信じられないとばかりの台詞に黒龍は 「俺が弱いんじゃねぇ!! このザルが飲みすぎなんだよ!」と叫んだ 炎帝は腹を抱えて笑い、黒龍の背中を叩いた 「オレはザルだがな、おめぇは酒豪の金龍の子供じゃねぇかよ!」 「………どうやら…俺は拾われたのかも知れねぇ!」 黒龍がそう言うと金龍が黒龍の背中を叩いた 「俺は血の繋がりのねぇ奴なんか拾う気もねぇよ!」とグリグリ大人げない事をする 「父さん…辞めてください…」 「おめぇが、んな事を言うからじゃねぇのかよ!」 親子喧嘩に発展して行く 「父さん…このザルと飲み比べをしてみますか?」 「嫌だ!建御雷神は底なし…その子供なれば底なしに決まってる…辞めておく」 金龍は早々に白旗を掲げた 「親父殿は底なしであったか…」 炎帝は爆笑した 建御雷神は 「この前、青龍殿から婚姻の話を貰ったのでな、金龍殿と飲んだのじゃ! 金龍殿を潰して…我が妻と銀龍殿は盛り上がっておったからな!」 と、悪意のない台詞を吐いた 青龍は声をあげた 「母さんの方が強いのですか!」 バツの悪い顔をして金龍は青龍を見た 「銀龍の方が酒豪であるからな…」 と、金龍は不貞腐れて言った 銀龍は「貴方…拗ねないで下さい!そんな事で…」と困った顔をした 「お前が…何気に男前なのがいけない…」 此処まで来ると…いちゃもんに近い 「そんな私を誰よりも愛すと言ったのは貴方ではないのですか?」 「そうだけどさ…」 「なら四の五の言わずに愛しなさい!」 銀龍の強さを垣間見た…かかあ天下…健在だった 金龍は尻に敷かれていた現実に…青龍は瞠目した 「ひょっとして我が家は…母さんが強いのですか!」 想わず呟いた台詞に…赤龍は 「知らなかったのかよ?」と呆れた 「知りませんでした…母さんが常に父さんに仕えてる感が否めませんでした…」 黒龍が青龍の肩に手をかけ 「浮気したら殺されるぜ!」と両親の関係を教えた 地龍も「この前父さんは…ペットにも妬いて母さんを怒らせてました…ペットですよ?兄さん…」と溢した 今まで描いていた…母親像が崩落して行く 「衝撃的ですが、僕も炎帝が浮気をしたら殺します!」とニコッと笑って言うから… その場は……絶対にやりかねない…と固まった 金龍が青龍の頭を叩いた 「炎ちゃんが浮気する訳なかろうが!」 どう見ても炎帝は青龍を激愛してる んとに…もぉ…何処までも似るかなぁ… 金龍は溜め息を着いた 「お前が…此処まで我に似ているとは想わなんだ…」 金龍が言うと 「そうですか?」と青龍は困った顔を向けた 「お前も妬くのか?」 「ええ。康太が食べてる沢庵にも妬けます」 ………沢庵にも… その台詞を聞いて地龍は爆笑した 「ペットに妬く父さんと変わりませんね」 さらっと危険な台詞を吐く 「「 何か地龍に言われるのは許せない」」 青龍と金龍は声を揃えて…言った そして地龍をグリグリ肘で突っついた まさか…同じ反撃を受けるとは思わなかった地龍は… 金龍に酷似してた兄を見ていた 父親の金龍と青龍は一頻り地龍をこそばかしグリグリしていた 「兄さん…止めてぇ~ 父さんも、止めて下さい」 銀龍は溜め息を着いた 何も大人気なさも似なくても… 一頻り地龍を構った後に、金龍と青龍は顔を見合わせ笑った 金龍は息子の肩を抱いた 「青龍、お前の役割は…大変であろう だが愛する炎帝を支えて何処までも共に在れ」 「父さん。ありがとうございます 僕は炎帝がいれば、どんな困難でも乗り越えて行けます 炎帝と共に…それしか僕にはありません!」 「共に在れ…お前達夫婦の幸せを誰よりも… 父は願って止まない」 父の深い想いを知る 「父さん!」 青龍と金龍は分かち合い…抱きあった それを「暑苦しい…」と一言 銀龍は涼しい顔をして飲んでいた 炎帝も黒龍と仲良く飲み交わしていた 「父さん…」 「言うな…息子よ…」 息子の言わん事は解っている 金龍は情けなく…青龍を離し銀龍の横に行った メロメロに惚れているのは父だと…解る事実 今まで青龍は如何に親を…家族を見て来なかったのかを知る 炎帝の横に座り…青龍は炎帝を抱き締めた 「どうしたよ?」 優しい炎帝の声が青龍を包む 「僕は…この瞳に何も映してはいなかったみたいです…」 寂しそうに呟くと 「なら今から映してけば良いじゃねぇかよ!」と笑った 今から映して行けば良い 遅いと言う事はない 炎帝が教えてくれる愛だった 炎帝は青龍をくっ付けたまま 「黒龍、吐くまで飲むぜ!」と黒龍に酌をした 「お前さ…何時もこうかよ?」 首に青龍をくっ付けて平然する炎帝に、黒龍は問い掛けた 「気にするな!愛する青龍がしたい事ならオレは止めねぇんだよ」 何気なくノロケられて黒龍は不貞腐れた 「そうかよ…」 唇を突き出して拗ねるのは家系か? 赤龍と酷似した拗ね方に炎帝は笑った 「拗ねるな、そんな可愛い拗ね方するとキスしちまうぜ!」 「放っとけ!」 完全に拗ねた黒龍の顔を両手で押さえると 炎帝はキスをした 舌を挿し込み…貪る接吻を黒龍にする その場の誰もが…固まって… 黒龍と、炎帝の横の… 青龍を、見ていた 赤龍が黒龍と炎帝を止めに入り引き剥がした 「んとにおめぇはよぉ!油断もならねぇ!」 赤龍が愚痴る 「そうか?黒龍とは何時もこうだよな?」 「炎帝…誤解を生む言い方は止してくれ 明日…青龍に息の根を止められたらどうすんだよ!」 「兄さん、止めるなら明日まで待ちませんよ!」 青龍が的確な事を言うと 「どうすんだよ!おめぇの所為だ!」と黒龍は愚痴った 「んな可愛い顔して拗ねるからだろ?」 炎帝は気にも止めない 地龍は様変わりした兄を見ていた まさか…父親の二乗が此所にいるなんて… 冷静沈着な兄が崩れて行く… 青龍は地龍の瞳に気付き 「地龍、言いたい事があるなら受けてたちますが?」と言われ 「滅相もない…」と辞退した 閻魔はひたすら静かに飲み 建御雷神はガハハと上機嫌で飲みまくり 金龍や銀龍達と盛り上がり 金龍は時々、銀龍とイチャイチャして まるで青龍を見ている様だった 常に妻の姿から目を離さない 酔って落ち着きのない炎帝を青龍が支え 引き寄せる 青龍の膝の上に置き抱き締める 「地龍、飲め!何でんな湿気た面してんだよ」 炎帝が地龍の杯に酒を注ぐ 「炎帝…本当に貴方は変わりませんね…」 地龍は…溢し、昔…飲み明かした夜を思い浮かべた 「地龍、おめぇも変わらねぇな! あの頃から片思いばかりしてよぉ! 本音は隠してるから何時まで経っても片思いなんだよ!」 図星を刺されて地龍は炎帝を睨んだ 「見ていたら想いが伝わるなんて想っちゃいねぇよな?」 地龍の気持ちを逆撫でする 「………炎帝…貴方には関係ない!」 「関係なくねぇぜ! オレはおめぇの兄の嫁になるんだからよぉ!」 カッと怒りの瞳で炎帝を見ると… 貫かれる瞳と出会した 炎帝の瞳をまともに見るのは怖い 本音も…真実も…総て晒され…裸にされる 剥き出しの…隠せない…自分は見せたくない 虚勢もはらしてはくれない 「…炎帝…見ないで下さい」 「見たくて見てるんじゃねぇよ! お前さ…このチャンスを逃すと… 未来永劫…独身のままだせ?」 「良いんです!それで!構うな!」 地龍が叫ぶと 「赤いの!」と炎帝は声をかけた 赤龍は「あいよ!」と立ち上がり 地龍を殴り倒した! 地龍は何が起こったのか訳が解らず…唖然となった 「お前の好きなのは…愛しのあの子なんかじゃねぇ… 女神かよ…また…男前を好きになるな…」 「好きになっても…あの人は俺なんて見てくれない! 何時もそうだ…俺は相手になんかされない」 苦しい胸の内を…地龍はやっと吐き出した 金龍も銀龍も…まさか…の想いで地龍を見た 「この前な湖に行った時にな銘と話をしたんだよ 凄く優しい男の子がいるんだよ…と言う話をした」 「……え?」 地龍は涙で濡れた瞳を…炎帝に向けた 「昔話を聞きてぇか?地龍?」 「……はい。」 「昔、愛し合う恋人同士がいた だが女の方には夫がいた… 当然‥二人の愛は許されず 二人は引き離された 女は胎内に子供を宿していた…それが銘だよ 銘は閻魔の子供だが…血は繋がってねぇ…」 「……え?」 「銘の父親は…赤龍、おめぇの兄だ!」 え!!!! 金龍や銀龍は息を飲んだ!! 知らなかった事実がさらっと語られる 「赤龍…の子?…嘘…」 地龍は唖然となった 黒龍と青龍、閻魔と建御雷神は真実を知っていた 知らないのは金龍、銀龍…そして地龍だけだった 「銘は2度と泉の側から離れない あの地から出れば…跡目争いに巻き込まれ… 利用され…誰よりも傷付くのは銘だからな 泉に結界を張った!」 「…炎帝…良いです… 俺は…結ばれるなんて想ってはいない」 「そうやって心は女神 現実は他の女…とやってるから本気の恋なんて出来ねぇんだよ!」 「願って叶う相手ではない! ましてや…兄さんの血が入ってるなんて… ますます許される相手ではない!」 「なぁに子供を作らねば…良いだけだ!」 炎帝はさらっと言い放った 「炎帝…」 「欲しいなら…諦めるな 不幸な女を増やしてるだけなのを忘れるな!」 うっ…うっ…と地龍は泣き出した 「初恋…でした… 叶わぬ相手だと…影から見ているだけでした 叶わぬから…他の誰かを愛そうとしました でも…あの人ほど愛せない…それが解るから…相手は去って行く…その繰り返しでした」 青龍は胸を押さえた まるで昔の青龍だった 炎帝が手に入らぬから…他の誰かを愛そうとした だが炎帝以外は愛せない 炎帝だけが欲しかった だが欲しいからと言って手に入る相手ではない 炎帝は天を仰いで呪文を唱えた 「なぁ銘、四龍の兄弟の一番下 可愛いっておめぇ言ってたよな?」 炎帝は問い掛けた 『あぁ。何もない辺鄙な湖に足蹴く来てくれる唯一の訪問者だ』 「唯一も何も…お前が許さねば湖には誰も入れねぇ? 違うのかよ?」 『違わない。地龍は入るのを許してるから来れる!』 「好いてる?」 『我が心を捧げているのは…炎帝、貴方だけです』 「それは雛の刷り込みと一緒で、オレしかいねぇから、そう思うだろ?」 そんな事はない 他がいても…貴方しか愛せない こんなに想うのは…貴方だけです… 心が逸る… 『…炎帝、想うのは自由 それで何が聞きたいのだ?』 「おめぇ地龍と夫婦になる気はねぇかよ?」 『…我はこの地から出る気はない そしたら婚姻そのものが成立しない』 「それは追々考えれば良い オレが聞きたいのは好きか嫌いか…だ!」 『好きか、嫌いかで言うなら好きだな』 「共に生きても良い程にか?」 『叶うなら…愛され…それだけの存在になってみたい…と、想う時もある』 だが…許されはしない そして炎帝 貴方への想いが大きすぎて… 他へは行けれはしません 「それだけの存在にしてやろうか?」 『遠慮しておく!我はこの地を守る女神なり 父閻魔への返せぬ恩がある…』 「銘!そろそろ、おめぇも肩の荷を下ろす時期なのかもな 閻魔は許してるぜ! 愛せなかった自分が総て悪い…と、自分を責めてた 責めるなと…新しい妻を与えて世継ぎを作れ!と、兄に使命を与えた 一番許されねぇのはオレじゃねぇのかよ?」 『話題をすり替えるな…』 炎帝が得意とする話術には乗らぬと…女神が突っぱねた 「銘…」 『何だ!』 「お前さ強引に地龍に押し倒されたら…玉でも蹴りあげるのかよ?」 『そんな事はしない!』 「あんでだよ?」 『押し倒されたら…抵抗すら出来ぬかも…』 好きだから… 炎帝が愛した…青龍の弟 最初は…興味があった そのうち…地龍の優しさに… 安心している自分がいた 驚きだった 認めたくなくて… 冷たくあしらった時もある それでも変わらぬ態度で何時もやって来る地龍が何時しか… 「地龍!」 「はい!」 地龍は立ち上がり返事をした 「お前さ、女神の湖に行って ちょっくら女神を押し倒してこい!」 本当にさらっと…使命を与える様に地龍に言い渡した 「え…押し倒す…」 地龍はゴックン…と唾を飲み込んだ 「おう!銘を押し倒して自分のものにして来い! 話はそれからだな!ますは…犯れ!」 種馬並みの扱いをされてる でも地龍は 「押し倒して来ます!」と言い 炎帝に深々と頭を下げて、出て行った 地龍を見送り、黒龍は炎帝の肩に手を回した 「お前さ、地龍を解き放つつもりだったのか?」 「周防の件で地に降りてもらった時にな… 地龍の心がこのままだと…壊れると…危惧した だからな根回しはしてやった 後はな地龍次第だ」 黒龍は訝り…根回し?と問い掛けた 「おう!兄者を動かし、我が家族は銘の伴侶を吟味した 青龍の家族とは…近い存在になる 目…位瞑るさ…だから好きにさせる手筈はついてんだよ!」 「根回しは出来てて…地龍を焚き付けたのかよ?」 「おう!今宵はおめぇが襲撃かけるのは見えてたかんな! だからこの場に親父殿も兄者もいる 我等の家族は地龍を受け入れる所存! 銘は兄者の血は繋がりはしないが、兄者が娘! それを踏まえて…了承願います!」 と言い炎帝は金龍と銀龍に頭を下げた 「炎ちゃん!頭を下げないで!」 銀龍が炎帝を止めた 金龍が「炎ちゃん…何から何まで…息子達が世話になった! 建御雷神殿…不束な息子達ではあるが…末永く…宜しくして下され!」 金龍は深々と頭を下げた その横で銀龍も同じ様に深々と頭を下げた 閻魔は「頭を上げて下さい!」と二人に言った 妻を…赤龍に盗られ… 一番許しを乞わねばならぬのは…閻魔にだった 金龍と銀龍はやるせない想いで一杯になった 閻魔は 「我は弟が幸せで…魔界に還って来れば良い 弟が…青龍に愛され…笑っていてくれれば… 総ては…どうでも良いのです ですから…妻に想いが向く筈もなく…逃げられました 子を成さねば…兄弟の縁を切ると…炎帝が言うので…頑張って子を成してる 総ては炎帝が許すのであれば…我は何も構いはしない」 と、溺愛ぶりを発揮した 「結局…俺しか独り者はいねぇのかよ!」と黒龍がボヤいた 「だな!」 「……炎帝…そんなにさらっと言うな…」 可能性位残せよ…と呟き 黒龍は炎帝の肩に顔を埋め…泣いた 「悲しいぜ炎帝…」 「よしよし…そのうちお前に子供を授けてやるからよぉ! お前が不甲斐ねぇからよぉ金龍の跡継ぎは夏海が産むんじゃねぇかよ!」 「えええ!!!嘘ぉ…」 黒龍は情けない顔をした 金龍は「本当に…夏海が?」と問い掛けた 「黒龍の所に出ねぇといけねぇのによぉ!」と黒龍を突っ突いた 「炎帝…俺の相手は…いるのかよ?」 「………子だけなせば…黒龍は継げる」 結婚には向いてない 炎帝や兄弟に何かあれば駆け付ける 何があっても…友と家族の為だけに在る すると…妻は… 愛されてないと…離れて行く 黒龍の気質 結婚には向いてなかった 「やっぱ…子だけ成せば…ね」 「大丈夫だ!赤龍は子も成せない!」 「え???」 「赤龍の子は銘と流生だけだ! 何時か流生は赤龍に還る、そしたら跡継ぎにして生きて行け!」 「俺は…炎帝が決めた人生を逝く 流生が還るなら俺は立派な存在でいてぇな なら頑張らねぇとな! 流生に混沌とした世界を見せたくねぇからよぉ!」 赤龍はそう言い笑った 金龍と銀龍は我が子を見ていた 我が子の…受け継ぐ未来は…残酷で…過酷だ ふと…黒龍は顔を上げた 「地龍は子は成せないのか?」 赤龍の子なれば…地龍とは叔父と姪 子は成せない… 「大丈夫だ!地龍は下半身だけは暴走してからな、子供ならもぉいる」 「え…嘘…」 「これは地龍も知らねぇからな言うなよ! 親子の名乗りは未来永劫させられねぇんだよ! それが地龍が招いた…未来だからよぉ!」 「地龍の子は…今何処に?」 「親父殿に聞くと良い!」 炎帝が言うと一斉に建御雷神に目が向けられて… 真っ赤な顔した建御雷神は、うっ!とお酒を詰まらせた 「何だ!…」 少し怯み…問い掛けた 金龍は建御雷神にズンッと迫って 「地龍の息子は…ご存知なのですか?」と問い質した 「あぁ、その事か。 我が息子 炎帝に頼まれるとな…父は何でも言う事を聞いてしまうのです 地龍の子は、崑崙山の八仙の所に修行に出しておる その子は…龍の中でもかなりの位の高さ 祖父、金龍を越す存在にあれば…修行に出すしかあるまいて」 位の高い龍……??? 金龍は訳が解らなくて…首を傾げた 炎帝が仕方なしに…説明を始めた 「金龍、虹龍…を知っているか?」 「虹…龍…??虹の色をしているのですか?」 「そうだ。虹色をして生まれし龍だ!」 「そんな奇跡が…起きてるのですか?」 金龍だって…虹龍の噂だけなら聞いている だが目にした事は一度もない まさか…その様な事が…起きるとは思いもしなかった 「この混沌とした魔界を照らす龍が産まれた ………母親は…子を産み落として…冥土を渡った…それ位の生命力の強さだ 魔界はそれ程の変革期に突入している 世紀末と言っても良い だから予定を返上して夏海の所に金龍が出て来る 地龍の所に虹龍が出た 黒龍の所に…三つ子が出る それで四龍の兄弟は栄える! 金龍と虹龍、そして流生が還り赤龍を継ぐ! 四龍の兄弟は絶える事なく続く」 炎帝は見えてる果てを…詠み口にした もう違えは出来ない軌道に乗っている だから敢えて皆に知らしめたのだ 「オレはな金龍、女神の湖に置いている銘が不憫でならねぇんだよ 跡目争いに駆り出されない様に、女神の湖に身を置かせた 銘は恋も知らない…無垢なまま女神の湖で一生を終えさせるのは忍びなかった そんな時、地龍を見た…まさか銘に恋してるなんて…信じられなかった 許されるならな…銘に恋をさせて幸せを味合わせてやりてぇと想っていたんだ 金龍…銘に地龍をくれねぇか…?」 炎帝はそう言い…深々と頭を下げた 金龍は慌てて炎帝を止めた 「四龍の存続は我等の務め! 四龍が存続するのであれば、地龍が誰と恋をしようが構いません ましてや地龍が虹龍を作っていたとなれば… 地龍の役目は終わったも同然 構いません! ですから頭を下げないで下さい! 炎ちゃん…お礼はこっちが言いたいです!」 金龍はそう言い炎帝を抱き締めた 「金龍…ありがとう」 「構いませんよ 我も親です、子供が幸せで笑っていてくれれば… それだけで良い…それだけが願いです」 「金龍…」 「さぁさ、飲みますよ! まだまだ宵の口、今宵は飲みあかそうではありませんか!」 金龍はそう言い炎帝に酌をした 炎帝はそれに口を着けて飲んだ 宴は再び、盛り上がり… 酔い潰れて寝るまで盛り上がった

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